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jp×na
それが嫌な方は直ぐ様ブラウザバック。
世界には「好き」という感情が数値で表示される仕組みがあった。
人の頭の上には、常に数字が浮かんでいる。
それは“今この瞬間、相手をどれくらい好きか”を示すものだった。
そんな世界での告白は簡単だった。
相手の数字が80を超えたら成功、50以下なら失敗。
誰もが数字を見て恋をし、数字を見て諦めた。
俺もそのうちの一人だった
「まーたフラれたんかお前」
「いや、いけると思ったんだけどなー?」
「最初は80ぐらいあったのに、今では43だよ。意味分かんない」
「蛙化現象とかそういうやつやろ」
「女子ってそういうの面倒くさ」
はぁ…と思わず溜め息を付いてしまう。
最初は83の数値だったから告白したらOK貰えて付き合ってたのに、最終的には48になってしまって、フラれてしまった。
相手もきっと、俺が相手に対する数値が少なくなっていったのを見てフッたのだろう。まぁ、俺もそろそろ頃合いだろうと考えていたのでこっちとしても好都合ではあったが。
そんな数値じゃ、お互い、きっとうまくいかない。
「まぁいいや。別の恋探すから」
「またフラれる結果しか見えんけどな」
「…… っう、うるさいな!」
痛いところを突かれてしまった。
付き合っても2ヶ月ぐらいで別れてしまう。
早くて3週間、長く続いて3ヶ月、といったところだ。
でも、新しい恋なんて簡単。数値を見て、告白すれば確定でOK貰える。
「ttこそ、恋でも見つけてみれば?意外と楽しいよ」
「えー、いや…遠慮しとく。」
「目に見える数で判断するのもなんか嫌やし」
「あ、フラれるのが怖いんだ??」
「なわけあるかい!お前と一緒にすんな!!」
「俺は別にフラれても新しいの探すだけだしー」
ttは、なにかまた言おうとして口を開いたり閉じたりするが、もう何言っても無駄だと感じたのか諦めたような顔をしてなにも言わなくなった。
「……いつか、本気で好きな人が出来たらどうするんや?」
「本気で?……んー…」
「……まっ、その時はその時だよ」
「お前なぁ……」
ここでチャイムが鳴った。
3時間目始まりのチャイムだ 。
俺達はお互いの席について、教科書を開く。
先生が教室に入ってきて、日直の合図で挨拶を済ませる。
「……~は、〇〇をして…」
数学の佐藤先生。
周りからの評価が高くていい先生だ。
でも、その先生が俺に対しての数値は「38」と表示されている。
「……」
(この先生の数値かなり低いんだよな。何がダメなんだろ。もうちょっと手伝いとかそういうの…_)
授業そっちのけで考える。
なぜ、数値が低いのか
どうすればいいのか
この答えを見つけてしまえば後はこっちのもんだ。
…_キーンコーンカーンコーン…_
授業終わり。
「はい、では今日はここまで。復習しっかりしとくように!」
授業が終わって、各自皆好きなことをする。
他の授業の準備をする奴もいればトイレに行く奴や、喋る奴。
俺は、ノートを右手に持って真っ先に先生の所に駆け寄った。
「…先生。」
「お、どうしたjp」
「ここの式ってどうなってこうなるんですか? 」
「ここはな……_」
「〜〜… …って感じになるぞ。」
「なるほど…。先生の説明わかりやすくて助かります。」
「いつもありがとうございます!」
「えっ、あ、ああ。」
「jpは勉強熱心だな!偉いぞ」
……上がった_。
先生の頭上の数字がガラッと変わる。
「38」から「44」
このことによって少しの数値を手に入れることができた。
こういうところが便利だった。
簡単に人の好感度を上げれる。
1つの言動で、行動で、少しずつだけど、数値は上がっていく。
ぶっちゃけ、先生の説明なんて聞いていなかったが 数値が少し上がったからもう満足だ。これを繰り返して、少しずつ上げていけばいい。
先生に軽く会釈をして、自分の席に戻る。
ttがなにか言いたげな表情でこちらを見ていたが、ニヤッと口角を上げて笑顔で返すと、呆れたように笑って教室を出て行った。
ttは分かっていたのだろう、 俺が数値を上げるためにする行動を。
ttは昔からの仲で、ずっと傍に居る。
ttが俺に対する好感度の数値も変わらない、丁度良い数値を保って俺と関わってくれる。俺もttは好きだし、良い関係を保ててる。
少し違う所と言えば、ttはあまり数値を気にしない人だった。
別に下がろうが上がろうが、なんとでもないようにあまり深く気にしない人だ。前に気になって聞いたことがある。
「なんでttはさー、数値を気にしないわけ??」
「数値が下がると怖くないの?」
「えー、まぁ…その目に見える数が全てじゃないやん。」
「そんなの下がったり上がったりするのは仕方ないやろ。分からんもんやで?」
と笑って話していた。
俺は未だにその回答の意味を理解できてない。
これからも理解する気なんてサラサラないんだが。
放課後の帰り道。
空が崩れるみたいに、雨が落ちてきた。
最初の一滴は小さかったのに、気づいたときにはもう逃げ場がなかった。
「……うわ、マジか」
慌てて走る。
屋根のある場所を探して、目に入ったのがバス停だった。
滑り込むみたいに中に入ると、すぐ外の世界が白く滲む。
雨が強すぎて、向こう側が見えない。
制服の袖は少し濡れていて、息も上がっていた。
濡れた服が肌にベタつく感覚がなんとも気持ち悪い。
「……最悪」
小さくつぶやく。
今日は傘を持っていなかった。
こんな降り方、天気予報では言ってなかったはずなのに。
思わず溜め息を溢して、 バス停のベンチに座る。
屋根を叩く雨音がやけに大きくて、他の音が全部消えたみたいだった。
ぼんやりと、外の景色を眺める。
激しく地面に打つ雨。
止む気配が一向にない。
これは長くなりそうだ。
何時間コースかな、、と考えていると…_
「うわぁ……凄い雨~……」
「…えっ」
思わず、右隣を振り向く。声が出てしまった。
俺から数センチ隙間が空いて座っている、一人の女の子がいた。
あれ、この人…いつ来たんだ??
