テラーノベル
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1,419
とある日。
朝
リビング
カーテンの隙間から光が入ってくる
ソファでは〇〇が毛布にくるまったまま
少し遅れて目を覚ます
〇〇「……ん」
体起こして、ぼーっと周り見る
キッチンから音
〇〇「……北斗?」
北斗「起きたか」
普通の声
〇〇「おはよ」
北斗「おはよ」
テーブルには軽く用意された朝ごはん
〇〇「え、なにこれ」
北斗「適当」
〇〇「いや普通にちゃんとしてる」
北斗「いいから食え」
〇〇「いただきます」
そのまま座って食べ始める
少し静かな朝
〇〇「……今日さ」
北斗「ん」
〇〇「オフだよね」
北斗「あぁ」
〇〇「外出れないし」
北斗「まぁな」
少し間
〇〇「何する?」
北斗「寝ろ」
即答
〇〇「寝ない」
北斗「じゃあ何すんだよ」
〇〇「決めてないから聞いてる」
北斗「雑すぎだろ」
〇〇「だって時間あるし」
北斗「あるから困ってんだろ」
〇〇「確かに」
少し笑う
〇〇「映画とか?」
北斗「家でか」
〇〇「うん」
北斗「いいんじゃね」
〇〇「何系見る?」
北斗「任せる」
〇〇「またそれ」
北斗「外れなきゃいい」
〇〇「責任重い」
北斗「知らねぇよ」
〇〇、スマホ取り出して探し始める
〇〇「ドラマもありだな」
北斗「長くなるだろ」
〇〇「オフだからいいじゃん」
北斗「……確かに」
少し考える
〇〇「じゃあさ」
北斗「ん」
〇〇「一日だらだらする日にする?」
北斗「もうしてるだろ」
〇〇「もっと」
北斗「これ以上何すんだよ」
〇〇「食べて、見て、寝て」
北斗「終わってる生活」
〇〇「最高じゃん」
北斗「まぁ……否定はしない」
少しだけ笑う
〇〇「じゃあ決定ね」
北斗「雑だな」
〇〇「いいのいいの」
そのままソファに移動する〇〇
〇〇「早く来て」
北斗「なんで俺まで」
〇〇「一緒に見るんでしょ」
北斗「……」
少し間
北斗「一本だけな」
〇〇「絶対続くやつ」
北斗「続かねぇ」
〇〇「続くね」
リビング
カーテンは半分閉めて、部屋は少し暗め
テレビの前
ソファに並んで座る二人
〇〇「これ評価高いらしい」
北斗「外れたらお前のせいな」
〇〇「プレッシャーかけないで」
再生ボタン押す
静かに映画が始まる
最初は普通に見てた〇〇
でも
中盤
〇〇「……」
無言
少しずつ表情が変わる
北斗、横目でちらっと見る
〇〇、もうすでに目が潤んでる
北斗「早くね?」
〇〇「まだ泣いてない」
声、ちょっと震えてる
北斗「いやもう泣くだろそれ」
〇〇「泣かないって」
その数分後
〇〇「……っ」
完全に涙こぼれる
北斗「ほら」
〇〇「うるさい」
ティッシュ探す
でも見つからない
〇〇「……ティッシュ」
北斗、無言で取って渡す
〇〇「ありがと」
鼻すすりながら画面見る
完全に感情入ってる
北斗は映画見ながらも、たまに横を見る
〇〇、止まらない
〇〇「無理……これ……」
北斗「まだ中盤な」
〇〇「もう無理なんだけど」
北斗「最後どうすんだよ」
〇〇「知らない……」
さらに進む
クライマックス
〇〇「……っ……」
もう声出さないようにしてるけど
涙止まってない
肩も少し震えてる
北斗「……」
一瞬だけ画面じゃなくて〇〇を見る
北斗「泣きすぎだろ」
〇〇「だって……」
言葉にならない
北斗、少しだけため息
でもそのまま
北斗「ほら」
さっきより多めにティッシュ渡す
〇〇「……ありがと」
受け取って、涙拭く
エンディング
音楽だけ流れる
〇〇「……」
完全に沈黙
北斗も何も言わない
数秒後
〇〇「……無理」
小さく一言
北斗「何が」
〇〇「切なすぎる」
北斗「まぁな」
〇〇「こういうのダメなんだよね」
北斗「知ってる」
〇〇「顔やばい?」
北斗「やばい」
〇〇「見ないで」
北斗「見てねぇよ」
〇〇「絶対見てた」
北斗「泣き声聞こえてた」
〇〇「最悪」
少しだけ笑うけど、まだ涙残ってる
北斗はそのままリモコン持って
北斗「次どうする」
〇〇「……ちょっと待って」
深呼吸
〇〇「余韻」
北斗「長ぇよ」
〇〇「大事なの」
北斗「はいはい」
でも消さずに、そのまま画面の余韻を流しておく
静かな空気の中で
〇〇はまだ少し涙拭きながら座ってる
映画の余韻がまだ残ってる空気
〇〇はティッシュ握ったまま、少し落ち着いてきてる
〇〇「……ねぇ」
北斗「ん」
〇〇「もう一個いい?」
北斗「何」
〇〇、少しだけ間あけて
〇〇「バラエティ見たい」
北斗「急すぎだろ」
〇〇「このままだと引きずる」
北斗「まぁそれは分かる」
〇〇「明るいやつ」
北斗「はいはい」
〇〇「……」
ちょっとだけ言いづらそうにしてから
〇〇「ゴールデンストーンズ見たい」
北斗「……は?」
一瞬止まる
〇〇「だめ?」
北斗「いや……」
少しだけ顔しかめる
北斗「なんでそれ」
〇〇「ちょうどいいかなって」
北斗「ちょうどよくねぇだろ」
〇〇「え、なんで」
北斗「いや……」
言いかけてやめる
〇〇「いいじゃん別に」
北斗「……」
少し間
北斗「一本だけな」
〇〇「やった」
すぐ笑う
北斗「笑うな」
〇〇「だって見れると思ってなかった」
北斗「俺いるんだけど」
〇〇「それがいいんじゃん」
北斗「意味分かんねぇ」
でもリモコン操作する
番組つける
〇〇、さっきまで泣いてたのに
一気に表情変わる
〇〇「これ好きなんだよね」
北斗「知ってる」
〇〇「え、知ってた?」
北斗「前も言ってた」
〇〇「記憶力いいね」
北斗「普通」
テレビから笑い声
〇〇もすぐ笑う
さっきまでの涙が嘘みたいに消えていく
北斗はそれ見て
北斗「切り替え早すぎだろ」
〇〇「大事な能力」
北斗「便利だな」
〇〇「でしょ」
ソファで少し距離近いまま
また別の空気が流れ始める
テレビの音と笑い声が部屋に広がる
〇〇「待ってこれやばい」
北斗「何が」
〇〇「この企画一番好き」
北斗「テンション上がりすぎだろ」
〇〇「だって面白いもん」
画面ではメンバー同士のやり取りが続いてる
ジェシーのボケに対して
樹が即ツッコミ
〇〇「ほらほらここ」
北斗「分かるって」
〇〇、笑いながら前のめりになる
さっきまで泣いてたのが嘘みたい
〇〇「やっぱこの空気いいよね」
北斗「まぁな」
〇〇「安心する」
北斗「お前出てる側だろそれ言うのは」
〇〇「見るのも好きなの」
北斗「変わってるな」
〇〇「いいじゃん別に」
テレビの中でまた盛り上がる
慎太郎が暴走して
周りが止めに入る流れ
〇〇「出たこれ!」
北斗「うるせぇ」
〇〇「絶対笑うやつだから」
北斗「もう笑ってるだろ」
〇〇「確かに」
笑いながら肩軽くぶつかる
北斗「当たんな」
〇〇「ごめんって」
でもまた笑ってる
高地が冷静にコメント入れるシーン
〇〇「このバランスいいんだよね」
北斗「よく見てんな」
〇〇「好きだから」
北斗「はいはい」
北斗も少しだけ口元緩んでる
〇〇「北斗ここ好きでしょ」
北斗「どこ」
〇〇「今のツッコミ」
北斗「普通だろ」
〇〇「出た謙遜」
北斗「謙遜じゃねぇ」
テレビの笑い声に合わせて
二人も自然に笑う
さっきまでの重い空気は完全に消えてる
〇〇「ねぇ」
北斗「ん」
〇〇「やっぱバラエティ必要だわ」
北斗「情緒どうなってんだよ」
〇〇「整えてるの」
北斗「整い方おかしい」
〇〇「でも戻ったでしょ」
北斗「まぁな」
〇〇、満足そうにまた画面見る
そのままソファで
少し近い距離のまま
笑いながら時間が過ぎていく
番組が終わって、エンディングの音が流れる
〇〇「……はぁ〜」
ソファに少し沈み込む
〇〇「楽しかった」
北斗「さっきまで泣いてたやつとは思えねぇな」
〇〇「リセットされた」
北斗「便利だなそれ」
〇〇「でしょ」
リモコンでテレビ消す
一気に静かになる部屋
さっきまでの笑い声が消えて
また落ち着いた空気に戻る
〇〇「……ねむ」
北斗「だろうな」
〇〇「なんか一日終わった感すごい」
北斗「まだ夕方だぞ」
〇〇「うそ」
北斗「ほんと」
〇〇「じゃあもう一回何か見る?」
北斗「やめろ」
即答
〇〇「えー」
北斗「目疲れるだろ」
〇〇「確かに」
少し間
〇〇「じゃあ何する?」
北斗「またそれか」
〇〇「だって暇」
北斗「さっきまで埋まってただろ」
〇〇「今空いた」
北斗「忙しいな」
〇〇「ね」
小さく笑う
そのままソファに寄りかかる
〇〇「ちょっとだけ休憩しよ」
北斗「ずっと休憩だろ」
〇〇「違う、これは“間”」
北斗「細かいな」
〇〇「大事なの」
静かな時間が少し流れる
〇〇はそのまま目を閉じかけて
北斗は横でスマホを触りながら
でも同じ空間で、同じテンポで時間が進んでいく
北斗「……腹減ってねぇの」
〇〇「ちょっと」
北斗「じゃあそのうち考えろ」
〇〇「うん……」
返事が少し遅い
北斗、ちらっと見る
〇〇、もう半分寝てる
北斗「……ほんと自由だな」
小さく呟く
静かな空気の中
〇〇はソファに寄りかかって
そのまま寝てしまっている
さっきまで話していたのが嘘みたいに
呼吸もゆっくり
北斗は隣でスマホを見ていた手を止める
ふと視線が向く
北斗「……」
少しだけ間
寝ている顔
さっき泣いて、笑って、また寝て
忙しい一日だったのがそのまま残ってるみたいで
北斗「ほんと……」
小さく呟く
北斗「自由すぎだろ」
返事はない
当たり前に
北斗は少しだけ体の向きを変えて
ちゃんと顔が見える位置になる
北斗「人の家で好き勝手やって」
小さく笑う
北斗「……寝るの早すぎだし」
また少し沈黙
でも視線は外れない
北斗「……」
ほんの少しだけ表情が緩む
北斗「……まぁいいけど」
ぼそっと
そのまま立ち上がって
毛布を軽くかけ直す
北斗「風邪ひくなよ」
また独り言
電気を少しだけ落として
部屋を静かにする
ソファで寝ている〇〇と
そのすぐ近くで過ごす北斗の時間が
ゆっくり流れていく
ーーーーー
🕛
カーテンの隙間からしっかり光が入ってる昼間
時計は 12:00
〇〇「……ん」
ゆっくり目を開ける
さっきまで寝てたはずなのに
時間感覚が少しズレてる
〇〇「……あれ」
体起こして周り見る
北斗はキッチンにいる
〇〇「北斗」
北斗「起きたか」
〇〇「今何時?」
北斗「12時」
