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ラディが出てくる時点でもう最高というね
体調不良、注意
捏造、注意
🔷side
人生は思ったとおりにいかない。
🔷「青井らだお退勤しまーす〜」
「「「お疲れ様〜」」」
夕暮れのロスサントスの空は、黒い雲に覆われている。
今日は何もかもうまくいかない。
紫煙を溶かしながら、誰もいない路地裏に佇む、確かここはギャングの占拠地ではなかったはずだ。
🔷「あ~ぁ、」
泣きたいのに泣けない。
淀んだ気持ちは、自分の心に溜まっていく。
カフェインの離脱症状で、頭が痛い。
頭痛薬は前ので切らしていた。
なんて、タイミングが悪いのだろう。
ずるずるとその場に座り込んだ、雨で濡れたアスファルトが気持ち悪い。
意識が混濁する。
個人医に通知を鳴らしたが、来る保証はない。
精神と体に限界が来て、雨に打たれながらここで意識が途切れた。
🌵side
冷たい雨が降り続いている。
本署では、アーティファクトの現場で出動した面々が多数。
でもなぜか、アオセンの姿を見かけていない。
俺はキャップに一声かけ、パトロールに向かう。
🌵「オイオイオイー!」
絶対的に法定速度を守っていない車両を見つけ、その車を追うことにした。
🌵「そこの黒い車止まれー‼」
犯人は無言で路地裏の方に向かっていく。
車から降りてきた人は、青い仮面に白衣を着ている。
見かけは個人医のようだ。
なんとなく、アオセンと背丈、雰囲気が似ていて不思議な感覚だった。
🏥side
何ぶっ倒れてんだよ兄貴。
路地裏で1人で倒れていて、俺に個人医通知が来る場合大体こいつ。
しかも、面倒なのを連れてきてしまった。
特殊刑事課、つぼ浦匠。
流石に見逃してはくれなかったか。
🌵「そこで、何をしているー!」
🏥「まぁまぁ、ちょっとまってくださいよ。」
🏥「患者の搬送をしにきただけですから。」
雨でパーカーが濡れていく。
つぼ浦が傘をさしてくれた、優しいじゃん。
🏥「あらま、こりゃ不味い。」
🏥「こいつ、あんたの所の警察官でしょ。」
🌵「っ……、アオセン。」
🏥「大分やつれてるね、ここでの治療はやめておくか。」
🌵side
雨に濡れ、動かない人形のように壁にもたれ掛かるアオセンは、今個人医に運ばれている。
🏥「君の車に乗せていい?」
🏥「治療しながら、家に向かいたいんだけど。」
🌵「いいっすけど。」
なんだかアオセンと親密そうで、なんだか二人が似ていると思った。
🌵「似てるっすよね、アオセンと個人医さん。」
🏥「まぁね。」
はぐらかされたけど、兄弟にも見えなくもない。
市街地から離れた森の奥にピンを刺され、俺も一緒に向かうことになった。
🔷side
あたたかい、なつかしいにおい。
起き上がるのも怠くて、目だけあける。
ああ、いつのもあいつの家の天井だ。
安心して、名前を呼ぶ。
🔷「ラディ〜、いる?」
🌵「あ、アオセン起きましたー。」
つぼ浦が静かなんて珍しい、じゃなかった、
🔷「なんで、つぼ浦がいるの、」
不思議だった、まだ夢かと思って手の甲をつねる。
🏥「おはよう、アホ面。」
🏥「気分はどう?」
🔷「元気だけど。あれ?夢じゃない。」
🏥「あんたを迎えに行ったら、警官のパトロールに引っかかっただけ。きにすんな。」
🌵「あ、まだ請求切ってなかった。」
🏥「まあ、良いよ切っても、どうせこいつに請求するから。」
🌵「高く付くよ、いいの?」
🏥「助けてもらった身が、とやかく言えるわけない。」
🏥「まあ、病状は最悪。貧血、栄養不足、過労のいつものトリプルコンボだよ、アホ警官が。」
🏥「肉を食え、三食食えと言ってるはずだが。」
