チッ、チッ、チッ、チッ…
部屋に響く秒針の音。
俺は、今日帰ってくると連絡をよこした恋人の帰りを待っていた。
何日ぶりだろうか。数日ぶりに2人で過ごせると思うとソワソワしてくる。数日そばにいないだけでこんなにも寂しいのだと、改めて思い知った。
クロスから連絡が来てから6時間、時計の針は12時を回ろうとしている。
ダイニングの椅子に座って、足をブラブラさせながらクロスの帰りを待つ。
(早く帰ってきてくれないかなぁ・・・)
連絡が来てからずっと、頭の中はその思いでいっぱいだった。ここまで遅いと少し心配になってくる。
こっちから出向くべきか。いや、もしまだ仕事中だったらクロスに迷惑だし・・・
そうやって悶々と考えていると、
ガチャッ
扉が開く音がした。
やっとクロスが帰ってきた。
「おかえりだぜbruh!」
「ただいま・・・エピック・・・」
う〜んやっぱり疲れてんのかな。心無しかいつものような元気がない。
「bruh疲れてんのか〜?おじさんがハグしてやるぞ〜♪」
バッ、と手を広げてクロスを待つ。
てかやってから気づいたけどこれ相当恥ずかしい。引かれてないよな・・・
「エピックぅ・・・」
速攻で抱きつかれる。思ったより疲れてるっぽいな・・・
まぁこの甘えん坊なクロスは結構レアだし今のうちに堪能しておこう。
「よしよし、よく頑張ったなbruh・・・」
そのまま頭を撫でてやる。
「なぁbruh、ご飯食べるか?」
「・・・」
クロスが帰ってくるからとはりきって作ったのはいいのだが、結局冷めてしまったご飯がテーブルの上にあった。
慣れない手料理だが自分なりに頑張ったつもりだし、これだけはどうしてもクロスと一緒に食べたい。
「ご飯・・・?」
「ああ!俺お手製のな!」
しばらくは何も話さなかったクロスがやっと興味を示したので、ダイニングに向かおうとすると、突然腕を掴まれる。
「?な、何だいbru
「…エピックが食べたい・・・」
「・・・え?」
待て待て待て何だその漫画とかでよくあるベタなセリフは!?
「ちょ、bruh離して・・・」
「ヤダ」
子犬のような甘え声は一変、さっきまでとはまるで別人かのように声のトーンが下がる。
帰ってきた時に見せていた、疲れたような表情はなくなっていた。
「エピック、俺、もう我慢出来ないんだ」
あぁなるほど・・・溜まってたのか・・・
まぁ・・・俺も溜まってないわけじゃぁないけど。
「heh・・・いいぜ。けど…とりあえずベッドまでいかないか?」
ソファにまで連れ戻され、ついでに押し倒されていた俺は、ひとまずそう提案する。
「わかってるっての」
そう言ってクロスはニヤリとほくそ笑む。
マズイ・・・こういう顔をしている時のクロスは絶対に逃がしてくれない。
やらかしてしまった…きっと、さっきの発言を俺からの挑発と受け取ったのだろう。
・・・明日の朝、腰痛を覚悟しておかなければ。
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