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9 - 俺の匂いが好きな君のために ♯青黒

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2023年01月06日

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【注意喚起】

今回黒と青の職場が一緒です。

青 :青崎依風

黒 :黒屋悠佑

黒の同僚 :神栖李蕗(かみす/いる)(ちょっとしか出てこない)

黒のセフレ:佐熊教久(さぐま/のりひさ)(本人が登場することはない可哀想な名前だけのキャラ)



青と黒の職場が一緒黒には昔セフレがいた


※捏造設定てんこもり☆もり☆なので、苦手な人は回れ右☆





【黒side】

今日はクリスマスイブだ。イブと言っても、世間のクリスマスは24日がメイン。街はクリスマスのデコレーションでキラキラ光っている。俺の恋人のまろも、いつも(仕方なく)している休日出勤をやめ、今日は休みを満喫するようだ。たまたま居合わせた部下から聞いたのだが、まろが昨日課長に「俺は明日と明後日だけは絶対に出勤したくないです!彼女とデートあるんで」と鬼気迫る表情で言っていたそうだ。しかもかなり大声で言ったそうで、周りの女性社員が「彼女いたの!?」「ウソぉ!?!?」「誰なの……」と大騒ぎになっていたのも、まろが課長と話し終えた後女性社員たちが「彼女さんにあげるクリスマスプレゼントとか決まってるんですかぁ?」とか、「どこにデートに行くんですかぁ??」とか死んだ目で聞いていた、という話も教えてくれた。ちなみにもうクリスマスプレゼントは決まっているらしい。スパダリすぎる。


しかし。駄菓子菓子。

俺はというとまろへのクリスマスプレゼントを決めかねている。一緒に買い物に言っても「俺はあにきがいるだけで幸せかな」というし、欲しいものを聞いても「あにきの全部☆」とはぐらかしてしまうのだ。なかなか手強い。それだけ俺のことを好きでいてくれるのは嬉しいが、こちらとしてもプレゼントに困る訳で。なので、19時30分に会おうという約束で、それまでにプレゼントを探そうとこうして街に繰り出したのだ。

あちらこちらを歩き回って探したが、一向にいいものは見つからない。というかあんまりピンとこない。

服の好みはわかるけどなんか違うし、家具は当分いらないだろうし、雑貨も物が増えて嫌がりそうだ。半ば諦め状態で帰ろうとすると、一つの店が目に止まった。

――香水ショップ。

普段は香水をつけないまろだが、多分俺が送ったらつけてくれるだろう。絶対「あにきとおんなじ匂いだ〜!!」と他の人には見せられないようなデレ顔で言うのだろう。迷わず店内に足を踏み入れた。


「いらっしゃいませ」

中に入ると、物腰の柔らかそうな店員さんが何人かいて、ちょうど腰あたりに設置された木製の棚の上にはズラリと香水の瓶が置いてある。

「お客様、本日はどのようなものをお探しでしょうか?」

「ぁ、えっと……恋人に贈るクリスマスプレゼントを探してて……」

話しかけてきたのは、24かそこらのセミロングの女性で、派手過ぎない化粧が綺麗な印象だった。声も柔らかで滑らかだ。

「そうでしたか!ええと、パートナーの方のお好みの香りなどございますか?」

「うーん……」

好みの匂いなど聞いたことがなかった。恐らくきいたところで「あにきの匂いかなぁ♡」とかいうに絶対決まってる。

「……俺の匂いがどんな感じとかってわかったりしますか?」

ヤバいやつだと思われること覚悟で聞いて見たが、その反応は思っていたものとは違った。

「ええ、ご自身の香りが調べられる機械がございますので、そちらでテストしていただけますよ」

どうぞ、と案内された奥の部屋は1畳あるかないかくらいで、机の上に手のひらくらいの大きさの機械と、それに繋げられているタブレットが置いてあった。

「こちらの機械を試したい部分に優しく当てて10秒ほどお待ちいただきますと結果がタブレットに表示されます」

それではごゆっくり、と店員さんが扉を閉めて出て行く。少し悩んで、俺は髪に機械を当てた。まろはいつも俺の髪の匂いを吸ってくる。いつ聞いても髪の匂いが1番好きなんだとかで、仕事を終えて帰ってきた後に当たり前のように吸い、夕食後は食後の一服とばかりに吸う。ピピ、と電子音が鳴って、タブレットに結果が表示される。


