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カルト:天使の園
『神』とやらを信じ、狂気的な崇拝や儀式を行うカルト宗教。
世に蔓延る化け物を保護・強化・繁殖させ、崩壊した世界に混乱を招いている。
R-0815はこの宗教とこの宗教に信仰されている神が嫌い。
「なぁ、本当にそんなリュックサック一つで大丈夫なのか?
この小型ロボは10㎏までなら持てるって……」
「過度な心配は不要だと言っています。それに、そう言った言動はキライなんです。
わたしが大丈夫だと言っているのですから無事に着くに決まっています。」
「そう言うモンなのか……?」
ネルは度々心配性の側面が見える。
最近は少なくなったと思っていたが……合う回数が少なかったからか、気のせいだったようだ。面倒くさい。
安全圏外、C-3地区。現在から南の方向に彼らの本拠地がある。
シェルター式の地下街だ。ネルともう一人、ジェスと言う男はその地下街の管理を任されている。
「ネル、あとどれほどで本拠地に着きますか。」
「え? あー、後……15分ほど直進すれば着く。もうすぐだ。」
「わかりました。先導は引き続き任せます。」
「言われなくてもわかってるよ。」
安全圏外……危険地区で地図なんて物は意味を成さない。ただの紙切れ、ゴミ、不要物。
危険地区は毎分毎秒微かな歪みを繰り返している。
予測はできるだろうが、その分野に詳しい者がいなければ間違いなく野垂れ死ぬことになるだろう。
「そろそろ見えてくる頃だぞ。リレイ、着いたら住民に挨拶して回っておいてくれ。
専用客室のロックを解除するのに……」
「約5分かかる、ですね?
いつも言われていることです。流石に覚えました。」
「そうだな。あ、菓子屋の店主には必ず顔を見せるように!
アイツはお前の事を気に入っているんだ。知ってたか?」
「いつも値引きされるのはそのおかげですか……
世話にはなっていますから、言われなくても行くつもりでしたし……」
「ははっ! いじけるなって。別に子ども扱いしてるワケじゃ無いんだぞ?」
「嘘を吐くのはやめてください。」
軽口を叩き合っている間に着いていたらしい。
ネルの操縦するロボとはそこで別れ、わたしも彼とは真逆の方向へ進み出した。
繁華街のような、団地のような。
ざわめきと足音、窮屈な息苦しさが続くような一本道の地下街だ。逃げ込む旅人が多いせいだろうか、珍しいことに歪みの跡が少ない安全圏だ。
きっと、今わたしが住んでいる町よりも安心して眠ることができるだろう。
ふと足が止まる。
パシャッ
後頭部に違和感があった。
何か投げられたか。触ると薄い破片のようなものに交じって液体状の何かが手に触れた。
「卵……?」
「あははっ!! おい見たかよ!
おれやっぱやきゅーってヤツ向いてるんだわ!」
「ちょっと……! 謝らないと……」
「別に大丈夫だって。あの人怒ってもこわくねーし!」
「そうじゃなくって……!」
……あぁ、子供のイタズラか。
だとしても反省する気が無いと言うのは軽蔑に値する。世界が崩壊してから孤児が増えたとは聞いていたが、脳の作りも年々レベルが下がっているのか。
注意したところですぐに治る訳が無いだろうし……どうするのが正解か。
「ぎッ!?」
地面につく足を眺めながら考えていたつかの間だった。
金属音と共に卵を投げつけた子供の短い悲鳴が聞こえる。行動を注意していた友人らしき少年の裏返った悲鳴も同時に。
見ると、鉄製のアームで子供の首を締め上げる人型ですらないロボの姿が見えた。
子供にも容赦なく鉄槌を下すとは……
「ねー! もうだから言ったんじゃん!」
「たすっ、ゆうき!! たすけ……ッ…」
さすがのわたしでも少し引くほどだった。
わたしがよく立ち寄っている菓子屋の店主、O-991。ここに住んでいる人からはOさんだとか呼ばれているらしい。
「991。流石に下ろしてあげてください。
このままその子供が亡くなればあなたの立場だって危ういんですから。」
「ンン……そうなノ? リレイちゃん怒ってなイ?」
「ただのイタズラ程度で怒るほど短気じゃありません。
それに右も左もわからない子供と話すのは面倒ですので。」
「そうネ……キミはそういうヤツだったネ!