〇〇「……昼?」
北斗「昼」
〇〇「え、そんな寝た?」
北斗「一回起きてまた寝たからな」
〇〇「……最悪」
顔押さえる
〇〇「オフの日の使い方下手すぎる」
北斗「いつもだろ」
〇〇「否定できない」
少し笑う
〇〇、ソファから降りて伸びする
〇〇「お腹すいた」
北斗「だろうな」
〇〇「さっきなんか言ってたよねご飯」
北斗「あぁ」
〇〇「作る?」
北斗「今からか」
〇〇「うん」
北斗「まぁいいけど」
〇〇「何する?」
北斗「軽いのでいいだろ」
〇〇「パスタとか?」
北斗「昼から?」
〇〇「だめ?」
北斗「別にいいけど」
〇〇「決まり」
すぐ決定
北斗「雑だな」
〇〇「お腹優先」
北斗「はいはい」
〇〇、キッチンに入ってくる
まだ少し眠そうな顔のまま
〇〇「何手伝う?」
北斗「包丁使える?」
〇〇「使える」
北斗「怪しい」
〇〇「さっきからそれ」
北斗「信用ない」
〇〇「ひど」
〇〇「何切ればいい?」
北斗「とりあえずこれ」
野菜渡す
〇〇「はいはい」
まな板の前に立つ
トントン、とリズムよく切る
北斗、横でちらっと見る
北斗「……普通にできんじゃん」
〇〇「だから言ったでしょ」
北斗「怪しかった」
〇〇「疑いすぎ」
少し笑う
北斗はフライパン出して火つける
油ひく音
〇〇「なんかさ」
北斗「ん」
〇〇「こういうの久しぶりかも」
北斗「何が」
〇〇「普通に家で昼ごはん作るの」
北斗「仕事だとそうなるか」
〇〇「基本外か現場だし」
北斗「まぁな」
少し間
〇〇「なんか変な感じ」
北斗「何が」
〇〇「ちゃんと生活してる感」
北斗「普段してねぇみたいな言い方やめろ」
〇〇「してないじゃん」
北斗「……否定はしない」
〇〇「でしょ」
笑う
フライパンで具材炒める音
〇〇、横で見ながら
〇〇「いい匂い」
北斗「まだだろ」
〇〇「もういい」
北斗「早い」
〇〇「お腹すいてるから」
北斗「それさっきから聞いてる」
〇〇「重要情報」
北斗「はいはい」
麺茹で始める
湯気が上がる
〇〇「これ何味?」
北斗「シンプル」
〇〇「一番好き」
北斗「知ってる」
〇〇「またそれ」
北斗「前食ってただろ」
〇〇「覚えてるんだ」
北斗「普通」
〇〇「はいはい」
軽く流す
少しだけ距離近いまま
同じキッチンに立ってる時間
〇〇「なんかさ」
北斗「ん」
〇〇「平和だね」
北斗「……まぁな」
鍋の中でお湯がぐつぐつ音を立ててる
〇〇「それやる」
北斗「何が」
〇〇「麺入れるの」
北斗「……やったことあんの」
〇〇「ない」
北斗「だろうな」
〇〇「やりたい」
北斗「……」
少しだけ考える
北斗「熱いから気をつけろよ」
〇〇「分かってる」
袋から麺を取り出す
でも少し距離感つかめてない
北斗「ちょっと貸せ」
〇〇「え」
北斗、後ろに回る
そのまま〇〇の手に軽く触れる
北斗「こう持って」
〇〇「……うん」
そのまま一緒に鍋の上へ
北斗の手が上から添えられる形
距離が一気に近くなる
〇〇は普通に前見てる
〇〇「このまま入れていい?」
北斗「ゆっくりな」
声が少しだけ低い
〇〇「……こう?」
北斗「そう」
一緒に麺を入れる
パラッと広がる
湯気がふわっと上がる
〇〇「おお」
少し楽しそう
北斗「ほら、ちゃんと入った」
〇〇「できた」
普通に満足そう
でもそのまま手、離れてない
〇〇「ん、もういい?」
北斗「……あ、うん」
少し遅れて離す
一歩だけ距離取る
北斗「火、強すぎないようにな」
〇〇「はーい」
何も気にしてない顔で鍋見る
北斗だけ少し視線逸らす
北斗「……」
小さく息吐く
〇〇「?」
北斗「なんでもねぇ」
〇〇「変なの」
そのままタイマー見る
〇〇「あと何分?」
北斗「7分くらい」
〇〇「長い」
北斗「普通だろ」
〇〇「お腹すいた」
北斗「さっきからそれ」
〇〇「だって」
笑う
北斗は横で腕組みながら
さっきの距離を少し引きずったまま
でも何も言わずに
そのまま時間が過ぎていく
鍋の中で麺がゆらゆら動いてる
〇〇「これ混ぜる?」
北斗「くっつくからな、軽くな」
〇〇「こう?」
トングで少しだけ持ち上げる
北斗「そう」
〇〇「なんかそれっぽい」
北斗「それっぽいってなんだよ」
〇〇「料理してる人みたい」
北斗「してるだろ今」
〇〇「確かに」
少し笑う
タイマーを覗き込む
〇〇「あと何分?」
北斗「まだある」
〇〇「長い」
北斗「さっきも言ってたなそれ」
〇〇「だってお腹すいた」
北斗「知ってる」
〇〇、鍋じっと見つめる
〇〇「早く柔らかくなれ」
北斗「念じても変わらねぇよ」
〇〇「気持ち」
北斗「はいはい」
少しして
北斗「そろそろいいな」
〇〇「え、ほんと?」
北斗「ザル出せ」
〇〇「はい」
慌てて取り出す
北斗「熱いから気をつけろよ」
〇〇「分かってるって」
鍋を持とうとして
北斗「待て」
手止める
北斗「こうやる」
そのまま湯切りする
湯気が一気に上がる
〇〇「うわすご」
北斗「火傷するぞほんとに」
〇〇「今のは無理だった」
北斗「だろうな」
〇〇「でもやってみたかった」
北斗「やらなくていい」
〇〇「ケチ」
北斗「安全第一」
〇〇「はいはい」
そのまま麺をフライパンへ
ジュッと音がする
〇〇「いい匂い」
北斗「完成だな」
〇〇「やっと」
嬉しそうに皿出す
〇〇「盛るのやる」
北斗「こぼすなよ」
〇〇「こぼさない」
慎重にトングで取って
皿に乗せる
〇〇「……ちょっと多くない?」
北斗「そんなもん」
〇〇「絶対多い」
北斗「食えるだろ」
〇〇「食べるけど」
少し笑いながら並べる
〇〇「完成」
皿に盛られたパスタをテーブルに運ぶ
〇〇「いただきます」
北斗「いただきます」
フォークでくるっと巻く
〇〇「……うん」
一口食べて少し止まる
北斗「どうだよ」
〇〇「普通においしい」
北斗「普通かよ」
〇〇「いや、ちゃんとおいしい」
北斗「どっちだよ」
〇〇「北斗が作ったからじゃなくて普通においしい」
北斗「余計な一言だな」
〇〇「事実」
笑う
もう一口食べる
〇〇「これ好き」
北斗「知ってる」
〇〇「またそれ」
北斗「前も同じの食ってた」
〇〇「記憶力怖い」
北斗「普通だろ」
〇〇「はいはい」
少し間
二人で黙って食べる時間
〇〇「なんかさ」
北斗「ん」
〇〇「こういうのいいね」
北斗「何が」
〇〇「家でちゃんとご飯食べるの」
北斗「さっきも言ってたな」
〇〇「言ったっけ」
北斗「言ってた」
〇〇「じゃあほんとに思ってる」
北斗「そういうことか」
〇〇「うん」
また一口
〇〇「落ち着く」
北斗「……まぁな」
短く返す
〇〇「外で食べるのもいいけどさ」
北斗「こういうのもな」
〇〇「うん」
少しだけ笑う
フォーク止めて
〇〇「またやろ」
北斗「気が向いたらな」
〇〇「絶対やるやつじゃんそれ」
北斗「知らねぇよ」
〇〇「やるね」
北斗「押すな」
〇〇「押してない」
軽く笑う
また静かに食べる時間が戻る
〇〇「……あ」
北斗「なに」
〇〇「洗濯」
北斗「急だな」
〇〇「今日回していい?」
北斗「いいけど」
〇〇「二人分になるじゃん今」
北斗「なるな」
〇〇「どうする?」
北斗「どうするって」
〇〇「分ける?」
北斗「別に一緒でいいだろ」
〇〇「ほんとに?」
北斗「何が気になるんだよ」
〇〇「いや、一応」
北斗「気にしねぇよ」
〇〇「じゃあ一緒でいいか」
北斗「いい」
〇〇「干すのも一緒でいい?」
北斗「そこまで聞く?」
〇〇「一応ね」
北斗「好きにしろ」
〇〇「はーい」
また一口食べる
〇〇「生活してるね」
北斗「さっきも聞いた」
〇〇「デジャヴ」
北斗「お前が言ってるだけだろ」
〇〇「確かに」
笑う
そのまま昼のゆるい時間が続いていく
〇〇「じゃああとで回すね」
北斗「今まで通りでいいだろ」
〇〇「だよね」
〇〇「部屋干しも慣れてきたし」
北斗「量増えただけだな」
〇〇「それな」
少し笑う
〇〇「でもさ、最初ちょっと気使った」
北斗「何を」
〇〇「干す場所とか」
北斗「覚えてる」
〇〇「やっぱ気づいてた?」
北斗「分かるだろ」
〇〇「今はもう普通に使ってるけど」
北斗「普通に使ってるな」
〇〇「いいよね?」
北斗「いいって言っただろ」
〇〇「じゃあ今日もそのままで」
北斗「あぁ」
〇〇「下着ももう気にしてないし」
北斗「お前はな」
〇〇「え、北斗は気にしてた?」
北斗「してねぇよ」
〇〇「絶対一瞬はしたでしょ」
北斗「してねぇ」
〇〇「怪しい」
北斗「うるせぇ」
〇〇「まぁいいや」
また食べながら
〇〇「生活って慣れるの早いね」
北斗「そういうもんだろ」
〇〇「最初ちょっと違和感あったのに」
北斗「今は?」
〇〇「普通」
北斗「だろうな」
〇〇「普通すぎて逆に怖い」
北斗「なんでだよ」
〇〇「だって人の家だよ?」
北斗「今更だろ」
〇〇「それもそう」
少し笑う
〇〇「じゃあご飯食べたら回す」
北斗「はいはい」
〇〇「ごちそうさま」
北斗「ごちそうさま」
〇〇、立ち上がる
〇〇「じゃあ回すね」
北斗「洗剤どこか分かるか」
〇〇「分かる、前と同じとこでしょ」
北斗「そう」
〇〇、慣れた手つきで準備しながら
〇〇「なんか普通にできるようになってきた」
北斗「最初からやれてただろ」
〇〇「いや最初ちょっと不安だった」
北斗「見てて分かった」
〇〇「やっぱ顔出てた?」
北斗「出てた」
〇〇「恥ずかしい」
少し笑う
洗濯機に服入れていく音
〇〇「これ北斗の?」
北斗「それ俺」
〇〇「こっちも?」
北斗「それも」
〇〇「混ざると分かんなくなるね」
北斗「だろうな」
〇〇「あとで分けるのめんどい」
北斗「最初から分けろ」
〇〇「もう遅い」
北斗「計画性なさすぎだろ」
〇〇「今更」
軽く笑う
〇〇「回すよー」
北斗「はいはい」
ボタン押す音
〇〇「完了」
北斗「早いな」
〇〇「慣れた」
北斗「言うようになったなそれ」
〇〇「成長してるから」
北斗「どの口が」
〇〇「この口」
軽く笑う
〇〇「終わるまで何する?」
北斗「またそれか」
〇〇「だって時間ある」
北斗「放置でいいだろ」
〇〇「それもそうだけど」
少し考えて
〇〇「干すのはちゃんとやるよ」
北斗「やれ」
〇〇「やるって」
〇〇、ソファの方戻りながら
〇〇「じゃあちょっと休憩」
北斗「ずっとしてるだろ」
