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Dance with Devils

9 - 第9話 いとも容易く行われるえげつない暴力行為 2

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2025年03月23日

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「ヒィィ」

人ならざる者から向けられる、混じり気なしの殺意に、増田は悲鳴を上げた。

36号は増田の頭を放し、解放してやった。

「うわぁぁぁあ」

増田は公園の出口に向けて脱兎の如く走った。

「おい、増田ぁ、何があった?」

「増田くぅ~ん、どうしたの?」

増田の背中に向けて仲間たちが呼び掛けるが、振り返ったり返事をする余裕は、増田にはなかった。

「さて」

36号が根岸の背後−−白井−−に視線を向ける。

「豚さん、豚さん、その子を放して下さいな」幼児向けの童話を朗読するような優しい口調で、36号が問いかける。

「そしたら、美味しい配合飼料を、お腹一杯差し上げますよ」

「な、なんだとッ!」

根岸の背後で白井が、半分当惑、半分怒りの感情でできた唸り声を出す。

「おやおや、反応がありませんねぇ。もしもーし、貴方ですよ、そこのア・ナ・タ。この面子メンツで豚に一番似てるのって貴方ですよ。ひょっとして自覚が無いんですかぁ?」

「ぐっ、うぅっ」

白井が奥歯を噛み締めている音が、根岸の耳にも聞こえてきた。

「あらあら、豚呼ばわりされるのがそんなに悔しいのですか?自らの意思で、そこまでブクブク太ったのに?なんだか認知の歪みを感じますねぇ。知能指数が足りていますかぁ?」

36号が唇の端を微かにあげる。

「それとも、豚って呼び方が気に入らないですか?なんならイベリコ君とかアグー君って呼び方がいいですか? 」

「……」

白井が静かに怒っている。爆発寸前の火山のように、怒りを内面に蓄積させている。

「白井っち、太っていることをイジられるのが一番嫌いなのに、ヤバいよ」

「中学の時、一度キレて先輩を大怪我させたことがあるしな……」

メンバーたちが小声でヒソヒソと話し合う。

「ああ、そうだ」

何か名案を思い付いたように、36号が手の平をポンと打つ。

「貴方の苗字は白井だから、一文字替えて、白身しろみ君と呼ぶのはどうでしょう?白身脂たっぷりの白身君てことで。ね♡」

「〜〜〜ッ!」

36号の一言で、白井の怒りが発火点に達した。

「テメッ、ブッ殺すぞ!」

羽交い締めにしていた根岸を横に放り投げると、白井が吠えた。

「フフフ。どうぞ、できるものならご自由に」

36号に向けて突進した白井は、下顎チンに強烈な衝撃を受けて、その場に片膝をついた。

増田の時と同様、見えない速さの左フックが白井の下顎を襲ったのだった。

「痛いですか?どちらかと言うと、脳みそを揺さぶられて足下がフニャフニャした感じですか?」36号が言う。

「でも、さっさと立って下さい。顔面を潰されたくなければ、ね」

「クソがッ!」

裂帛れっぱくの気合いとともに白井が立ち上がる。

こんなに怒っている白井を、根岸は見たことがなかった。いつも白井は、強者として余裕の笑みを浮かべて生活していたから。

「うらぁっ」

36号の袖を狙って素早く繰り出された白井の左手は、途中で何か熱い物に触れたかのように、それ以上の速さで引き戻された。そして、白井は顔をしかめ、右の手の平で左手の甲を庇うように包んだ。

36号が右手の親指と人差し指で、絆創膏のような物を摘んでいる。

−−それは、引き剥がされた白井の手の甲の皮膚だった。

汚い物を扱うような仕草で「それ」を捨てると、36号が言う。

「まだ終わりではありませんよ。続けて下さい。顔面を潰されたくなければ」

「くそぉっ 」

白井が放つ渾身の右ストレートを、36号はそれ以上の速さで迎撃した。白井の右手首を掴むと、一気に握り締める。

それは一瞬だった。

ミシッ。

白井の腕の中で、生木の枝が折れるような音がした。

獲物に毒を注入し終えた蛇のように、36号は素早く手を引く。

雷鳴。それ以上に響き渡る白井の悲鳴。

「がぁぁぁぁ」

白井が絶叫し、うずくまる。

「痛いですか?体のドコの部位であっても、骨が折れちゃうって辛いですよね。ですが……」36号が平然と言い放つ。

「まだ終わりではありません」

36号は白井の右腕−−折れた場所の少し上−−を掴むと、エンジンのスターター・ロープのように、立て続けに数度強く引っ張って、白井の肩関節を外してしまった。

「右腕が駄目になってしまったようですが、まだ終わりではありません。さっさと立って下さい。顔面を……おやおや、気絶してしまいましたか」

雷光を背に、女悪魔が微笑んだ。

「意識が戻ったら再開します。一端、休憩としましょう、白身君」



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