「子供一人も守れない弱者がアルター使いを名乗るな」
劉鳳の冷たい眼差しが水面に映る、鏡の中は心を閉ざした静かなる怒りに包まれていた。
「言え」
負け犬は蹲る。辛酸、苦汁、敗北……男のプライドが崩壊した瞬間だった。劉鳳は去ってゆく。カプセルの水の底に眠るイーリャンのアルターがHOLYの組織としての未来予知を指し示していた。
本土の都市部は華やかだった。豊かな資源、平和な人々、万全な治安の維持……。HOLYは警察よりも強固な権力を100%約束した。部隊の隊長、ジグマールは指令を下す。会議室ではミーティングが行われている。
「ネイティブアルターの残党狩りはどうなっている」
劉鳳とシェリスが書類を確認した。総ては市民の健やかなる日常を守る為、より一層邁進せねば。劉鳳が目線を逸らさず頑なに言う。
「任せてください。車の手配と引き続き業務の許可を」
「了解した。アルター・絶影の調子は?」
隣のシェリスが水を差す。隊員達は仕事に精を出しては能力を鑑みる。ロストグラウンドの是が非は、希望?絶望?ジグマールは敬礼をした。
「ねェ……何考えてるか当ててあげよっか」
廊下で二人きりになったシェリスは横顔に心底惚れていた。
「私語は慎め。朝食だ」
「……」
「何がおかしい?」
「いつまで持つかな〜その高圧的な態度」
「悪かった。お互い腹を割って話そう」
食堂には警察も入り混じって朝の活気に満ち溢れている。劉鳳はバイキングのコーンスープを啜る。いつもの風景。
「私の事好き?」
シェリスの一言にむせ返る彼は愛しく見えた。色恋の行方は……
「おはようございます」
イーリャンが水を飲んで席に座る。円卓のテーブルは彼等の戦場のオアシスの場だった。
「戦いが終わったら何をしたい?」
「アルターの真髄を極める」
頬杖を突いたシェリスが劉鳳の薄い口唇を一瞥した時、サイレンが鳴り響く。
「出動だ!行くぞ!」
セントラル・ハイウェイの高速道路上に群がるカーチェイスの運転手は野良アルターの集団だった。その先頭を走るのは、マグマの燃え盛る瞳の男のみ。
「ビジネスビジネス」
君島の冷静な判断に視界を遮る警察のパトカーとHOLYの車両が行く手を阻む!イーリャンの絶対知覚!劉鳳が車体を歪ませ歩道に降りた。
「手前ェは……」
波乱の邂逅!カズマと劉鳳……天命に操られるがままに二人は対峙した。風雲急を告げる!
「刻んでやる」
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