〇〇「違う、これは切り替え」
北斗「便利な言葉だな」
〇〇「でしょ」
〇〇、ソファに座って背もたれに寄りかかる
少しだけ天井見てから
〇〇「……なんかさ」
北斗「ん」
〇〇「これ、いつまで続くんだろ」
北斗「何が」
〇〇「この生活」
北斗「……」
少し間
〇〇、ふっと笑う
〇〇「まぁいいけど」
北斗「いいのかよ」
〇〇「楽しいし」
軽く言う
北斗「……そうかよ」
〇〇「うん」
クッション抱えながら
〇〇「普通にさ、ご飯作って洗濯して」
〇〇「なんかちゃんとしてるじゃん」
北斗「一応な」
〇〇「一応って」
少し笑う
〇〇「でもこういうの嫌いじゃない」
北斗「へぇ」
〇〇「むしろ好きかも」
北斗「……」
短く沈黙
〇〇「北斗は?」
北斗「何が」
〇〇「こういうの」
北斗「別に」
〇〇「またそれ」
北斗「普通だろ」
〇〇「はいはい」
少しだけ笑う
〇〇「でもさ」
北斗「ん」
〇〇「なんか落ち着くよね」
北斗「……まぁな」
小さく返す
〇〇はそのままソファに深く沈み込んで
少しだけ満足そうに目を細める
〇〇「いいオフだね」
――ブブッ
〇〇「……」
テーブルに置いてたスマホが震える
画面を見る
〇〇「……あ」
少し止まる
北斗「どうした」
〇〇「……廉」
その名前で、空気が一瞬だけ変わる
北斗「……出れば」
短く
〇〇、少しだけ迷う
でもそのまま取る
〇〇「もしもし」
廉『もしもし』
久しぶりの声
〇〇「どうしたの」
廉『今日オフ?』
〇〇「うん」
廉『今、話せる?』
〇〇「……うん、大丈夫」
少しだけ姿勢を正す
廉『前さ、言ったじゃん』
〇〇「……」
廉『ちゃんと話そうって』
少し静かに続く声
廉『あれ、今いいかなって思って』
〇〇「……」
一瞬だけ言葉詰まる
〇〇「今?」
廉『うん』
〇〇、無意識に北斗の方を見る
北斗は何も言わないまま視線外してる
廉『無理ならいいけど』
〇〇「……いや」
小さく息を吸う
〇〇「大丈夫」
廉『そっか』
少しだけ安心した声
廉『じゃあさ、少しだけでいいから』
〇〇「……うん」
短く返す
そのまま立ち上がる
〇〇「ちょっと移動するね」
北斗「……あぁ」
それだけ
〇〇はスマホ持ったまま
リビングから少し離れていく
残された空気が、さっきまでと少しだけ変わる
〇〇、スマホを握ったまま少しだけ動けない
〇〇「……はぁ」
小さく息を吐く
頭の中でさっきの声が残ってる
“終わってへんこと”
〇〇「……」
壁にもたれたまま視線落とす
正直、驚いてる
もうとっくに終わったと思ってた
いや、終わらせたつもりでいた
でも
〇〇「……終わってないのかも」
ぽつりと
廉だけじゃなくて
自分も
ふとした瞬間に思い出してた
仕事の合間とか
何でもないタイミングで
〇〇「……なんで今なんだろ」
少し眉を寄せる
ちゃんと考えないようにしてたのに
こうやって言葉にされると
逃げてた部分が全部見える
〇〇「……分かんないって言ったけど」
小さく呟く
〇〇「分かってる気もする」
完全に消えてないこと
ちゃんと終わらせてないこと
〇〇「……めんどくさ」
自分に向けて言うみたいに笑う
でもその顔は少しだけ真剣で
〇〇「……どうするんだろ、これ」
スマホを軽く握り直す
考えたくないのに
もう無視できない状態になってる
〇〇「……はぁ」
もう一度息吐いて
ゆっくり顔を上げる
リビングの方を見る
北斗がいる空間
さっきまで普通に笑ってた場所
〇〇「……」
少しだけ表情が揺れる
でもすぐ整えて
〇〇「……戻るか」
小さく言って
そのまま歩き出す
ーーーーーーーーー
北斗side
リビング
テレビは消えたまま
洗濯機の回る音だけが小さく響いてる
北斗はソファに座ったまま
スマホを手に持ってるけど、画面は見てない
北斗「……」
さっきの会話は聞こえてない
でも
“廉”って名前だけで十分だった
北斗「……はぁ」
小さく息を吐く
なんとなく、内容は想像つく
あの流れで、何の話かなんて
北斗「ちゃんと話す、か……」
ぼそっと
自分には関係ないはずの言葉なのに
やけに引っかかる
北斗「……」
視線を落とす
〇〇がいないだけで
さっきまでの空気が少し違う
北斗「……分かりやす」
自分で小さく笑う
でも笑えてない
北斗「今さらだろ」
何に対してか分からないまま言う
北斗「……」
少しだけ眉を寄せる
戻ってきた時
どういう顔してればいいのか
普通でいいはずなのに
北斗「……普通でいいだろ」
自分に言い聞かせるみたいに呟く
でも落ち着かないまま
無意識にドアの方に視線が向く
戻ってくる足音を待ってる自分に気づいて
少しだけ目を逸らす
リビングのドアが開く音
〇〇が戻ってくる
〇〇「……」
少しだけ間があってから中に入る
北斗は一瞬だけ視線を向けて
北斗「終わった?」
〇〇「うん」
短く返す
そのままソファに戻ってくる
さっきと同じ位置に座るけど
空気は少し違う
北斗「……長かったな」
〇〇「まぁね」
それだけ
少し沈黙
洗濯機の音だけが続く
〇〇「……」
クッション抱えながら
少しだけ視線落とす
北斗「……」
何も聞かない
聞けない
〇〇「ごめん」
ぽつりと
北斗「何が」
〇〇「電話」
北斗「別にいい」
即答
〇〇「……そっか」
少しだけ安心したような声
また沈黙
〇〇「……あのさ」
北斗「ん」
〇〇「ちょっと考えなきゃいけないことできた」
北斗「……」
一瞬だけ間
北斗「だろうな」
短く返す
〇〇「……」
その言葉に少しだけ反応するけど
何も言わない
北斗もそれ以上聞かない
〇〇「ごめん、空気重くした」
北斗「してねぇよ」
〇〇「してる」
北斗「してねぇって」
〇〇「……ありがと」
小さく言う
北斗「礼言われることじゃねぇ」
〇〇「でも」
北斗「気にすんな」
短く
〇〇、少しだけ息吐く
〇〇「……戻ろ」
北斗「何に」
〇〇「普通に」
北斗「最初から普通だろ」
〇〇「……だよね」
少しだけ笑う
でもその笑いは少しだけ弱くて
北斗はそれを見て、何も言わないまま視線を逸らす
〇〇、ソファに座ったまま少しだけ動きが止まる
次の瞬間
ぽろっと涙が落ちる
〇〇「……」
自分でも気づくのが一瞬遅い
指で頬に触れて
初めて「泣いてる」って分かる
〇〇「……え」
小さく声が漏れる
北斗「……」
すぐに気づく
北斗「おい」
でもそれ以上は言わない
〇〇「ごめ……違」
慌てて拭こうとするけど
止まらない
〇〇「なんか……」
言葉が詰まる
〇〇「分かんない」
息が少し震える
〇〇「別に、そんなつもりじゃ……」
でも涙だけが勝手に落ちる
北斗「……」
少しだけ視線を落としてから
北斗「座っとけ」
短く言う
強くも優しくもない声
〇〇は言われた通りそのまま座る
〇〇「恋ってさ……」
ぽつり
〇〇「こんなむずいの?」
北斗「……」
答えない
〇〇「終わったと思ってたのに」
〇〇「違ったのかなって」
涙を拭く手が止まらない
〇〇「でも今は今で……」
言葉がぐちゃぐちゃになる
〇〇「なんでこうなるのか分かんない」
北斗は少しだけ視線を外してから
北斗「分かんなくていい時もあるだろ」
〇〇「……」
その言葉に少しだけ息が止まる
〇〇「……でも」
北斗「今すぐ答え出そうとすんな」
短く
北斗「そういうの、一回ぐちゃぐちゃになるもんだろ」
〇〇「……」
涙を拭く手がゆっくり止まる
でもまだ落ちてる
北斗「無理に整理しなくていい」
〇〇「……うん」
小さく返す
部屋の中は静かで
洗濯機の音だけが遠くにある
〇〇はまだ少し泣きながら
でも少しずつ呼吸を整えていく
ーーーーー
北斗side
涙が落ちた瞬間、頭の中が一瞬だけ止まる
北斗「……」
見なかったことにはできない
でも、すぐに動くのも違う気がした
北斗「……おい」
声は出たけど、自分でも少しだけ固い
〇〇は慌てて何か言おうとしてる
でも、言葉になってない
北斗「座っとけ」
それだけ言うのが精一杯だった
強く言うつもりはないのに
少しだけ距離を取るような言い方になる
北斗「……」
泣いてる理由は全部は分からない
ただ、さっきの電話のことだけじゃないのは分かる
もっと、ぐちゃぐちゃなやつだ
〇〇「恋ってさ……」
その言葉が出たとき
内心で一瞬止まる
〇〇「こんなむずいの?」
それを聞いて、喉の奥が少し詰まる
答えは、あるようでない
北斗「……」
何も言えないまま一拍置いて
北斗「分かんなくていい時もあるだろ」
自分でも驚くくらい、静かな声
〇〇の方をちゃんと見ないまま言う
北斗「今すぐ答え出そうとすんな」
北斗「そういうの、一回ぐちゃぐちゃになるもんだろ」
言いながら思う
“お前もそうなのか”って
でもそれは口に出さない
北斗「無理に整理しなくていい」
そう言ったあと
自分の手のひらを軽く握る
何かしてやりたいのに
正解が分からない
北斗「……」
ただそこにいることしかできない
それが少しだけ悔しいまま
黙って〇〇の呼吸が落ち着くのを待っている
〇〇はしばらくして、ゆっくり呼吸が落ち着いていく
涙を拭く動きも途中で止まって
そのまま、ソファに体を預けたまま目を閉じる
〇〇「……」
もう言葉は出てこない
まぶたが重くなっていって
そのまま静かに眠りに落ちる
北斗「……おい」
小さく声をかけるけど、返事はない
北斗「……寝たか」
少しだけ間
北斗は立ち上がらないまま、視線だけを向ける
さっきまで泣いてた顔が
今は力の抜けたまま静かに眠っている
北斗「……ほんとに」
小さく息を吐く
北斗「忙しすぎだろ」
誰に向けたのか分からない言葉
仕事に追われて
考える余裕もないまま過ごして
それでもちゃんと立ってたんだろうな、と
北斗「……」
そっと毛布を取ってきて
静かにかける
動きはいつもより少しだけゆっくりになる
北斗「無理すんなよ」
眠っている相手に向けた声は小さい
返事はない
当然
北斗はそのまま少しだけ座り直して
ソファで眠る〇〇を見ている
さっきの涙の理由も
今の気持ちの全部も
多分まだ整理なんかついてない
それでも
ただ静かに寝息を立てている姿だけがそこにあって
北斗「……」
北斗は何も言わずに
そのまましばらく動かないまま、時間だけが過ぎていく
ーーーーーーーーー
北斗side
静かになった部屋で
時計の音だけがやけに大きく聞こえる
