テラーノベル
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ひんやりとした空気が、廃墟のような通路を満たしていた。
ねことしろは並んで歩いている。廃棄された配線や朽ちかけた壁面が、まるで生きているかのようにひそひそと音を立てる。
「……このフロア、異様に静かだね。」
しろがぽつりとつぶやく。
「何かが近い、嫌な空気だ。」
ねこは足元の青白い力場を強めながら答えた。
二人の呼吸だけが音を刻み、微かな振動が床に伝わる。
突然、壁の影から何かが動いた。
それは人の形をしているが、皮膚は剥がれ落ち、骨と筋肉だけのように見えた。目は虚ろで動きはぎこちない。まるで廃棄された兵器のようだ。
「な、なに……あれは?」
しろの声が震えた。
「敵か…いや、死体かもしれない。」
ねこは足元に転がっていた手頃な鉄パイプを構え、無意識に浮遊能力を使い一歩後退した。
影は二人に向かって歩み寄る。
その動きは機械的でありながら、どこか哀れで滑稽だった。
「こいつらは記憶、か?」
ねこは低くつぶやく。
「記憶?」
しろが尋ねる。
「この世界に取り残された、失われた意識のかけら。記憶のフロッピーと同じようなものかも、人の姿をしているが、完全な人間ではない。」
ねこは目を鋭くして言った。
影が急に猛然と襲いかかってきた。
ねことしろは咄嗟に背を向け、足元の力場を跳ね上げて空中に飛び上がる。
「しろ、こいつの攻撃は予測不能だ!」
ねこは叫ぶ。
「わかってる!任せて!」
しろは全力で敵に突進し、重いパンチを叩き込んだ。
肉体が粉々になっても影は再生し、何度も立ち上がる。
ねこは冷静に空中から敵の動きを読み、連続で打撃を浴びせる。
「ここは罠かもしれない」
ねこは警戒を強めた。
「だが、退くわけにはいかない」
しろが力強く言う。
二人の連携が徐々にかみ合い、影の群れは押し返された。
そのうちの一体が破裂し、まるで破れた映像のように崩れていく。
ねこは息を切らしながら、力場を解除した。
静寂が戻った。
「これが、この世界の敵か……」
ねこは小さくつぶやいた。
「僕は絶対負けない。」
しろは立ち上がり、力強く拳を握った。
ねこはその後ろ姿を見つめながら、少しだけ笑った。
「頼もしい仲間だ。」
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