音も無かった。気配も何も感じなかった。
同じ学校の制服。
少し濡れた桃色の髪に、整った綺麗な顔立ち。
雨のせいか、少し輪郭がぼんやりと見える。
そして_‥
「…はっ?」
頭上の上にはなにも表示されていなかった。
こんな人、今まで居たのだろうか。
いや、居なかった。
俺が物心つく頃から人の頭の上には当たり前ように数字が浮かび上がっていて、数字がない人なんて17年間生きてきて1回もない。
あまりにも衝撃的なことに、数秒間固まる。
女の子はただただジッと俺を見つめ返していた。
だが、ふと_
表情が変わり、困ったような不思議そうな表情をする。
「……あのー、、」
「っはいッ!」
思わず、声が裏返ってしまった。
女の子は気まずそうに、視線を落として頬に張り付いている髪を耳に掛けながら、恐る恐る口を開いた。
「えっと、私の顔になにか……??」
「………あ、 」
そこで自分が、女の子の顔をまじまじと見ていたことに気付く。
流石に初対面で誰かも分からない男に顔をジッと見られるのは気味が悪かっただろう。
「いや、ちがくて…、これはその~…決して変な気持ちとかそんなことは_…!」
両手を前に出して、必死に振る。
自分の無実、決してやましい気持ちはないと 弁解するように必死だった。
否定すれば否定するほど人は怪しく見えてしまうのに。
女の子は一瞬だけきょとんとして、
それから、くすっと小さく笑った。
雨音に紛れるくらい、控えめな笑い方だった。
「いえ……大丈夫です」
やわらかい声。
少し安心したみたいに、肩の力が抜ける。
「びっくり、されましたよね」
「……え?」
思わず聞き返す。
何に対しての言葉なのか、一瞬わからなかった。
「急に現れたので」
そう言って、少しだけ申し訳なさそうに微笑む。
「驚かせてしまったなら、すみません」
「あ、いや……それは」
確かに驚いた。
でも、それ以上に——
言葉が詰まる。
「……あの」
少し迷ってから、口を開く。
「君、その……」
視線が自然と上に向く。
何もない空間。
やっぱり、見えない。
「数字、出てないけど……」
言い切るのに、少しだけ勇気がいった。
彼女は一瞬だけ目を瞬かせて、
それから、静かにうなずいた。
「はい」
あっさりと。
「どういうわけか、私だけ表示されないみたいなんです」
まるで他人事みたいに言う。
「……そんなこと、ある?」
思わず本音が出る。
彼女は少しだけ考えるように視線を落として、
「私も、よくわかっていなくて」
と、静かに答えた。
雨は相変わらず強い。
屋根を叩く音が、一定のリズムで続いている。
「でも」
彼女がふと顔を上げる。
「皆さんは、ちゃんと見えているんですよね」
「え、ああ……普通は」
「そうですか」
小さくうなずく。
その表情は、どこか安心したようにも、
少しだけ寂しそうにも見えた。
「困らないの?」
気づけば、そう聞いていた。
彼女は少しだけ首を傾げる。
「……困るものなんですか?」
「え?」
静かに続ける。
その言葉に詰まる。
そんなふうに考えたことなかった。
「数字がなかったら、不便扱いされるの?」
まっすぐな視線。
逃げ場がないみたいに、でも優しい。
「……まあ、周りから見たらそうじゃない」
しばらく考えて、やっと出た言葉がそれだった。
彼女は、少しだけ目を細める。
「そう、ですか」
小さく言う。
そして——
ほんの少しだけ、また寂しそうな表情をした。
穏やかな雰囲気で優しい笑みを浮かべていた彼女だが、俺にはどことなく寂しそうにしているように見えた。
「いつか見えるといいですね」
ぽつりと言う。
そのときだった。
激しかった雨音が、ふっと弱まる。
さっきまで叩きつけるみたいだったのに、
気づけば、ぽつ……ぽつ……と間隔が空いていた。
「あれ……」
外を見る。
白く滲んでいた景色が、少しずつ輪郭を取り戻していく。
「止みそうですね」
彼女が静かに言う。
まるで、最初からわかっていたみたいに。
「じゃあ、俺もそろそろ——」
立ち上がろうとして、彼女の方を見る。
「……え?」
いない。
さっきまで、確かに隣にいたはずなのに。
ベンチには、少しの空間だけが残っている。
「ちょっと、待っ…… 」
立ち上がって周りを見る。
でも、どこにもいない。
足音も、気配も、何もなかったみたいに。
外の雨は、ほとんど止んでいた。
さっきまでの激しさが嘘みたいに、
ただ水たまりが静かに揺れているだけ。
「……なんだったんだ、?」
小さく呟く。
返事は、当然ない。
ただ一つだけ、頭に残っている。
あの、困ったように笑った顔と——
“何も表示されていなかった空間”。
なぜかそれだけが、
妙に現実みたいに、はっきりと残っていた。