北斗「……」
ソファで眠る〇〇を見たまま動けない
さっきまで泣いてたのに
今は何もなかったみたいに寝てる
北斗「……はぁ」
小さく息を吐く
楽になったはずの空気なのに
胸の奥だけずっと落ち着かない
北斗(何してんだよ、俺)
自分で自分にツッコミ入れるみたいに思う
別に泣かせたわけじゃない
でも、放っておけるわけでもない
北斗「……」
毛布の端を少し整える
ただそれだけの動作なのに
やけに慎重になる
北斗(こういう時だけちゃんと見ちゃうの、やめろよ)
視線を逸らそうとしても
結局また戻ってくる
寝てる顔
無防備で
仕事のときとは全然違う顔
北斗「……ずるいだろ」
小さく呟く
本人に向けた言葉じゃない
北斗(俺のことなんて、今のこいつの中にどれくらいあんだよ)
廉の名前を聞いた時の顔
さっきの涙
その全部が頭の中に残ってる
北斗「……」
心臓だけがやけにうるさい
落ち着けって思うのに
勝手に意識してしまう距離にいる
北斗(俺のこと見てねぇの分かってんのに)
それでも、目は離せない
北斗「……俺の方が、だいぶしんどいんだけどな」
冗談みたいに小さく言って
でも笑えてない
ただそこに座ったまま
眠っている〇〇の隣で
自分の気持ちだけが静かにうるさくなっていく
ーーー
15時
部屋は少しだけ静かで
カーテン越しの光が柔らかくなっている
ソファにはまだ〇〇が眠ったまま
北斗「……」
隣に座ったまま
スマホを触るでもなく、テレビをつけるでもなく
ただそのまま時間が流れていく
北斗「……」
目の前で規則的な寝息
さっきまでの涙の気配も少しだけ薄れている
北斗「……なんで俺まで眠くなるんだよ」
小さく呟いて、ソファにもたれかかる
天井を見る
まぶたが少し重い
仕事の疲れ
さっきまでの気疲れ
全部が一気にゆるんでいく感じ
北斗「……ちょっとだけな」
誰に言うでもなく言って
そのまま体を横に倒す
ソファの端
〇〇のすぐ隣
距離は近いのに
何も起こさないままの距離
北斗「……」
目を閉じる
すぐ隣で寝ている気配だけがある
北斗(ほんとに……平和だな)
そう思った瞬間
意識がゆっくり落ちていく
呼吸が揃うように
二人ともそのまま眠っていく
静かな昼寝時間
ーーーーーーーーー
北斗「……ん」
スマホの振動で目が覚める
画面を見ると「樹」
北斗「……うるせぇな」
小さく呟いてから出る
北斗「もしもし」
樹『おい、今何してんの』
北斗「寝てた」
樹『昼から?』
北斗「昼からだよ」
樹『平和すぎだろお前』
北斗「お前に言われたくねぇ」
少しだけ目を擦る
横を見ると、〇〇はまだ寝てる
樹『で、今どこ』
北斗「家」
樹『〇〇もいるんでしょ』
北斗「……いる」
樹『あーなるほどね』
その言い方に少しだけ嫌な予感がする
北斗「何だよ」
樹『いやさ、今日ちょっと連絡来ててさ』
北斗「何の」
樹『事務所の方から。〇〇の件』
北斗「……」
一瞬だけ空気が変わる
樹『表には出てないけど、ちょい気にしといてってやつ』
北斗「……分かった」
樹『お前も無理すんなよ』
北斗「無理してねぇよ」
樹『いや今の声絶対寝起きだろ』
北斗「切るぞ」
樹『はいはい、お邪魔しましたー』
通話終了
北斗「……」
スマホを置く
横を見る
〇〇はまだ静かに寝ている
北斗「……」
少しだけ考えてから
またソファに背中を預ける
でももう完全には寝れない
さっきの「事務所」という言葉だけが
頭の中に残ったまま
北斗「……めんどくせぇな」
小さく呟いて
天井を見つめるように目を開ける
ソファの上
〇〇の体が少しずつずれていく
北斗「……」
最初は気づかないくらいの小さな動き
でも次の瞬間
〇〇の体がふっと傾く
北斗「っ……!」
反射で腕が出る
ガシッ、と支える
〇〇「……ん……?」
薄く目を開けかけるけど、まだ寝ぼけてる
北斗「おい、落ちるぞ」
小さめの声で言う
〇〇「……ん……なに……」
完全に意識は戻ってない
そのままもう一回体が傾きかける
北斗「だから……」
ため息混じりに
北斗はそのまま腕を伸ばして
ちゃんと体を引き寄せる
ソファの奥に戻すように支えて
北斗「じっとしてろ」
〇〇「……むり……」
寝ぼけ声
北斗「無理って何だよ」
軽く呆れながらも手は離さない
〇〇はそのまま
結局また安心したみたいに丸くなる
北斗「……ほんとにさ」
小さく呟く
北斗「危なっかしすぎるだろ」
そう言いながらも
手はしばらくそのまま
〇〇の寝息が落ち着くのを確認してから
やっと少しだけ力を抜く
北斗「……寝相まで自由かよ」
小さくため息をついて
またソファに座り直す
でもさっきより少しだけ距離は近くなっていた
ーーー
16:00
カーテンの光が少しだけ傾き始めている
〇〇「……ん」
ゆっくり目を開ける
数秒ぼーっとして
〇〇「……あれ」
体を起こす
横を見ると北斗がいる
〇〇「北斗」
北斗「起きたか」
短く返す
〇〇「今何時?」
北斗「4時」
〇〇「え、めっちゃ寝たじゃん」
北斗「よく寝てたな」
〇〇「すっきりした」
伸びをする
〇〇「なんかさ、めっちゃいい昼寝だった」
北斗「昼寝っていう時間じゃねぇけどな」
〇〇「でも昼でしょ」
北斗「まぁな」
少し笑う
〇〇「途中なんかあった?」
北斗「別に」
〇〇「ほんとに?」
北斗「ほんとに」
〇〇「なんか支えられた気がする」
北斗「気のせいだろ」
即答
〇〇「えー」
北斗「寝相悪いだけ」
〇〇「ひど」
軽く笑う
〇〇「でも気持ちよかった」
北斗「そりゃよかったな」
〇〇「北斗も寝てた?」
北斗「ちょっとな」
〇〇「珍しい」
北斗「お前のせいだろ」
〇〇「なんで」
北斗「隣で普通に寝てるから」
〇〇「それ関係ある?」
北斗「ある」
〇〇「ないでしょ」
北斗「あるって言ってんだろ」
〇〇「はいはい」
笑いながら立ち上がる
〇〇「なんかめっちゃ元気」
北斗「単純かよ」
〇〇「褒めてる?」
北斗「違う」
〇〇「またそれ」
軽く伸びしてキッチンの方を見る
〇〇「お腹すいた」
北斗「さっき寝起きでも言ってたろ」
〇〇「言ってない」
北斗「言ってた」
〇〇「記憶ない」
北斗「都合いいな」
〇〇「いいの」
〇〇、ソファに戻ってそのまま隣に座る
〇〇「ねぇ」
北斗「ん」
〇〇「今日さ、誰か呼ばない?」
北斗「……は?」
〇〇「せっかくオフだし」
北斗「いや、急だな」
〇〇「いいじゃん」
北斗「よくねぇよ」
〇〇「なんで」
北斗「今日静かだっただろ」
〇〇「静かすぎた」
北斗「ちょうどいいんだよ」
〇〇「私はちょうどよくない」
即答
北斗「だろうな」
〇〇「なんかさ、みんなでいるの好きなの」
北斗「知ってる」
〇〇「でしょ」
〇〇、少し身を乗り出して
〇〇「たまにはいいじゃん」
北斗「……」
少し間
北斗「めんどくせぇ」
〇〇「えー」
北斗「準備とか片付けとか全部だろ」
〇〇「やるって」
北斗「絶対やらねぇ」
〇〇「やる!」
北斗「信用ねぇ」
〇〇「ひど」
でも笑ってる
〇〇「じゃあ少人数」
北斗「減らしただけだろ」
〇〇「いいじゃん」
北斗「……なんでそんな呼びたいんだよ」
〇〇「楽しいから」
迷いなく
北斗「……」
〇〇「一人でいるのもいいけどさ」
〇〇「たまに騒ぎたくならない?」
北斗「ならねぇ」
〇〇「えぇ」
北斗「お前と違うんだよ」
〇〇「知ってる」
〇〇「だから聞いてる」
少しだけ柔らかく言う
北斗「……」
視線逸らす
〇〇「お願い」
北斗「軽いな」
〇〇「軽く言ってるだけ」
北斗「……」
少し考えて
北斗「ほんとに少人数な」
〇〇「やった!」
一気に顔明るくなる
北斗「騒ぎすぎたら終わりな」
〇〇「はーい」
絶対聞いてない返事
北斗「……不安しかねぇ」
〇〇「…」
ふと考える
〇〇「……ね」
北斗「ん」
〇〇「やっぱいいや」
北斗「は?」
さっきと真逆の言葉
北斗「どうした急に」
〇〇「なんか」
少し視線落とす
〇〇「無理させてる気した」
北斗「……」
〇〇「ここ来たのもさ」
〇〇「私の都合だし」
〇〇「この前のパーティーも」
少しだけ笑うけど、弱い
〇〇「全部こっち発信じゃん」
北斗「……」
〇〇「北斗、別にこういうの好きじゃないでしょ」
北斗「まぁな」
あっさり
〇〇「でしょ」
〇〇「じゃあやめとく」
北斗「……」
少し間
北斗「別に」
〇〇「いいの」
かぶせるように言う
〇〇「今日は静かにする」
北斗「……」
〇〇「こういう日もありでしょ」
さっきとは違うトーン
北斗「……気使ってんだろ」
〇〇「使ってない」
すぐ返すけど
北斗「使ってる顔してる」
〇〇「してない」
少しだけムキになる
でもすぐに息抜いて
〇〇「……半分くらい」
北斗「ほらな」
〇〇「だって」
〇〇「ここ、北斗の家だし」
〇〇「私の家じゃないし」
北斗「……」
〇〇「勝手に騒ぐの違うなって思っただけ」
静かに言う
北斗は少しだけ視線逸らして
北斗「別に、来るのは嫌じゃねぇよ」
〇〇「……うん」
北斗「ただ」
少し間
北斗「毎回は疲れる」
〇〇「それは分かる」
小さく笑う
〇〇「じゃあ今日はやめ」
北斗「あぁ」
〇〇「その代わり」
北斗「何だよ」
〇〇「次はちゃんと計画してやる」
北斗「やる前提かよ」
〇〇「もちろん」
北斗「……はぁ」
少し呆れた声
でも完全には否定しない
〇〇はソファに少し深く座り直して
〇〇「今日は静かにしよ!」
〇〇「ねぇ」
北斗「ん」
〇〇「恋バナしよ」
北斗「……は?」
即座に顔しかめる
〇〇「いいじゃん」
北斗「よくねぇよ」
〇〇「なんで」
北斗「興味ねぇ」
〇〇「嘘」
北斗「ほんと」
〇〇「絶対あるでしょ」
北斗「ねぇよ」
〇〇「あるって」
少し身を乗り出す
〇〇「好きな人とか」
北斗「……」
一瞬だけ止まる
でもすぐに
北斗「いねぇ」
〇〇「怪しい」
北斗「怪しくねぇ」
〇〇「じゃあ過去でもいい」
北斗「なんでそんな聞きたいんだよ」
〇〇「好きだから」
北斗「何が」
〇〇「恋バナ」
北斗「理解できねぇ」
〇〇「楽しいじゃん」
北斗「楽しくねぇよ」
〇〇「じゃあ私の話する?」
北斗「……」
少しだけ間
北斗「……勝手にしろ」
〇〇「聞く気ある?」
北斗「ない」
〇〇「あるじゃんそれ」
北斗「ねぇよ」
〇〇「あるって」
笑う
〇〇「じゃあ質問形式にする」