――『ミックスベリーの香り』


「……ミックスベリー…………?」

試しに毛先を吸ってみたが、自分では全然わからなかった。もう一度やってみるが、結果は変わらない。

「…………」

こうなったら奥の手、とまろにLINEを送る。

『まろ〜、俺の髪ってどんな匂いするん?』

すると恐ろしい速さで既読がつき、すぐさま返信がきた。

『え?ベリーみたいな感じの甘酸っぱい匂いかなぁ……めっちゃええ匂いするんよ!!』

『了解!ありがとなー!』



……………………………………ベリーやった。



「あのぉ……終わりました

」さっきの女性に話しかけると、女性はニコッと微笑んで答えた。

「左様でございますか!お客様の香りはどういった系統でしたか?よろしければいくつかおすすめのものをお持ちいたしますが」

「えーと、ミックスベリー、でした」

「承知いたしました。少々お待ちくださいませ」

そういうと彼女は棚をしばらくみて周り、やがて2、3本の細長い紙を持ってきた。

「こちらテスターになるんですけれども、右側からクランベリー、ブラックベリー、フランボワーズとなっております」

C、B、Fと書かれた紙を差し出される。クン、と嗅いでみたら、どれもしつこすぎない、ふわりとした甘酸っぱい香りがした。何回か試して、悩みに悩んだ末一つに選んだ。

「こちらになさいますか?承りました。それでは香水を詰める瓶をいくつかご用意していますので、お好きなものをお選びください」

お洒落な瓶がいくつか目の前に並べられる。女性客が多いからかそれらの瓶は可愛らしいふわふわしたデザインのものも多かったが、何個かはシックで落ち着いた印象があり、目立ちにくいものもしっかり置いてあった。やっぱり日々使う(であろう)ものだし、質素な方がいいはずだ。少し細めの、モダンな瓶を選んだ。店員さんにそれを伝えると、彼女はまたバックヤードに消えて行く。待っている間、俺は暫く店内をぐるぐると回ることにした。

店内は多くの女性客でいっぱいだった。そのほかにベタ甘でイチャイチャしているカップルやビジュアルをいかにも気にしてそうなないこみたいな男性もいる。その中に別段ビジュアル系でもない俺がいるのはだいぶ浮いている気がして、今更ながら恥ずかしくなってきていた。

居た堪れなくなっていたとき、背後から「あれ?」と聞き覚えのある声がした。振り向くとそれは会社の同僚の神栖だった。部署内でもかなり人気のイケメンで、彼自身も自分のビジュアルを大変気にする男だ。だから、神栖がこの店にいることにはあまり違和感を覚えなかった。

「黒屋がこーゆー感じの店に来るのめっちゃ珍しいやんけ!どしたん?」

「んぁあ、……恋人のクリスマスプレゼント買いにきてん」

「あぁー」

「神栖は?自分の?」

「いや、薇唯(らい)がくれってうるさいから。まぁ自分のも買い足そうかと思ってるんやけど」

薇唯というのは神栖の妹らしい。商品企画部で一回だけ見たことがあるが、兄に似てかなりの美形だった。

「今日は薇唯さん何しとうの?」

「え?彼ピッピとデートですと。兄をこんなふうにこき使っといて……」

怒ったように頬を膨らませる神栖に苦笑する。と、先ほどの店員さんがバックヤードから出てきた。

「お待たせ致しました!商品こちらでございます」

丁寧にラッピングされた袋を渡された。腰を45°に曲げてお辞儀をする彼女に会釈し、「じゃまた」と神栖にも挨拶して店を出る。時計の針は18時を指していた。



「まろー?来たでー」

19時25分、まろの家のインターホンを押すと、暫くしてまろが出てきた。なぜかなんとなく怒った表情をしている。

「……いらっしゃい」

「……怒っとる?なんで?」

「…………取り敢えず入って。その後説明聞く」

「……?わかった」

家に入ると、いつもはだいぶ散らかっている部屋が綺麗になっていた。クリスマスだからだろうか。手洗いとうがいを済ませ、ダイニングテーブルに座る。

「今日、ここ来る前に誰とどこにいたの、」

「……え、っ、一人で家にい、たよ?」

香水を買いに行ったことがバレたのかと焦り、言葉が詰まった。

「嘘つき。他の男と店にいたくせに」

「え?」

「見てたんよ。悠佑が他の男と話してたの。悠佑いつも1人じゃあんな店行かないじゃん。それともあれ?まだセフレと関係切ってなかったの?切ったって言うてたやん。それも嘘?」

「ちがっ、佐熊とはもう会ってな……」

「まだ名前覚えてんだ。8年も前に切ったはずのセフレなのにね」

「違うの!話聞いてや!!」

「クリスマスに恋人放置しといて他の男と連んでるやつの話なんざ聞きたないわ!」

空気が凍てついた。気まず過ぎる沈黙が続いた。

「…………ごめんなさい、まろ。でも、一個だけ話聞いて欲しいんよ。確かに他の男の人とはいたけど、あれは宣伝部の神栖っていう同僚」

「………………で?」

「……それで、俺があそこにいたのは、……その…………まろにクリスマスプレゼント、買おうと思て、えと、まろ、俺の髪の匂い好きやろ、?やから、まろに香水、あげようと思って…………やな気持ちにさせて、ごめんなさい」

精一杯の謝罪と弁解をする。俺はまろに嫌われたら生きていけない。苦しくて苦しくて、活動どころじゃなくなると思う。それ以前にまろが大好きで大好きで、離したくない。

怖くて目を上げると、まろは口をぽかんと開けて驚いていた。

「……え、さっき俺にLINEしてきたんって…………それのこと、だったん?」

「…………」

黙ってコクリと頷いた。まろが目に見えて安心する。

「…………あにき、ほんとにごめん。俺……俺、あにきに捨てられたんじゃないかって怖くて、その、カッとなって……酷いこと言ってもた、…………」

「俺もごめん。すごく心配させた」

頭を下げるまろに呼びかけ、手を大きく広げる。

「……ぎゅ、て、して」

「ーーッッ!!」

双眸が大きく見開かれ、その瞬間に強く抱きしめられる。抱きしめられた身体みたいに、心臓が締め付けられた。幸せな時間だった。



――その後――


「これ!まろにあげようと思ってたやつ」

「ありがとあにき〜!!!めっちゃおしゃれやん!毎日使お!なんの匂いなん、これ?」

「ミックスベリーってやつ!」

「え!あにきとお揃いの匂い!?」

「嫌やった?」

「全然!むしろめっちゃ嬉しい!あにき大好き!!」


(……これでまろとお揃い♡)

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