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「え?そうなの?」
告白って…告白、だよね?
「うわっ、やっちまった。それもこれもこいつが悪い。」
あ、開き直った。
「もっとちゃんとするつもりだったのになぁ。」
ベッドに座ってた僕の横に、フェルを避けて来たもときが腰掛ける。
「なんか、すごいカッコ悪いんだけど、やり直していい?」
「あ…はい。」
告白を、デスカ?
どうしよ、恥ずかしいんですけど。
『お前ら、いい加減にせんか。』
あ、フェルが怒った。
「これこそまさに神の怒りってか。」
わかいがけらけらと笑う。
「もういいじゃん。俺らも涼ちゃんが大事で、愛してて、そこの神様も涼ちゃんが大事で、愛してる。一緒に愛でればいいじゃん。」
「それだ!」
急に立ち上がった僕に、もときがびっくりした。
「あ、ごめんね、もとき。僕はね、どっちも選べないよ。そうしたら、どうなるの?全部消えちゃうの?」
僕が大切にしてきたモノが、全部。
フェルといた毎日も、二人といた日々も。
全部全部、なかった事になっちゃうの?
『それは…。』
初めてフェルが戸惑った。
きっと選択肢になかった、新しい答え。
「僕はどっちも選べない!それが答え!」
ぱあっと光が降り注いだ。
『精霊王に感謝を。』
『ティターニアに感謝を。』
『祝福を。』
『祝福を。』
誰…だろ。ずっと昔に会ってるような…。
『精霊には、敵わん。』
諦めたようにフェルが呟いた。
『フェンリル、仲良くやるのよ。ライバルだからって、虐めないのよ?』
『それから、そこのお兄さん、フレイヤから伝言。叶うから頑張れだって。』
フレイヤって、誰だろ。
もときは何か分かったのか、一人でガッツポーズしてるし。
「あ、妖精さん。」
大人になって、いつの間にか見えなくなってた彼女たちが、飛び回ってる。
もときもわかいも見えてるかな。
視線が追ってるから、きっと見えてるよね。
『おめでとう。』
『お幸せに。』
『また甘いの、頂戴ね。』
「うん!待っててね。」
今度はわたあめかな?
『またね、不思議な宿命を持った子。』
降り注いでた光が止んだ時には、もう誰もいなかった。
「涼ちゃんが見てた景色って、不思議だったんだなぁ。」
わかいがしみじみと呟いた。
「フェル、ずっと一緒、ね?」
今までも、これからも。
「二人もね?」
ずっと一緒にバンドやってね?
『…仕方ない。』
二人を交互に見て、鼻に皺を寄せて、嫌そうにフェルが頷いた。
「よろしく、フェルさん?フェルくん?」
『どうとでも呼べ。』
不貞腐れたように、フェルは伏せた。
その背中に、二匹のちびっ子。
『パパー。』
『遊んでいいー?』
「僕と遊んで!」
触りたくて仕方なかったの!
広げた腕の中に、二匹が飛び込んでくる。
ちっちゃい!もふもふ!
「お名前は?」
『ハティだよ。』
『スコル!にーちゃ、いい匂いする!』
やめて、首筋くんくんしないで!
くすぐったい!
「なぁ、フェルさんや、聞きたいんだけど。」
ベッドの上に残されたもときが、フェルに問いかける。
「りょうちゃんの宿命って、結局何だったんだ?」
『神の国へ行くか、ここへ留まるか、道は分かれていた。お前らに会う事は決まっていた。ただ…。』
「ただ?」
頭を上げたフェルが、僕に戯れつく二匹を見る。
『これほど力を蓄えるのも想定外だが、分かれていた道からひっくり返すとは。精霊たちの手伝いがあったとは言え、規格外だな。』
「つまり?」
『彼奴は宿命すらひっくり返した。そういう事だ。』
「ちょ、助けてー。」
真面目な話をしてるとこ、申し訳ないんですが。
胸元に潜り込もうとするスコルをどうにかして。
「あ、てめぇ!」
わかいがスコルを摘み上げる。
「何してくれてんの!」
『このにーちゃ、いい匂いがする!』
わかいに摘まれたまま、スコルは尻尾を振ってる。
「だからって、服の中に入り込もうとするんじゃない!」
『食べられないの?』
「食べない!」
僕は食べ物じゃありません!
「ハティも、おいで。」
大人しく僕の腕の中にいたハティも、もときに呼ばれてそっちへと飛んでいく。
『あなたの、大事な人?』
「そう、特別な人。」
こっちは大人しく肩に乗せて会話してる。
『うん、そんな匂いがした。』
ハティは大人しいのね。
「フェル。」
床に寝そべってるフェルにぎゅっと抱きつく。
「うん、これが一番。」
もふもふ加減も、大きさも。
「二匹を二人に預けてくれて、ありがとう。」
不貞腐れてるのか、返事はなかったけど。
フェルの尻尾の先が、パタリと動いた。