北斗「やめろ」
〇〇「一問目」
北斗「聞いてねぇ」
〇〇「好きなタイプは?」
北斗「……」
ため息
北斗「うるせぇな」
〇〇「答えて」
北斗「答えねぇ」
〇〇「ケチ」
北斗「ケチでいい」
〇〇「じゃあ私が当てる」
北斗「やめろって」
〇〇「静かな人?」
北斗「知らねぇ」
〇〇「じゃあ明るい人?」
北斗「……」
一瞬だけ詰まる
〇〇「今間あった」
北斗「ねぇよ」
〇〇「絶対あった」
北斗「気のせいだろ」
〇〇「怪しすぎ」
楽しそうに笑う
北斗は軽く顔そらすだけで
それ以上否定もしない
〇〇「じゃあさ」
北斗「まだやんのか」
〇〇「やる」
即答
〇〇「好きな仕草は?」
北斗「知らねぇ」
〇〇「早い」
北斗「考えてねぇからな」
〇〇「えー絶対あるって」
北斗「ない」
〇〇「ある」
北斗「ない」
〇〇「ある」
北斗「……めんどくせぇな」
〇〇、笑いながら
〇〇「じゃあ私がやるから見て」
北斗「何を」
〇〇、少しだけ髪を耳にかける
〇〇「こういうのとか?」
北斗「……」
一瞬止まる
〇〇「どう?」
北斗「別に」
〇〇「今ちょっと間あった」
北斗「気のせいだろ」
〇〇「またそれ」
〇〇、次
クッション抱えて少し丸くなる
〇〇「こういうのは?」
北斗「……寒いのか」
〇〇「違う!」
笑う
〇〇「じゃあさ」
北斗「まだあんのか」
〇〇「いっぱいある」
北斗「元気だな」
〇〇「さっき寝たから」
〇〇、少しだけ真面目なトーンで
〇〇「じゃあさ、逆に」
北斗「何」
〇〇「嫌いなタイプは?」
北斗「……」
少し考える
北斗「面倒なやつ」
〇〇「え」
〇〇「私じゃん」
北斗「自覚あんのかよ」
〇〇「ある」
笑う
〇〇「でもさ」
北斗「ん」
〇〇「そういうのって結局さ」
〇〇「好きになったら関係なくない?」
北斗「……」
〇〇「条件とかじゃなくて」
北斗「まぁな」
〇〇「でしょ」
〇〇、満足そうにうなずく
〇〇「やっぱ恋ってそういうもんだよね」
北斗「知らねぇよ」
〇〇「絶対知ってるくせに」
北斗「知らねぇって言ってんだろ」
〇〇「はいはい」
軽く流す
〇〇「じゃあ最後」
北斗「最後って言って終わった試しねぇけどな」
〇〇「最後にする」
〇〇「もし好きな人いたらさ」
北斗「……」
〇〇「どうする?」
北斗「何が」
〇〇「言う?言わない?」
北斗「……」
少しだけ間
北斗「言わねぇ」
〇〇「え」
〇〇「なんで」
北斗「言う意味ねぇだろ」
〇〇「あるでしょ」
北斗「ない」
〇〇「だって伝えなきゃ分かんないじゃん」
北斗「分かんなくていい時もある」
〇〇「……」
少しだけ止まる
〇〇「それ、さっきも言ってた」
北斗「そうだな」
〇〇「そっか」
少しだけ考える顔になる
でもすぐに戻って
〇〇「じゃあ私だったら言う」
北斗「だろうな」
〇〇「絶対後悔したくないし」
北斗「……」
〇〇「北斗はしないタイプか」
北斗「しねぇ」
〇〇「もったいない」
北斗「別に」
〇〇「じゃあさ」
北斗「まだあんのか」
〇〇「もしだよ?」
北斗「……」
〇〇「すぐ近くにいたら?」
北斗「……」
〇〇「それでも言わない?」
北斗「……言わない」
〇〇「えー」
〇〇「近くにいるのに?」
北斗「近いからだろ」
〇〇「逆じゃない?」
北斗「逆じゃねぇよ」
〇〇「なんで」
北斗「……壊れる可能性あるだろ」
〇〇「……」
少しだけ止まる
北斗「今の関係でいられなくなるなら」
北斗「そのままでいい」
〇〇「……そっか」
クッション抱えながら少し考える
〇〇「でもさ」
北斗「ん」
〇〇「それでずっと隣にいるのって」
〇〇「しんどくない?」
北斗「……」
一瞬だけ目逸らす
北斗「慣れる」
〇〇「慣れないでしょ」
北斗「慣れるって言ってんだろ」
〇〇「……無理ある」
少し笑うけど、どこか引っかかってる顔
〇〇「私は無理だな」
北斗「だろうな」
〇〇「絶対言う」
北斗「言えよ」
〇〇「うん」
〇〇「じゃないと気持ち悪い」
北斗「気持ち悪いって言い方やめろ」
〇〇「だって」
〇〇「好きなのに何も言わないで隣いるとか」
〇〇「余計意識しちゃうし」
北斗「……」
〇〇「普通に無理」
北斗「……」
少しだけ息吐く
北斗「お前はな」
〇〇「北斗もだよ」
北斗「違う」
〇〇「一緒だって」
北斗「一緒じゃねぇよ」
〇〇「なんでそんな否定するの」
北斗「……」
少しだけ間
北斗「タイプが違うだけだろ」
〇〇「ふーん」
〇〇、少しだけ北斗を見る
〇〇「じゃあさ」
北斗「まだあんのか」
〇〇「ある」
〇〇「もしその相手がさ」
北斗「……」
〇〇「他の人のこと考えてたら?」
北斗「……」
〇〇「それでも言わない?」
北斗「……言わない」
〇〇「……そっか」
さっきより少しだけ静かな声
〇〇「なんで?」
北斗「変わんねぇだろ」
〇〇「何が」
北斗「相手が誰見てるかなんて」
北斗「どうにもできねぇ」
〇〇「……」
〇〇「でもさ」
北斗「ん」
〇〇「それでも好きなら言いたくならない?」
北斗「ならねぇ」
即答
〇〇「強いね」
北斗「強くねぇよ」
〇〇「強いよ」
〇〇、少し考えて
〇〇「私だったらさ」
北斗「言うんだろ」
〇〇「うん」
〇〇「ダメでも言う」
北斗「だろうな」
〇〇「だって」
〇〇「好きなのに何もせず終わる方が嫌」
北斗「……」
〇〇「相手が違う人見てても」
〇〇「自分の気持ちは自分のだから」
北斗「……」
少しだけ視線逸らす
〇〇「変かな」
北斗「……別に」
〇〇「そっか」
少しだけ安心したように笑う
〇〇「でもさ」
北斗「ん」
〇〇「北斗のやり方も分かる」
北斗「……」
〇〇「壊したくないってやつでしょ」
北斗「まぁな」
〇〇「大事なんだね、その関係」
北斗「……」
少しだけ間
北斗「普通だろ」
〇〇「普通じゃない気がするけど」
北斗「そう思うならそうなんだろ」
〇〇「雑」
少し笑う
〇〇「でもさ」
北斗「ん」
〇〇「その相手、幸せじゃん」
北斗「……は?」
〇〇「だって」
〇〇「そんな風に思われてるってことじゃん」
〇〇「壊したくないくらい大事って」
北斗「……」
言葉が詰まる
〇〇「いいな」
さらっと言う
北斗「……」
何も返せないまま、少しだけ目を逸らす
少しの沈黙
〇〇はクッション抱えたまま、ぼんやり前を見る
〇〇「……なんかさ」
北斗「ん」
〇〇「難しいね、恋って」
北斗「さっきも言ってたな」
〇〇「うん」
少し笑うけど、どこか考えてる顔
〇〇「同じ“好き”でもさ」
〇〇「全然違うじゃん、人によって」
北斗「まぁな」
〇〇「私はさ」
少しだけ言葉選ぶ
〇〇「言いたいタイプで」
〇〇「北斗は言わないタイプで」
北斗「……」
〇〇「どっちが正しいとかじゃないんだろうけど」
北斗「ねぇよ、そんなの」
〇〇「だよね」
軽くうなずく
〇〇「でもさ」
北斗「ん」
〇〇「どっちも苦しそうじゃない?」
北斗「……」
〇〇「言っても苦しいし」
〇〇「言わなくても苦しいし」
北斗「……」
短く息吐く
北斗「じゃあどうすりゃいいんだよ」
〇〇「それが分かんないからみんな悩んでるんでしょ」
北斗「……」
〇〇「だから面白いんじゃん」
北斗「面白くねぇよ」
〇〇「私は面白い」
北斗「性格出てるな」
〇〇「でしょ」
少し笑う
〇〇「でもさ」
北斗「ん」
〇〇「ちゃんと好きになれるのはいいことだと思う」
北斗「……」
〇〇「誰かをちゃんと好きって思えるの」
〇〇「それだけでちょっとすごいよね」
北斗「……そうかもな」
小さく返す
〇〇はそのままクッションに顔少し埋めて
〇〇「私、ちゃんと考えよ」
北斗「……あぁ」
短く返すだけ
でもその言葉の意味は分かってるから
それ以上何も言わない
ーーーーーーーーー
北斗side
「私、ちゃんと考えよ」
その一言で、さっきの電話の内容がそのまま頭に浮かぶ
北斗「……」
分かってる
何を考えるのかも
誰のことなのかも
北斗(分かりやすすぎだろ)
小さく息を吐く
〇〇はクッションに顔埋めたまま動かない
その後ろ姿を見ながら
視線だけ少し落とす
北斗(ちゃんと考える、か)
自分にはできないやつだな、って思う
北斗(言うタイプ)と(言わないタイプ)
さっきの会話がそのまま残ってる
北斗「……」
手元を軽く握る
もし言ったらどうなるかなんて
考えなくても分かる
今のこの距離は、多分終わる
北斗(それならこのままでいい)
何度も思ってきたこと
でもさっきの〇〇の言葉が引っかかる
“それでも言う”
“好きなのに何もせず終わる方が嫌”
北斗「……」
小さく舌打ちしそうになるのを止める
北斗(お前はそうなんだろうな)
だからこそ、余計に無理だと思う
もし伝えたら
多分、〇〇はちゃんと向き合おうとする
でもそれは
北斗(今じゃねぇ)
今の状況で、これ以上何か増やすのは違う
ストーカーのこともある
廉のこともある
北斗(俺まで混ぜるなよ)
自分に言い聞かせるみたいに思う
〇〇はまだすぐ近くにいる
でもその距離が、やけに遠く感じる
北斗「……」
視線を少しだけ逸らす
北斗(それでも)
さっきの涙
あの顔
北斗(ああいうの見せられると)
何もできない自分が一番嫌になる
北斗「……めんどくせぇ」
小さく呟く
でもその声はどこか弱くて
結局、何も言わないまま
隣にいることだけを選んでる自分がいる
〇〇「……」
クッションに顔埋めたまま、もぞっと動く
〇〇「お腹すいた」
北斗「急だな」
〇〇「ずっと思ってた」
北斗「言えよ」
〇〇「タイミングなかった」
北斗「今あったのかよ」
〇〇「今来た」
顔上げて普通に言う
北斗「……単純」
〇〇「で、夜ご飯どうする?」
北斗「またその話か」
〇〇「大事でしょ」
北斗「まぁな」
少しだけ考える
〇〇「さすがにさっきパスタだったし」
北斗「被せんなよ」
〇〇「麺はなしね」
北斗「縛り増えたな」
〇〇「米?」
北斗「あり」
〇〇「丼?」
北斗「軽いな」
〇〇「じゃあちゃんとしたやつ?」
北斗「曖昧すぎだろ」
〇〇「何食べたい?」
北斗「……」
少し間
北斗「肉」
〇〇「出た」
北斗「文句あんのか」
〇〇「ない」
笑う
〇〇「じゃあ肉系で」
北斗「任せる」
〇〇「またそれ」
北斗「お前の方が決めんの早いだろ」
〇〇「まぁね」
スマホ取り出す
〇〇「作るか頼むか」