じャ、コイツは下ろしてあげル。」
そう言ってゆっくりとアームに捕まれた子供が地面に近づいていった。
よほどキツく絞められていたのか……解放された途端膝をついて咳き込んでいた。
そんな彼を支えつつ、頭を下げながら……半ば逃げ去るように二人は去っていった。
「いや~! にしても久しぶりだねェ!
元気してタ? 相変わらず甘いモノが好きだと良いんだけド。ア、新しいの仕入れたヨ!
違うナ……先に汚れた服とか体を洗ウ? シャワーくらいなら貸せるヨ?」
「わかりました、わかりましたから。
向かいながら話しませんか……あとシャワーはお借りします。」
「やっタ♪」
「失礼……あ、いたいた。リレイは? どうせ来てたんだろ?」
「ネルちゃんコンニチハ。リレイちゃん今店の奥でいちごミルク飲んでるヨー。」
「随分と呑気だな。」
「聞こえてますよ。呑気とは言わないでください。
これも立派な休息であり、次の仕事への備えです。」
空になった瓶をO-991に手渡す。
お馴染み、ネルの小型ロボのすぐ近くには久しぶりに見る顔があった。新鮮そうに店内を見渡し、わたしの横にいるO-991の手元……アーム?を見るとぱっと顔を変えた。
「え~! いいな瓶式の飲みモンとか!
ね~ネル、オレも飲み食いできるボディ欲しいんだけど。」
「バカか! 最新型のボディがどれだけの価値かわかって言ってるのか?」
「ちぇっ! 人間のボディうらやまし~!
へへっ、久しぶりだなリレイ! くたばってなくて良かったぜ!」
「ジェス……でしたよね? お久しぶりです。
あとわたしはそんな簡単に死ぬほど軟弱ではありません。」
「たはは! 変わんね~!」
人の体を借りているわたしよりも感情表現が豊かなロボ。
Unit-3X7 Jester。ネルや他の人々はジェスと呼んでいた。
意気揚々と近づく彼は許可も取らずにハグをしてきた。固くて痛い。それに冷たい。
あと好んでやるようなことでも無い。それなのに今は重量が重いボディを使っているらしく押し返せない。
O-991に助けを求めようと横を見たが、先ほど渡した瓶を捨てるために席を外していた。今すぐにため息をついて舌打ちがしたかった。
「ジェス、ジェス。邪魔です。
それとハグをするのならば許可を取ってからにしてください。聞かれたとしても断りますが。」
「え~堅苦しいじゃねーか。
再開の喜びを表現するには相手にハグすんのがいっちゃん早いんだっての!
わかってねーなぁ~!」
耳元に彼の決して柔らかくない手が触れる。
そのまま小さな固形物が当たったかと思えばパチンと音をたててそれは耳に固定された。
「あと次の仕事に使えるから、ネルの声が聞こえる通信機器な!
これ付け方案外難しいからさぁ? オレがつけてやった方がスムーズっつーか?」
「……でしたら尚更許可を取ってください。わたしのことを侮っているんですか。
馬鹿にしている?」
「ちがっ、ちげーって!」
「いいかお前ら……今からジェスが持ち掛けた仕事の話をするから!
わちゃわちゃしてないで向こうの椅子に座れ。」
「は? ネルくーん、ココ人ン家だぜ?」
「無礼を働くワケないだろ。事前に許可は取ってるんだ。
お前と違ってな!」
「ンだとー!?」
「あなたも人のこと言えないじゃ無いですか。
というか、移動してほしいならこの無駄に重い無機質をどかしてください。」
この騒がしさは随分と懐かしかった。
が、好きだとは言えない。そうだ、前もだった。こうやって言い合って結局仕事が長引いたことが何回もあった。
(期待はできないな……)
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