テラーノベル
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時計の針は22時
夫は未だ帰って来ない
相も変わらず
夫はいつも通り
変わっていない
対して私は
週末を跨いで
変わったように感じる
少しだけど
強くなれた気がするし
前を向ける様になった
方向性が定まると
自分自身に一本筋が通った様に感じる
改めてリュカは凄いなと感じる
社長だからじゃない
ビリオネアだからじゃない
悲観的で陰鬱
変えようにも変わらなかった私の人生
凝り固まってどうにもならなかった私の運命
それを
リュカとの出会いが変えた
その
私に与えた影響は
殊の外大きい
そんな事を思いつつ
変わらない夫の帰宅を待ちつつ
見据えた方向に向かい
自分はどうするべきなのか
自分がどうしたいのか
そんな事を考える
自分がどうしたいのか
それを叶えるためには
壮大なるいばらの道が立ちはだかるのも事実
そのために
自分はどうするべきなのか
——離婚
どんなに虚しくても
どんなに虐げられても
今まで考えもしなかったその言葉が
現実味を伴って
ここ最近は脳裏に過る
純也はどう思ってるんだろう?
もし特定の浮気相手と続いているのならば
離婚を考えたりはしなかったのだろうか?
もしもお互いがそう望むのなら
円満に解決へ向かうだろう
だが
純也にもそんな素振りは見えない
曲がりなりにも私達は夫婦
純也の考えの察しはつく
都合良く扱える私とは
都合の良い関係を続けつつ
自分の思い通りに
自分の人生を謳歌したいのだろう
それが
忖度無しに
私から見た純也像
冷静になって
俯瞰して見れば
何て虚しい夫婦関係だろう
篠原愛紀
私は
何て虚しい存在なのだろう
そう気付けるようになった私は
少しは前に進んでいるのだろうか
何とも虚しくなり
純也の帰りを待つのを止め
私は先に床に就いた
***
……
もうあの夢を見なくなった
見なくなって久しい
幼少期から見続けて来た
漆黒の暗闇と
狼の遠吠えと
誰かの気配を感じるあの夢
その代わりに
何かが芽吹く感覚を覚える
夢の中で
何かの鼓動を感じる
あの夢で感じた
誰かの鼓動とは違う
これは
私自身の鼓動だ
私の中に芽吹く
新たな鼓動
私に
新たな運命が芽吹く前兆なのだろうか
私が
新たな運命に向かっている吉兆なのだろうか
今は
そう信じたい
リュカを信じて良かった
リュカと出会えたお陰で
リュカとの未来を思い描けるようになった
そんな前向きで
そんな幸せな夢を見る
私は変わったんだ
私の運命は
これから変わって行くんだ
私が変えて行くんだ
リュカと一緒に——
***
リュカと結ばれて以来
食欲も増した気がする
元気になった証拠かもしれない
夫の浮気の事
私のこれからの事
考える事が多過ぎて
やたらと疲れる
それらが差し迫った事案ゆえに
真剣に向き合わざるを得ない
何より
答えを出さなければならない
決断しなければならない
それが
やたらとメンタルを疲弊させる
そんな時は
好きな物を
その時食べたい物を
好きなだけ食べて
メンタルを安定させる
食べ過ぎると血糖値が上がり
精神的疲労も合わさって
やたらと眠くなる
倦怠感の抜けぬ体に鞭を打ち
必死に目を開け
必死に業務に向き合う
「水川さん大丈夫ですか?どこか体調でも悪いんですか?」
伊藤さんが心配そうに尋ねてくる
「うん、大丈夫だよ。どうかした?」
「最近頻繁にお手洗い行かれるので……」
「体調悪かったら無理しない方が良いですよ」
「ありがとう、心配させてごめんね。全然平気だから」
そんなつもりはなくとも
伊藤さんにはそう映ったらしい
私ももう営業補佐じゃない
責任ある立場
こんな事ではいけないと
自身を律し戒める
「水川さん最近そればっかり食べてますよね。ハマってるんですか?」
伊藤さんに言われて気付いた
確かに同じものばかり食べてる
何も考えず
ただ単純に
食べたい物を食べたいだけ食べただけ
ただ単純に
その結果でしかなかった
ここ最近は
伊藤さんに変化を指摘される事が多くなった
目ざとい伊藤さんはよく見ている
勘が鋭いと思っていたが
鋭いのは観察力かもしれない
ただ漠然と
そう思っていた
その時は
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