北斗「どっちでも」
〇〇「優柔不断」
北斗「任せてるだけ」
〇〇「はいはい」
少しスクロールしながら
〇〇「でもさ」
北斗「ん」
〇〇「こうやって普通にご飯決めてるの、なんかいいね」
北斗「……」
〇〇「平和」
北斗「だな」
短く返す
〇〇「じゃあ今日は頼む?」
北斗「いいんじゃね」
〇〇「オッケー」
そのまま注文画面開きながら
〇〇「肉系探すわ」
北斗「頼む」
〇〇「また任せるって言った」
北斗「うるせぇ」
〇〇、少し笑いながらスマホ覗く
さっきまでの空気とは違う
少し軽い時間がまた戻ってくる
〇〇「これどう?」
スマホをそのまま北斗の方に寄せる
北斗「……どれ」
〇〇「このステーキ丼」
北斗「いいじゃん」
〇〇「ほんとに見てる?」
北斗「見てる」
〇〇「絶対適当」
北斗「適当じゃねぇよ」
〇〇「さっきから全部それ」
北斗「外してねぇだろ」
〇〇「まぁね」
少し笑う
〇〇「じゃあこれにするか」
北斗「任せる」
〇〇「また言った」
北斗「いいだろ別に」
〇〇「いいけど」
そのまま注文ボタン押す
〇〇「はい、決定」
北斗「サンキュ」
〇〇「30分くらいかな」
北斗「ちょうどいいな」
〇〇「何が?」
北斗「なんかする時間」
〇〇「雑すぎ」
北斗「じゃあ何すんだよ」
〇〇「んー」
少し考える
〇〇「テレビ?」
北斗「いいんじゃね」
〇〇「またそれ」
北斗「却下してねぇだけマシだろ」
〇〇「確かに」
リモコン手に取る
〇〇「何見る?」
北斗「任せる」
〇〇「ほんとに決めないね」
北斗「決めるの向いてねぇんだよ」
〇〇「知ってる」
笑いながらチャンネル変えていく
〇〇「これどう?」
北斗「いいんじゃね」
〇〇「またそれ!」
北斗「ちゃんと見てるって」
〇〇「ほんとに?」
北斗「ほんとに」
〇〇「じゃあこれでいいや」
そのままテレビつける
〇〇はソファに少し深く座り直して
北斗も横にそのまま座る
さっきより少しだけ近い距離のまま
自然に同じ画面を見てる
〇〇「なんか今日さ」
北斗「ん」
〇〇「一日長くない?」
北斗「濃いからな」
〇〇「それか」
〇〇「まだ終わってないけど」
北斗「まだ夜あるしな」
〇〇「ね」
少し笑う
テレビの音が流れる中で
またゆるい時間が続いていく
ーーーーーーーーー
北斗side
テレビの音は流れてるのに
ほとんど頭に入ってこない
視線は自然と横にいく
〇〇は普通に画面見てる
北斗「……」
横顔
笑ったり、少し眉動いたり
表情がコロコロ変わる
北斗(ほんと切り替え早ぇな)
小さく思う
でもその軽さに、少しだけ救われてもいる
北斗(さっきのあれ、引きずってねぇのかよ)
いや、多分引きずってる
でも出さないだけ
北斗「……」
視線外そうとするけど
また戻る
距離が近い
手を伸ばせば触れるくらいの位置
北斗(近すぎだろ)
自分で分かってるのに
離れない
〇〇は何も気づかないままテレビ見てる
北斗(こういうとこなんだよな)
無意識で
何も考えてないみたいに隣にいるところ
北斗「……」
胸の奥が少しだけうるさくなる
さっきの会話がよぎる
“言わない”って言った自分
“言う”って言ってた〇〇
北斗(もし気づかれたらどうすんだよ)
一瞬そんなこと考える
でもすぐに打ち消す
北斗(気づくわけねぇだろ)
小さく息を吐く
テレビの光が横顔に当たって
少しだけ柔らかく見える
北斗「……」
ほんの一瞬だけ目を細めてから
また前を向く
何もなかったみたいな顔で
ただ同じ画面を見てるふりをする
ーーーーーーーーー
ピンポーン
インターホンの音が部屋に響く
〇〇「きた」
すぐに反応して立ち上がる
北斗「早ぇな」
〇〇「お腹すいてたから」
そのまま玄関に向かう
北斗はソファに座ったまま少しだけ後ろを見る
北斗「……」
さっきまでの空気が一回切り替わる感じ
玄関の方から小さく声が聞こえる
〇〇「はーい」
ドア開ける音
受け取るやり取りが少しだけ続いて
〇〇「ありがとうございます」
ドア閉まる音
数秒後
袋持ったまま戻ってくる
〇〇「きたよ」
北斗「見りゃ分かる」
〇〇「テンション低」
北斗「普通だろ」
〇〇「私は高い」
そのままテーブルに置く
〇〇「いい匂い」
袋開けながら嬉しそうに言う
北斗「腹減ってるだけだろ」
〇〇「それもある」
笑う
〇〇「はい」
一つ渡す
北斗「サンキュ」
〇〇「じゃあ食べよ」
そのままソファ戻って座る
さっきと同じ位置
自然とまた隣同士になる
〇〇「いただきます」
北斗「いただきます」
テレビの音が流れる中
〇〇はステーキ丼のフタを開ける
北斗は別の容器を開ける
〇〇「やば」
北斗「何が」
〇〇「これ当たりかも」
北斗「まだ食ってねぇだろ」
〇〇「見た目で分かる」
北斗「適当だな」
〇〇「いただきます」
すぐ一口食べる
〇〇「……うま」
北斗「早ぇな」
〇〇「ほんとに美味しい」
北斗も少し食べる
北斗「……普通にうまいな」
〇〇「でしょ」
〇〇、満足そうにもう一口
テレビ見ながら自然に食べ進める
〇〇「北斗それ何?」
北斗「焼肉弁当」
〇〇「いいじゃん」
北斗「お前が肉言ったからな」
〇〇「影響されてる」
北斗「されてねぇ」
〇〇「されてるって」
少し笑う
〇〇「一口ちょうだい」
北斗「やだ」
即答
〇〇「えー」
北斗「自分の食え」
〇〇「ちょっとだけ」
北斗「無理」
〇〇「ケチ」
北斗「ケチでいい」
〇〇「じゃあこっちあげる」
北斗「いらねぇ」
〇〇「ひど」
でもそのまま普通に食べる
少し間
テレビの笑い声が流れる
〇〇もつられて少し笑う
〇〇「これおもしろ」
北斗「そうか?」
〇〇「うん」
北斗も画面見る
少しして
北斗「……それ一口くれ」
〇〇「え」
〇〇「さっき断ったじゃん」
北斗「気分変わった」
〇〇「なにそれ」
少し笑ってから、ふと思いつく
〇〇「じゃあさ」
北斗「……何」
〇〇「はい、あーん」
箸で一口分すくって、そのまま差し出す
北斗「は?」
〇〇「一口でしょ」
北斗「そういう意味じゃねぇ」
〇〇「いいじゃん」
北斗「よくねぇよ」
〇〇「ほら」
少しだけ近づける
〇〇「冷めるよ」
北斗「……」
一瞬だけ止まる
でもそのまま逃げるのも変で
北斗「……一回だけな」
〇〇「はーい」
軽い返事
北斗、少しだけ顔寄せて食べる
〇〇「どう?」
北斗「……うまい」
〇〇「でしょ」
満足そうに笑う
北斗はすぐ視線逸らして
北斗「もうやんねぇからな」
〇〇「えー」
〇〇「楽しいのに」
北斗「楽しくねぇよ」
〇〇「私は楽しい」
笑いながらまた自分で食べる
北斗は無言で食べながらも
さっきより少しだけペースが乱れてる
〇〇「なんか顔赤くない?」
北斗「気のせいだろ」
〇〇「怪しい」
北斗「うるせぇ」
〇〇「図星だ」
北斗「違ぇよ」
〇〇は楽しそうに笑いながら
またテレビに視線戻す
北斗はその横で、何事もなかったみたいに食べるけど
さっきの一瞬だけがやけに残っている
〇〇「ねぇ」
北斗「ん」
〇〇「今度こっち」
北斗「何が」
〇〇「それ、一口ちょうだい」
北斗「……やだ」
〇〇「なんで」
北斗「さっきやっただろ」
〇〇「それはそっち」
北斗「同じだろ」
〇〇「違う」
北斗「何が」
〇〇「バランス」
北斗「意味分かんねぇ」
〇〇「いいから」
少しだけ身を乗り出す
〇〇「はい、あーんして」
北斗「は?」
〇〇「さっき私やったじゃん」
北斗「……」
〇〇「公平にいこうよ」
北斗「その理論おかしいだろ」
〇〇「いいから」
普通の顔で待ってる
北斗「……」
ため息ひとつ
北斗「一回だけな」
〇〇「やった」
北斗、渋々一口取って差し出す
北斗「……ほら」
〇〇「ん」
そのまま普通に食べる
〇〇「んー、美味しい」
北斗「だろ」
〇〇「こっちも正解だね」
満足そうに笑う
北斗「満足したか」
〇〇「した」
北斗「ならいい」
〇〇「またやろ」
北斗「やらねぇ」
〇〇「えー」
北斗「絶対やらねぇ」
〇〇「絶対じゃないでしょ」
北斗「絶対」
〇〇「そのうちやる」
北斗「やらねぇって」
〇〇は笑いながらテレビに戻って
また普通に食べ始める
北斗はその横で、少しだけ落ち着かないまま
何もなかった顔で箸を進める
北斗、箸で肉を一枚つまむ
そのまま口に運ぼうとした瞬間
〇〇、ふっと動く
北斗「……ん?」
次の瞬間
ぱくっ
北斗「は?」
〇〇が横からそのまま食べる
〇〇「んー、美味しい」
何事もなかったみたいに言う
北斗「ちょっと待て」
〇〇「なに?」
北斗「今の俺のだろ」
〇〇「取った」
北斗「見りゃ分かる」
〇〇「早い者勝ち」
北斗「ルール聞いてねぇ」
〇〇「今できた」
北斗「勝手に作んな」
〇〇、普通に次の一口食べながら
〇〇「油断してる方が悪い」
北斗「してねぇよ」
〇〇「してた」
北斗「してねぇ」
〇〇「してたって」
笑ってる
北斗「……ガキかよ」
〇〇「楽しいじゃん」
北斗「楽しくねぇ」
〇〇「私は楽しい」
北斗「だろうな」
北斗、ため息つきながらもう一枚取る
今度は少し警戒してそのまま口に入れる
〇〇「あ、守った」
北斗「当たり前だろ」
〇〇「つまんない」
北斗「知らねぇよ」
〇〇「じゃあ次狙うね」
北斗「やめろ」
〇〇「やる」
北斗「やめろって」
〇〇、楽しそうに笑いながら
またタイミングを見てる
北斗は少しだけ警戒したまま食べるようになって
その空気自体が、さっきより少しだけ賑やかになる
ーーーーーーーーー
北斗side
「……それ一口くれ」って言った時点で
正直、ちょっと後悔してた
北斗(なんで言ったんだよ)
でももう引けなくて
目の前に差し出される箸
「はい、あーん」
北斗「……は?」
想定してなかったやつ
北斗(いやそうなるか?普通)
逃げようと思えば逃げられたのに
変に意識してるのバレる方が嫌で
結局受ける
北斗「……一回だけな」
顔少し寄せて、食べる
その距離、一瞬だけ近すぎる
北斗(近……)
味なんかちゃんと分かってるのに
変なとこばっか意識いく
「うまい」って言いながら
すぐ視線逸らす
北斗(何やってんだよ)
落ち着けって思ってるのに
心臓だけ勝手にうるさい
そのあとすぐに距離戻るのに
さっきの一瞬だけが残る
北斗(もうやんねぇ)
本気で思った
なのに
「今度こっち」って言われて
北斗(は?)
