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「あ、悪魔だ……」
誰かが呟く声が、根岸の耳に届いた。
「おい、逃げるぞ」
和田の一声で、のこる三人は公園の出口に向けて一斉に走り出した。
36号がそれを一瞥した。彼女の瞳孔が、瞬間的に大きく広がる。
「ああっ」
南川が悲鳴を上げ、地面に倒れ込んだ。
「何やってんだよ」
和田と小野が駆け寄り、助け起こそうとする。
「足。足が動かないぃぃ」
「え?」
和田と小野が顔を見合わせる。南川の両膝がワナワナと痙攣している。
「正座した時みたいに痺れて、力が入んないのぉ、何で?」
「判んねぇよ」
和田はイライラと答えると、小野と二人して南川を両脇から持ち上げようとした。
転んだ南川を助けようと、三人がモタモタしている間、36号は白井の巨体を跨ぎ越し、根岸の元へ歩み寄った。
「ハロー・サタニスト。お助けに参りました」
36号は右手を胸に当てると根岸にお辞儀をした。
「改めて自己紹介を。私はMF36。親しい者は私を36号と呼びます。以後、お見知り置きを」
礼儀正しい中に、有無を言わさぬ圧倒的な威圧感があった。和田と会話するのと同様、根岸は丁寧語で返事をした。
「僕は……根岸ヒロヤスです。宜しくお願いします……」
頭を下げる根岸に、36号は嫣然と笑いかけた。
「では、参りましょう」
「え、どこへ?」
「決まっているじゃないですか」36号は立ち上がろうとする南川と、それを脇から支える二人に目をやった。
「前進、制圧、蹂躙。敵対者に対する報復と、血の制裁。ま、そんなところです」
36号は手をピストルの形に握ると、和田を狙い撃つ仕草をした。
「バッキューン」
36号と和田の視線が交差する。瞬間、和田の体が、電気を流されたように痙攣した。
「うぁぁぁぁ」
今まで必死になって助け起こそうとしていた南川を打ち捨てると、和田は自分の頭を抱えて叫んだ。
「何?何?ちょっと、和田君、どうしちゃったの?訳わかんない」パニックになった南川が半泣きになる。
「ええっ。ちょっと、そりゃないっスよぉ」
小野が引き留める声もむなしく、半狂乱状態になった和田は、二人を置いて逃げ出した。
南川は最後に残った小野にすがりつくしかなかった。
じりじりと近付いてくる36号。地面に倒れたままの白井。足元にすがりつく南川。
三者を交互に見た後、小野は決断した。
南川を突き放すと、和田の後を追って全力疾走で逃げる。
何が起こったのか分からなかった南川は、一瞬ポカンとしていたが、すぐに状況を理解し、泣き叫んだ。
「やだぁ、こんなのやだぁ。ねぇ待って、待ってよぉ。お願い、 レオナを助けて」
ホラー映画のワンシーンのような修羅場。
「最っ低。和田君も、メガネザルも……」
小声で吐き捨てるように言うと、南川は力無く俯いた。
その背後で、36号はワザと音を立てて地面を踏み締めた。
ジャリッ。
音を聞いた南川がすくみ上がる。恐る恐る振り返り、恐怖に満ちた目で見上げる。
根岸を従えた36号がそこに居た。