禍々しい表情で、こちらに圧をかけてくる。
🔷「ごめん、ホットドッグって肉に含まれる?」
🏥「思考が変わってなくて、逆に安心するわ、この社畜。」
いつもの愛の罵りだ。
この対応は愛情の裏返しだとわかっている。
🔷「ゴメンな。」
心に不安と罪悪感が押し寄せる。
ラディが、いなかったらおれは一体どうなっているんだろ。
🏥「ありがとうだろ、兄貴。」
🔷「そうだった、ありがとうラディ。」
微笑んだラディは、母親を思い起こさせる。
あたたかい、不安がほどけていく感覚がどこか心地よかった。
🌵side
🏥「ありがとうだろ、兄貴。」
🔷「そうだった、ありがとうラディ。」
やはり、兄弟だったか。
広ーいキッチンを借りて、ロスサントスでは珍しい土鍋に具材を詰めて煮込む。
一応、ノックをしてから、部屋に入った。
🌵「失礼すんぞ。」
🔷「どぞ〜」
🌵「はい、どーぞー!」
ドンッと、眼の前に鍋が置かれる。
🌵「つぼ浦特製、鶏肉レモン鍋!」
ぱかっと蓋を開ければ、ふわりと柔らかなだしと爽やかな匂いがする。
🔷🏥「「おお~!」」
流石兄弟、反応まで似ている。
🌵「熱々のうちに、食べよう!」
アオセンには鶏肉をいっぱい盛った。
🔷「うまい〜✨」
🏥「料理上手いんだな。」
🌵「それほどでも、ないっす。」
🔷side
心もお腹もいっぱいになって、今までの淀んだ気持ちが澄み渡っていく。
🔷「ありがとう、、」
🌵「美味しいなら良かったっす!」
ぽろぽろと涙が溢れ、頬を拭った袖が濡れていく。
🏥「あ、やっと泣いた。」
🔷「泣いてないし。」
🌵「そうですよ、泣いてないですよ。」
🏥「なんで、お前が庇ってんだよ。」
🔷「泣いてないし、っ。」
🏥「はいはい、どうせストレスの発散方法もわかんなくなったんだろ。」
🏥「ほんと、頭がいいんだかアホなんだか。」
🏥side
兄貴が泣きつかれ、寝てしまった。
その寝顔を不思議そうに見つめる彼に声を掛ける。
🏥「つぼ浦君だっけ、君を信用して言うけど、」
「あいつと俺は兄弟。」
彼が優しく笑う。
🌵「なんとなく感じてました。」
顔の系統は違うが、青髪や目の色、顔の良さはそっくりだから。
🏥「あいつさ、良く無理するから、」
「近くにいるつぼ浦君が気づいてくれると有り難いんだ。」
🌵「はい、オレも良く助けてくれるんでアオセンとはお互い様です。」
🏥「よかったな、あいつ。」
「つぼ浦君みたいな優しいやつが、兄貴に合ってると思う。」
🔷side
柔らかな日差しが、カーテンを通り床に影を落とす。
朝起きて、兄貴にお礼をいい朝ご飯を貰う。
今は、つぼ浦のジャグラーで、本署まで送ってもらっている途中だ。
🌵「優しいっすね、弟さん。」
🔷「そうなんだけど、いつも一言多いんだよね。」
🌵「また、鍋パーティしましょうね。」
🔷「いいけど、あれっ、」
ポケットを探ると、小さくたたまれた付箋が出てくる。
【 兄貴へ
つぼ浦君には、色々話しておいたから。
俺がいないときは、頼ればいい。
今回は追求しなかったけど、また隠し事したときは、どうなるか覚えとけ。
いつでも殴り込みに行くからな。
ラディ 】
🌵「物騒だな、なんとなく心配してるのは伝わるけど。」
横からつぼ浦が覗き込んでくる。
🔷「不器用なんだよ、俺もラディも。」
「だから、これからも迷惑かけます。」
つぼ浦がニコリと笑う。
🌵「これからも宜しく、アオセン!」
🔷「青井らだお、出勤しまーす」
「「「おはよー!」」」
🌵「つぼ浦匠 On duty!」
「「「ナイス duty!」」」
晴れやかな日差しが、濡れたアスファルトを照らす。
水たまりに青が反射して、眩しいと二人顔を合わせて笑った。