またかよって顔しながらも
断りきれない
結局やる
北斗「……ほら」
できるだけ距離取るようにして差し出す
でも〇〇は普通に食べるだけ
北斗(なんでこっちだけこうなんだよ)
何も気にしてない顔が余計くる
その後も普通に食べてたはずなのに
箸で肉つまんだ瞬間
横から気配
北斗「……ん?」
ぱくっ
北斗「は?」
完全に油断してた
北斗(いや今のは反則だろ)
何事もなかったみたいに「美味しい」って言う顔
北斗「ちょっと待て」
言いながらも、ちょっと笑いそうになる
北斗(ほんと自由だなこいつ)
北斗(……でも)
こうやって隣で笑ってる方がいいに決まってる
だから何も言わない
文句言いながらも
結局その空気に乗せられてる
北斗(……ほんと、調子狂う)
北斗、最後の一口を箸で持ち上げる
北斗「……これで終わり」
〇〇「え」
〇〇「最後?」
北斗「最後」
〇〇「いいなそれ」
北斗「やらねぇぞ」
〇〇「まだ何も言ってない」
北斗「顔で分かる」
そのまま口に運ぼうとした瞬間
〇〇がすっと近づく
ぱくっ
北斗「……は?」
完全に持っていかれる
〇〇「最後もらい」
満足そう
北斗「いや待て」
〇〇「何」
北斗「それ俺の」
〇〇「今は私の」
北斗「違うだろ」
〇〇「早い者勝ち」
北斗「またそれかよ」
〇〇「ルールだから」
北斗「知らねぇよ」
〇〇、普通に食べ終わって
〇〇「ごちそうさま」
北斗「……」
一瞬黙る
北斗「お前さ」
〇〇「ん?」
北斗「それ何回目だと思ってんの」
〇〇「何が」
北斗「……いや、いい」
〇〇「気になる」
北斗「気にすんな」
〇〇「気になるって」
北斗「いいから」
少しだけ視線逸らす
〇〇「え、何?」
北斗「……数えてねぇよ」
〇〇「何それ」
北斗「知らなくていい」
〇〇「余計気になる」
北斗「気にすんなって」
〇〇「えー」
〇〇は笑ってるだけで何も分かってない
北斗は空になった容器見ながら
小さく息吐く
北斗「……ほんと自由だな」
でもそれ以上は何も言わないまま
そのまま視線を逸らす
〇〇、自分の丼をそのまま食べながら
ふと止まる
〇〇「……あ」
北斗「ん?」
〇〇「今のさ」
北斗「……」
〇〇「間接キスじゃん」
北斗「……」
一瞬固まる
〇〇「何回目?」
北斗「知らねぇって言っただろ」
〇〇「え、絶対さっきのもでしょ?」
北斗「……」
〇〇「てか普通に何回もしてるよね」
北斗「……」
〇〇、少し考えてから
〇〇「まぁいっか」
また普通に食べ始める
北斗「……は?」
〇〇「気にしないタイプ」
北斗「軽すぎだろ」
〇〇「いいじゃん別に」
北斗「よくねぇよ」
〇〇「減るもんじゃないし」
北斗「そういう問題じゃねぇ」
〇〇「えー?」
〇〇、全然気にしてない顔でまた一口
〇〇「美味しいし」
北斗「関係ねぇだろ」
〇〇「ある」
北斗「ねぇよ」
〇〇「あるって」
笑いながら食べ続ける
北斗は完全にペース崩されて
北斗「……ほんとお前さ」
〇〇「なに」
北斗「何も考えてねぇだろ」
〇〇「考えてるよ」
北斗「どこが」
〇〇「美味しいなーって」
北斗「それだけだろ」
〇〇「それで十分」
にこっと笑う
北斗「……はぁ」
小さくため息つく
ーーー
〇〇「ごちそうさま」
北斗「……ごちそうさま」
テーブルの上には空の容器だけ残る
〇〇「お腹いっぱい」
そのままソファに倒れる
北斗「食った直後にそれやめろ」
〇〇「無理」
北斗「太るぞ」
〇〇「今それ言う?」
北斗「事実だろ」
〇〇「ひど」
でもそのまま動かない
〇〇「でも満足」
北斗「ならいいだろ」
〇〇「うん」
少し間
テレビはまだ流れてる
〇〇、天井見ながら
〇〇「なんか今日さ」
北斗「ん」
〇〇「いろいろあったね」
北斗「……まぁな」
〇〇「でもさ」
北斗「ん」
〇〇「結果的に平和じゃない?」
北斗「……そうだな」
〇〇「ね」
少し笑う
〇〇「こういう日、嫌いじゃない」
北斗「俺も」
ぽつりと
〇〇「珍しいこと言った」
北斗「うるせぇ」
〇〇「ふふ」
〇〇、そのまま目閉じる
北斗「寝るなよ」
〇〇「寝ない」
北斗「絶対寝るだろ」
〇〇「寝ないって」
でももう声が少し眠そう
北斗「……」
軽く片付けながら横を見る
〇〇は半分目閉じてる
北斗「ほらな」
〇〇「起きてる……」
全然起きてない声
北斗は小さくため息つきながら
容器まとめていく
その横で
〇〇はまたゆっくり意識を落としかけてる
〇〇「……あ」
ソファで目閉じかけてたのに、急に起きる
北斗「……何」
〇〇「思い出した」
北斗「何を」
〇〇、少しだけ体起こして
〇〇「泡風呂したい」
北斗「は?」
〇〇「泡のやつ」
北斗「いや意味分かんねぇ」
〇〇「なんか急にやりたくなった」
北斗「なんで今だよ」
〇〇「分かんない」
北斗「分かれよ」
〇〇「でもさ」
少しテンション上がる
〇〇「絶対楽しいじゃん」
北斗「一人でやれ」
〇〇「えー」
北斗「えーじゃねぇよ」
〇〇「ある?」
北斗「何が」
〇〇「泡になるやつ」
北斗「ねぇよ」
〇〇「えー」
北斗「なんである前提なんだよ」
〇〇「ありそうじゃん」
北斗「どこがだよ」
〇〇「なんとなく」
北斗「適当すぎる」
〇〇「じゃあ買お」
北斗「どこに」
〇〇「……確かに」
少し考える
〇〇「じゃあ今度」
北斗「今度もやらねぇよ」
〇〇「やる」
北斗「やらねぇ」
〇〇「やるって」
北斗「……」
少しだけ呆れた顔
〇〇「北斗もやろ?」
北斗「やらねぇよ」
〇〇「なんで」
北斗「一人で入れ」
〇〇「つまんない」
北斗「知らねぇよ」
〇〇、またソファに戻ってゴロン
〇〇「絶対楽しいのに」
北斗「一人で楽しめ」
〇〇「じゃあ見てて」
北斗「もっとやだ」
〇〇「えー」
北斗「えーじゃねぇ」
〇〇はケラケラ笑って
さっきまでの眠気どっかいってる
北斗はため息つきながらも
完全には止める気もなくてそのまま見てる
〇〇「てかさ」
北斗「ん」
〇〇「風磨とか絶対こういうの好きそうじゃない?」
北斗「……まぁな」
〇〇「絶対ノリノリでやるでしょ」
北斗「やりそうだな」
〇〇「“うわ泡やば!”とか言ってさ」
北斗「言いそう」
〇〇、笑う
〇〇「で、将生は」
北斗「ん」
〇〇「ちょっと引きながらも結局やるタイプ」
北斗「分かる」
〇〇「“え、マジでやるの?”って言いながら入るの」
北斗「で、一番楽しむやつな」
〇〇「そうそう!」
〇〇、楽しそうに身乗り出す
〇〇「でさ、最後写真撮りだす」
北斗「ありがち」
〇〇「で風磨が変な顔して」
北斗「それSNS載せるやつだろ」
〇〇「絶対バズる」
北斗「知らねぇよ」
〇〇「でも楽しそう」
北斗「お前がな」
〇〇「うん」
即答
北斗「だろうな」
〇〇「今度ほんとにやろうかな」
北斗「巻き込まれそうだな」
〇〇「来る?」
北斗「行かねぇ」
〇〇「えー」
北斗「絶対行かねぇ」
〇〇「でも来たら楽しいよ」
北斗「想像つくから行かねぇ」
〇〇「ひど」
でも笑ってる
〇〇「でもさ」
北斗「ん」
〇〇「みんなでわちゃわちゃするの、やっぱ好きだな」
北斗「知ってる」
〇〇「でしょ」
ソファにまた倒れながら
〇〇「今日も呼べばよかったかなー」
北斗「やめとけ」
〇〇「冗談」
北斗「ほんとかよ」
〇〇「半分」
北斗「半分でもやめろ」
〇〇はくすっと笑って
また天井見ながらぼーっとする
〇〇「……よし」
急に体起こす
北斗「何」
〇〇「やっぱお風呂入る」
北斗「急だな」
〇〇「泡はないけどいいや」
北斗「さっきのこだわりどこいった」
〇〇「気分変わった」
北斗「適当すぎる」
〇〇「いいの」
そのまま立ち上がる
〇〇「お湯ためてくる」
北斗「はいはい」
〇〇、リビングから出ていく
廊下に足音が響いて
そのまま浴室の方へ
少しして
水の音が聞こえ始める
北斗はソファに座ったままそれを聞く
北斗「……」
さっきまで騒がしかったのに
急に静かになる
テレビの音と、水の音だけ
北斗「風呂な……」
小さく呟く
〇〇のテンションに振り回されてる感じが
まだ少し残ってる
でもどこか落ち着く
北斗は軽く背もたれに体預けて
そのままぼんやり時間を過ごす
少しして
浴室の方から声
〇〇「北斗ー!」
北斗「……何」
少し声張って返す
〇〇「温度これでいい?」
北斗「知らねぇよ」
〇〇「見て!」
北斗「なんでだよ」
〇〇「いいから!」
北斗「……はぁ」
ため息ついて立ち上がる
そのまま廊下歩いて浴室の前まで行く
ドア越しに声
北斗「何度」
北斗「高い」
〇〇「えー」
北斗「十分だろ」
〇〇「じゃあ41」
北斗「1刻みで交渉すんな」
