テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「〘デュエル・マスターズ 竜王伝〙?」
小さなソフトに書かれた文字を復唱する
「これってデュエマのゲームだよな…パソコンのか?」
デュエルマスターズ…マジックザギャザリングからの派生カードゲームであり、国内シェア率は脅威の3位の王道ゲーム
国民的カードゲームの一角と言っていいだろう
俺も中学の時やっていたし、アプリゲームのデュエプレなら今もログインを続けている
一応プレステにもデュエマのゲームがあったが…まぁ、あってないみたいなものだし
ていうか、このゲームはタカラトミーに許可得てるのか?
「……」
しかし、知っているものは興味が出てくるのが性だろう
「ボツゲームだけど、ワンチャン出来たりしないか?」
ボツになったとしても発売手前で、突然の理由で闇に葬られることがある
だからソフトを入れると極々稀にプレイできるものがあるのだ
まぁ、お世辞にも環境がいいとは言えないが
「ちょっと試してみるか…」
ちょっとした好奇心でパソコンに挿してみる
まぁ、不安定なボツソフトのために壊れる恐れはあるが、そうなったら黙って逃げてしまえばいいのだ
丁度辞める踏ん切りがつかなかったから、絶好のチャンスだろ
ハッハッハッ!
〘エナジードリンク クリーチャー〙→一般的なエナジードリンクと比べアルコールも含まれており、気分が高揚しやすい
「お… ほんとに壊れたか?」
挿しこんで、電源を入れるが画面は黒いままで只管自分の顔を映している
バンバンとパソコンを叩くが、全く反応を示さない
「マジで壊れたっぽいな…よし、もうこの会社やめよう!ハッハッハッ!!」
パソコンは壊したが、辞めるいい機会を得た!
明日からまた頑張ろう!
ジジ…ジジジジ…
「そうと決まったら、今日はもう帰ろう!明日辞めるなら残業する意味もねえしな」
そもそも残業代が出ない残業は残業じゃない
ジジジジジジ…
「あ?なんだこの音?」
振り返れば真っ黒な画面のパソコンから、電子音の不穏な音が流れている
「ほ 、ほんとに大丈夫か?これ?」
不意に酔いが覚め、我に返る
(あれ?俺結構やばいことしたんじゃあねぇの?)
「冷静に考えて、パソコン弁償出来る金とかねぇよ…直れ!直れ!」
無機物のパソコンに檄を入れる…が、願いは届かず遂に
〘ポンッ〙
と音を立ててパソコンは白煙を上げだした
「やっべぇ…どうすりゃいいんだ」
迂闊すぎる自分を殴りたくなる気分が込み上げてくる…が全ては後悔先に立たずだ。
(マジで無断で逃げちまうか…?)
もう、それしかない気がしていた
てか、ソフト1枚挿しただけで煙を上げて壊れるもんなのか?
なんか、俺だけの責任ではない気がしてきた
ジジジジジジジジ…
未だにパソコンからは白煙と共に電子音が鳴っている
すると突然
ジジジジジジジジ!!!
「な、なんだ!?」
突如けたたましく音を上げ始めたのだ
それは小学生の時、悪戯に押して初めて親に殴られた火災ベルと大差ない音であった
現在時刻 1時30分
獣も寝静まるこの時間帯に、こんな大音量が流れればどうなるか?
(間違いなく通報される!?)
SNSが普及したこの世の中だ
そうなったら会社に与えられるダメージは想像できない。
「くそ!止まれ!」
パソコンに繋がるコンセントを思い切り引き抜く
ジジジジジジジジ!!!
「なんでやまねぇんだよ!」
しかし、主電源を失ったはずのパソコンは不思議なことにその音を止めることなくなり続けている
明らかに異常だ
ジジジジジジジジジジジジジジ!!
(なんか、音でかくなってねぇか…?)
音が出始めてから、既に1分
本気で焦りだして、アルコールを含んでいた嶺二には、もう思考能力は残っていなかった
「糞!こうなったら、壊すしかない!」
拳を振り上げてパソコンを殴りにかかる
助走をつけて、1発で壊すために
そうして、パソコンに拳があたると思ったその時…
「おわっ!?」
なんとパソコンの液晶を拳がすり抜けたのだ。
しかも、すり抜けた拳はまるで別次元に消えたかのように姿を消した
まるでハ●ーポッターのキングス・クロス駅のように
「どうなって…って!?」
すると、パソコンに入れた手が引っ張られる感覚に陥る
その感触はヒンヤリと冷たく、毛むくじゃらであった
力に抗おうと何とか踏ん張るが、助走をつけていた分体制が前のめりになっていた
そのまま、俺の体はパソコンに吸い込まれていっ た。
「ここが、通報があった場所だが…」
現在 1時40分
近隣住民から『謎の騒音がする』
と通報があり、警察官2名がとあるゲーム会社の前にいた
今は全く静まり返ってかえっているが、近隣住民所は皆、凄まじい音だったと証言した。
その内の1人が、このゲーム会社から聞こえたと話しており、錠前を開けてもらう為に社長と共にこの会社の前に立っている
「なんで深夜1時に…まさかこんな時間まで働いてたわけではないですしね」
「い、いや、そんなことないでしょうよ」
脂汗が滾っている小太りの社長は、夏のせいだろうか?
ちなみに警備会社に確認を取ったが、特に防犯装置が作動した形跡はなかったという
鍵を開けてもらい、次々と部屋を確認する
しかし、最後の部屋に至るまで特に異常は見つからなかった
最後に残ったのは『社員のオフィスルーム』
何故か、入り口に比較的近かったのに社長が案内するといって遠回りするルートをとらされたのだ。
正直怪しい
この部屋に近づいてから社長も
「もう、うちじゃないんじゃないですか?」
など、何かを逃れようとしているようね台詞を吐いている
そしてとうとう
「も、もういいだろ!ウチにはなにも疚しいことはないですよ!」
と怒鳴るように言って、ドアの前に立ち塞がったのだ
いや別に、やましい事を調べてる訳では無いのだが…
やはりこの男、怪しい
「確かに、ここまで何も異常はないですし、ここじゃないかもしれないですね」
「そ、そうでしょう。なら、もうお引き取りを」
「ふん!」
油断した社長を押しのけてドアを開ける
こういうのは強引さが大事だ
さぁ、一体なにが隠されていたのか…
「…なにもない?」
意気揚々と入ったが部屋には特に以上の見当たらない
只管に沈黙が支配していた
ただ電気とエアコンが着いているのは気になったが、それ以上には特に異常はなかった。
「エナジードリンクが置きっぱなしですね」
「え、ええ。すいません、不衛生で、社員には言って聞かせるので…」
やはり怪しげな社長だが、どれだけ探しても何も見つからない
その後、暫く捜査を続けていたが結局、音の元凶を何も見つけることはできなかった
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