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もう日は傾いてるっつーのに外はいつまでもじりじりと暑い。アスファルトが溜め込んだ熱が足を伝って全身に回ってんじゃねぇかと思うほど。俺が右手に提げているのは、コンビニで買ったビールが数本とつまみがいくつか入ったビニール袋。ナマエの左手には、いつもの仕事用のカバン。
互いに空いている手を繋ぐには早い。まだ太陽がしっかりとこっちを見ている。すれ違う人も多い。
まあ、ナマエの家に着いてしまえば、右手どころかあちこち触り放題だけどな。ってなんか変態っぽいな、いまの俺。暑さなのか性欲なのかわからないもので頭がくらりとした。買ったビールを冷やすより先に、シャワーで汗を流すより先に、ナマエを押し倒さないか自分でも心配になる。他愛のない話をしながら歩いていると、いつの間にかナマエの部屋の前に着いていた。扉を開けると、ひんやりとした空気が流れ出てくる。「涼しい……」
「今日は若狭くんが来る予定だったから、エアコンのタイマーをセットしておいたの」パンプスを脱いだナマエが笑う。
彼女に続いて靴を脱ぎ揃えると真後ろから名前を呼ばれた。「若狭くん…」
「ん……なんだ?」
「少し早いけど、もうご飯にする?」
「どっちでもいいけど」そう答えると着ていたシャツの裾を、華奢な指に引っ張られた。「……それなら、あの……」見上げてきたナマエの目元がほのかに色づいていて、思わず息をのんだ。「先にちょっと…い、いちゃいちゃしない?」真っ赤になったナマエと同じくらい、俺も顔が赤くなった気がする。いや、間違いない。
ああ、くそかわいい。いちゃいちゃって、なんだ。かわいすぎる。俺より年上なのに、いつもはピシッとしているのに、そんな甘えたような仕草は反則すぎる。気が付けばナマエの手首を掴んで、ワンルームの端に置かれた彼女のベッドに直行していた。引き倒しそうになったところを冷静になり、一度横抱きにしてベッドに降ろした。
覆い被さると受け入れてくれるように細い腕が伸びてきた。首の裏に絡まる滑らかな肌の感触。それだけで、やばい。腰が痺れるみたいだ。「…若狭くん?」
「ちょっと待って」
「え、やだ、もしかして私、汗くさい??」
「いや、そんなことねぇよ。全然、」むしろ、ナマエの匂いは好きだ。
って言いかけてやめた。変態か、俺は。
言ったことねぇけど、俺はナマエの匂いが好きだし、彼女の部屋やベッドの匂いなんかもたまらなく好きだ。胸いっぱいにその匂いを吸うと昂ぶってきて、色々なところが灼けるように痛くなる。「若狭くん…やっぱりシャワー浴びよっか」
「ここまできてお預けとか…」
「あ、いや、そうじゃなくて…」見上げてくる綺麗な瞳がゆらりと揺らぐ。「シャワー、一緒に浴びない?」
「………そういうことなら、喜んで」生唾を飲む。
一緒にシャワーを浴びるのは初めてだ。「エッチなこと考えてる?」
「…いちいち聞くなよ」
「いちいち聞きたい」
「あたり前だろ」
「若狭くんのエッチ」誘ったのはそっちのくせに。
けどわけがわからないくらいかわいいから、今日のところは反論せず許すことにする。