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花京院を置いて、先に家に帰ってしまった。それから、目を瞑って考えた。
俺を必死に引き止める、あいつの顔が頭から離れない。昨日の事も、この間の事も、奴じゃあなかったってのか?
信じれるものなら、信じたい。だが、確信的な証拠がどちらにもないので、複雑な思いは余計に深まってゆく。俺は一体どうすればいいんだ。
………もし、2度見た悪魔のような顔のあいつが、敵スタンド使いだったとしたら?花京院の姿を装っただけのスタンド使いだったのならば、話は変わってくる。そこで、ふと50日間の短いようで、長い旅の思い出が頭に浮かんだ。あの時。イエローテンパランスと戦った時のことだ。あのようなスタンド使いがいたのなら。それなら、もちろん有り得る話だ。
もう少し、花京院と話せばよかった。身を引いたのは自分の癖に、後悔をした。花京院の顔が脳裏にこびりついている。今朝も、昼休みも、合わせる顔がなかった。
初めて心から好きだという感情が生まれた人間だ。余計に感情的になってしまう。
『なんてったってお前が大嫌いなんでねえッ!』
あの時の言葉が頭に響き渡る。さっき花京院と話していた時もそうだ。言われたこともなかった、言われるとも思わなかったあの言葉は自分が思っている以上にダメージを受けていたのかもしれない。1日、脳内にずっとへばりついていた。そのせいでうまく顔も見れなかった。だから、花京院にどんな顔をして会えば良いか分からなかったのだ。情けない自分を殴りたくなる。
『承太郎~!』
アマが俺を呼んだ。
『何だ?どうした。』
『承太郎、今日花京院君と帰ってきてないの?まだお家に帰ってきてないらしいの。』
目線を時計に逸らした。いつの間にか7時を回っている。
『…今日は帰ってねえ。』
『あら…そう。分かったわ。』
ふとさっきの考えを思い出した。
嫌な予感がする。
嵐のような出来事が過ぎ、承太郎の背中を見過ごした。僕はぴたりと公園の前で止まった。
彼が言っていた公園とはこの事だろう。
呆然とした気持ちで足は公園の入口へと踏み入れてゆく。巷で噂の殺人鬼というのは、本当に僕だと言うのか?
頭の中には、もちろんそいつがスタンド使いだったらという仮想もある。念の為、法皇の緑の触脚を伸ばした。
この公園は、子供が遊べるような遊具などはほとんどなく、草木が生い茂り、ゴミなども散乱しているのが当たり前で、何とも言えない場所だ。なので、人が入る事も少ない。強いて言うなら、近所の老人が犬を連れて散歩するくらいだ。
薄暗くなってきたな…。僕は何をしているんだろう。早く帰ろう。
その時ー
『やっぱり自分から来てくれると思ったよ…。』
ー!!
『だ、誰だッ!?』
『もう少し早く殺しておくんだったな~。DIO様はもう散り散りになって死んじまったしよ…。
なあ?花京院~』
『もっもう1人の僕ッ?!貴様…。新手のスタンド使いかッ!?』
驚く事に、僕の姿にそっくりだ。間違いなくスタンド使いだと確信した。
『お前の質問に答えるつもりなんかねえよ!
死ねッ!!花京院!!』
すばやく攻撃が繰り出される。
『半径5メートル!!エメラルドスプラッシュッ!!』
僕も負けずと法皇の緑の技で攻撃を返した。
『噂の殺人鬼というのは…お前の事だな?』
『さあどうだろうなあ?』
『答えろッッ!!…何ッ!?』
奴はなんと相手のコピー能力を持っているらしく、法皇の緑のような触脚がスタンドから出ている。こいつ…なかなか強いぞ…。
『うわッ!!』
敵スタンド使いが一瞬で僕の体を触脚でグルグル巻にした。
スピードが早いッ!強さ的には自分と同じくらいなのか…?!
すぐさまもう一度、法皇の緑でエメラルドスプラッシュを相手へ炸裂する。
当たらない…?ーその時!同時に法皇の緑まで縛り付けられてしまった。
『当たり前のように抵抗しているが…花京院。これを見ろ』
奴がニヤリと悪寒を立てるような笑みで言う。
木の影から触脚で縛り上げられた人影がゆらりとこちらへ出てくる。
『こいつは人質だ。下手に足掻くんじゃねえぞ………。こいつが殺されても良ければお前が先に死ねッッ!!!』
出てきたのは何と、同じ学年の僕のクラスメイトだった。
口まで塞がれて、何やらもごもごと叫んでいる。
『何が目的なんだ…!』
急に縛り上げられたクラスメイトが大きく目を見開いた。どうやら僕が喋る度に、ギュウギュウに締め付けられているようだ。
『まあ…そうだなあ~。死ぬ前に少しお喋りしてやるか。』
『……俺は元々DIOの元で大金目的で動いていたスタンド使いだった。
ジョースター一行を全滅させれば、金はもらえるはずだった。
…だが、そんな夢も叶わず、DIOは散り散りになっちまった。』
『……それで?DIOからは開放されただろう?』
『だがなあ!!そんな今!承太郎達を殺す事で金が戻ってくる!懸賞金だよ懸賞金ッ!!』
『懸賞…金だと?』