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その後、俺は咲坂の足取りをたどろうと動き出した。
もう十分待った。ここからは、一緒に歩いていきたいんだと彼女に言いたくて。
遠田社長のもとを訪れ、連絡先を聞こうとしたが、『個人情報だから』と教えてはくれなかった。
「そこを何とか」
「君が何かをするとは思っていないよ。だけど、彼女が自分から教えていないのなら言えない」
「遠田社長!」
「あの子は他に頼るところのない子だ。勝手に住所や電話を教えられれば、恐怖心が湧くだろう。私だって会社というつながりが無くなった以上、もうあの子を守ることはできないんだ。就職先が決まったと報告があれば、君にも教えるから」
「……そうですか」
なんだかんだと、遠田社長は彼女のことを気にはかけているんだろう。そういう理由を掲げられれば、強気には出られなかった。
結局、俺はまだ待つしかないのか。
盛り上がった気持ちがまた冷やされる。こんなことを繰り返しながら、俺はどこまでいけるんだろう。
ただ俺には、もう二度と会えないだろうという絶望はなかった。
何故だろう。勘みたいなもんだ。
いつか必ず会える、だからこそ、俺は俺で自分を磨きながら待つしかない。
そしてそれから二週間後、客先から出たとたんに、恭平からの電話が鳴る。
「はい。なんだよ、恭平。今日は会社に戻らない予定なんだが」
『夜って空いてるんだろ? 今すぐ【ミヤマ】に来てよ』
「は? なんでだよ」
『タクシーその辺走ってない?』
顔を上げてあたりを見回す。ビジネス街であるここはタクシーの需要はあるため、結構な頻度で走っている。
「走っているが」
『停めて乗ってよ』
「なんだよ、急ぎか?」
『そう。もう俺、お前が来ないと寂しくて死んじゃうかも』
「気持ち悪いことを言うな」
奇妙な感じはしたが、ここまで必死なら放っておくこともできない。
言われるがままタクシーを止め、【ミヤマ】まで行ってもらう。
そう遠くもないので、乗っていた時間は五分くらいだ。
電話を切ろうと思ったのに、その間、恭平は延々と今日の仕事先でのトラブルを説明し始め、切るタイミングがつかめない。
そのトラブルと【ミヤマ】に向かうことの関連性が全く分からないのだが。
「その話、着いてからじゃダメなのか」
『まあいいから聞けって』
「お客さん、着きましたよ」
電話をしたまま支払いを済ませ、下り立ったところで『俺の名前で予約してるから入ってこいよ』と告げられる。
さっきから訳が分からない。そのまま会話しながら、暖簾をくぐった。
「もういい、着いたから切るぞ。……すまない、桶川の名で予約を……」
いつものように、仲居が深々と礼をして迎えてくれた。そして、彼女が顔を上げたとき、俺は心臓が止まるかと思った。
鷹槻れん

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水無月 京
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臣桜
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#大人の恋
月詠 涼
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コメント
1件
恭平からの妙な電話、あれ絶対深山さんを驚かせるための演出ですよね(笑)最後の仲居さんの正体、心臓止まるの分かります……! 会えない期間に自分を磨きながら待つ深山さんの誠実さがじわじわ効いてくるのに、恭平のいつもと違う慌てぶりで「あっ」て気づかされる構成が本当に上手い。次が待ち遠しいです!🤍