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「うわ……お前、マジで似合いすぎ」
ライラックMV撮影の休憩中、モニターに映った映像を見ながら、滉斗がぽつりと漏らした。
ブレザーの肩幅も、パンツの丈も完璧に馴染んでいて、
“学生役”というより、“リアルにこの制服を着ていた時間”が今も流れているようだった。
「それ、こっちのセリフだよ。
髪色抑えてブレザー着た滉斗、無敵すぎてこっちが危ないわ」
元貴も、タブレット越しに映った滉斗の姿に思わず唸っていた。
ネクタイを軽く緩めただけで、何故こんなにも艶っぽく見えるのか。
「…これで、撮影終了です! さーて、着替えましょうかー」とスタッフが声をかけてきたその瞬間、
ふたりは顔を見合わせた。
目が合って、
無言のまま、悪戯っぽくニヤリと笑う。
――その30分後、ふたりはまだ制服のまま、滉斗の家の玄関を開けていた。
「ちょ、まじで帰っちゃったじゃん俺ら」
「うん。俺ら、ほんとにバカだと思う」
笑いながら靴を脱ぎ、制服のままリビングへ。
不思議なことに、さっきまで現場で“衣装”だったはずの制服が、
ここに来ると途端に“異質なコスチューム”に見えてくる。
「……お前さ、なんでそんな普通に座ってんの。
なんか、こっちまでそわそわするんだけど」
滉斗が笑いながら言う。
「お前がその制服着たまま家にいるからだよ。
…正直、ちょっとヤバい」
元貴の声が低く掠れる。
滉斗は元貴を見つめたまま、
何かを確かめるように、その場に立った。
「……今、俺、目ぇ逸らしたら負けな気がする」
「逸らそうとした時点で負けだろ」
冗談めいた空気は、
視線が交差した瞬間に濃く変わった。
元貴がゆっくりと、立ち上がる。
足音すらも静かに、滉斗へと歩み寄る。
そして、滉斗の胸元に手を伸ばし、
軽くネクタイを掴んだ。
「このまま、脱がせないで……いい?」
囁くような声。
滉斗は一瞬だけ目を見開き、
けれどすぐ、微笑み返した。
「むしろ……脱がせたら怒るよ?」
次の瞬間、ふたりの唇が重なる。
制服のまま、ネクタイも緩めず。
ただブレザーとシャツの摩擦越しに、体温を感じながら。
「ねぇ……このまま、ベッド行く?」
「……うん」
後編へ続く