〇〇「大事」
北斗「……好きにしろ」
〇〇「じゃあ41」
北斗「結局な」
〇〇「ありがとう」
北斗「俺何もしてねぇけど」
〇〇「相談した」
北斗「勝手にだろ」
〇〇、くすっと笑う気配
水の音がまた少し強くなる
北斗はドアの前で一瞬止まってから
北斗「……溺れんなよ」
〇〇「しない」
北斗「ならいい」
それだけ言ってリビングに戻る
さっきと同じソファに座るけど
どこか少しだけ落ち着かないまま
水の音をぼんやり聞いている
水の音が一定に続く中
〇〇がひょこっと戻ってくる
北斗「……早いな」
〇〇「まだ溜まんない」
北斗「だろうな」
〇〇、そのままソファに戻ってきて
何も言わずに隣に座る
少し間
〇〇「ひま」
北斗「知らねぇよ」
〇〇「相手して」
北斗「ガキか」
〇〇「うん」
即答
北斗「自覚あんのかよ」
〇〇「ある」
そのまま少し体寄せる
北斗「……何してんだよ」
〇〇「暇だから」
北斗「理由になってねぇ」
〇〇「いいじゃんちょっとくらい」
クッション持ったまま寄りかかる
北斗「……」
一瞬固まる
〇〇「ねぇ」
北斗「ん」
〇〇「今日さ」
北斗「何」
〇〇「なんかずっと一緒にいるね」
北斗「オフだからな」
〇〇「いいねこういうの」
北斗「……まぁな」
小さく返す
〇〇、少しだけ顔上げて
〇〇「嫌じゃない?」
北斗「何が」
〇〇「ずっといるの」
北斗「別に」
〇〇「ほんとに?」
北斗「ほんとに」
〇〇「ならよかった」
そのまままた寄りかかる
北斗「……」
何も言わないけど
少しだけ体に力入る
〇〇「ちょっとだけこのままいい?」
北斗「……」
一瞬だけ間
北斗「好きにしろ」
〇〇「ありがと」
小さく笑う
〇〇、そのまま寄りかかったまま動かない
北斗「……」
さっきまでうるさかったのに
急に静かになる
北斗「飽きたのか」
〇〇「飽きてない」
小さめの声
〇〇「落ち着いてるだけ」
北斗「……」
その言い方に少しだけ言葉詰まる
〇〇「ねぇ」
北斗「ん」
〇〇「北斗ってさ」
北斗「何」
〇〇「ちゃんと優しいよね」
北斗「……は?」
〇〇「なんかさ」
〇〇「言い方は雑だけど」
〇〇「ちゃんと付き合ってくれるし」
北斗「……」
視線少し逸らす
北斗「別に普通だろ」
〇〇「普通じゃないよ」
北斗「普通だって」
〇〇「違う」
少しだけきっぱり
〇〇「普通だったらさ」
〇〇「こんな面倒なやつ相手しない」
北斗「自覚あんのかよ」
〇〇「あるって」
少し笑う
〇〇「でもありがと」
北斗「……」
その一言に、返事が詰まる
北斗「……別に」
それだけしか出てこない
〇〇はそのまま目閉じて
〇〇「ちょっとだけ休憩」
北斗「また寝るなよ」
〇〇「寝ない」
北斗「信用ねぇ」
〇〇「今回は大丈夫」
北斗「さっきも聞いた」
〇〇「今回はほんと」
北斗「はいはい」
小さく返す
そのまましばらく無言
〇〇の体重が少しだけかかってるのを感じながら
北斗は動かずにいる
北斗「……」
ふと、少しだけ視線落として
寄りかかってる頭を見る
北斗(ほんと無防備だな)
小さく息吐く
そのまま、何も言わずにその状態を崩さない
遠くで水の音が変わっていく
〇〇「北斗」
北斗「ん」
〇〇「眠くない?」
北斗「さっき寝たからな」
〇〇「そっか」
〇〇「私はちょっと眠い」
北斗「だろうな」
〇〇「でも起きてる」
北斗「半分な」
〇〇「半分」
〇〇「……さ」
北斗「ん」
〇〇「自由に外出れないの、やだな」
ぽつりと
北斗「……」
少しだけ間が空く
〇〇「別にさ」
〇〇「こうやっているのもいいけど」
〇〇「普通にコンビニ行ったりとかさ」
〇〇「そういうのもできないの、ちょっとしんどい」
北斗「……まぁな」
短く返す
〇〇「なんか閉じ込められてるみたい」
北斗「閉じ込めてるわけじゃねぇだろ」
〇〇「分かってる」
〇〇「でもさ」
少しだけ声弱くなる
〇〇「気にしなきゃいけないのが、めんどくさい」
北斗「……」
〇〇「普通に生活したいだけなのに」
北斗「……分かるけど」
少しだけ言葉選ぶ
北斗「今は我慢しろ」
〇〇「……うん」
すぐ返すけど、小さい
北斗「その代わり」
〇〇「ん?」
北斗「中で好きなことやれよ」
〇〇「さっきみたいに?」
北斗「まぁな」
〇〇「泡風呂?」
北斗「それはやめろ」
〇〇、少しだけ笑う
〇〇「じゃあまたなんか考える」
北斗「頼む」
〇〇「でもさ」
北斗「ん」
〇〇「こうやって話してるだけでも」
〇〇「ちょっと楽」
北斗「……」
〇〇「一人だったら多分もっとやばい」
北斗「……だろうな」
〇〇はそのまま少しだけ寄り直して
〇〇「ありがとね」
北斗「……別に」
短く返す
でもそのまま、少しだけ視線逸らして
何も言わずにその時間を受け入れてる
「お風呂が沸きました」
機械音が部屋に響く
〇〇「お、きた」
少し体起こす
北斗「だな」
〇〇、立ち上がりかけて止まる
〇〇「……あ」
北斗「何」
〇〇「今日さ」
北斗「ん」
〇〇「北斗先入っていいよ」
北斗「は?」
〇〇「いつも私じゃん」
北斗「別にいいだろ」
〇〇「今日は譲る」
北斗「急にどうした」
〇〇「なんとなく」
北斗「……」
少しだけ見る
北斗「いいのかよ」
〇〇「いいよ」
〇〇「私ちょっとゆっくりしたいし」
北斗「……」
一瞬だけ考える
北斗「じゃあ入る」
〇〇「どうぞ」
軽く手でどうぞする
北斗「サンキュ」
立ち上がる
〇〇「ちゃんと温まってね」
北斗「親かよ」
〇〇「大事」
北斗「はいはい」
そのまま浴室の方へ向かう
〇〇はソファにまた戻って座る
さっきより少しだけ静かな顔で
テレビをぼんやり見ながら
時間を待つ
北斗side
ドア閉めて、服脱いで
そのまま浴室入る
湯気が少しだけこもってる
北斗「……あったけぇ」
軽く肩回してから湯船に入る
北斗「はぁ……」
思わず息が抜ける
静かだ
さっきまでのテレビの音も
〇〇の声もない
北斗(久々だな、この感じ)
一人の空間
でも完全に落ち着くかって言われると
そうでもない
北斗「……」
さっきまでのことが普通に頭に浮かぶ
恋バナ
あーん
間接キス
北斗「……はぁ」
湯気の中で少しだけ顔しかめる
北斗(ほんと何してんだよ)
思い返すだけで
変に意識してる自分がいる
北斗(向こうは何も考えてねぇのに)
それが一番分かってる
〇〇はただ楽しくやってるだけ
深い意味なんて一つもない
北斗「……」
湯船の中で少しだけ沈む
北斗(それでも)
距離近すぎるだろ、って思う
さっきソファで寄りかかってきた感覚
まだ残ってる気がする
北斗「……無意識でやるなよ」
小さく呟く
自分に言ってるのか
〇〇に言ってるのか分からないまま
北斗(俺だけじゃん)
こんな風にいちいち引っかかってるの
北斗「……」
湯船の中で目閉じる
少しだけ頭冷やそうとしても
逆に考える時間が増えるだけ
北斗(言わないって決めたのに)
さっき自分で言った言葉が浮かぶ
壊したくないから言わない
それは変わってない
でも
北斗(このままもきついだろ)
少しだけ息が詰まる
〇〇の中にいるのは自分じゃない
それも分かってる
北斗「……めんどくせぇ」
お湯に背中預けながら小さく呟く
でも出る答えは一つで
北斗(それでもここにいるしかねぇか)
目を開けて天井を見る
湯気でぼやけた視界の中で
何も決めきれないまま
ただ時間だけがゆっくり過ぎていく
ーーーーーーーーー
〇〇side
北斗が浴室に入っていったのを見送ってから
ソファに戻る
少しだけ静かになる部屋
〇〇「……」
なんとなくスマホ手に取る
少し迷ってから発信
数コールで出る
親友の橋本環奈
環奈『もしもーし』
〇〇「もしもし」
環奈『珍しくない?この時間』
〇〇「ちょっとね」
環奈『どうしたの』
〇〇「んー……」
少しだけ言葉詰まる
〇〇「なんか話したくて」
環奈『あーはいはい、来たねそれ』
〇〇「何それ」
環奈『悩んでるときのやつじゃん』
〇〇「悩んでるっていうか」
〇〇「……分かんない」
環奈『恋?』
〇〇「早い」
環奈『当たったでしょ』
〇〇「……まぁ」
ソファに少し沈む
環奈『廉?』
〇〇「……うん」
環奈『話したの?この前のやつ』
〇〇「電話来てさ、今日」
環奈『え、タイミング』
〇〇「でさ」
少しだけ目閉じる
〇〇「やっぱ終わってなかった」
環奈『……』
〇〇「向こうも同じこと言ってて」
環奈『そっか』
〇〇「自分でも思ってたし」
〇〇「たまに考えちゃうし」
環奈『うん』
〇〇「でもさ」
少しだけ間
〇〇「今の状態も嫌じゃないの」
環奈『今って?』
〇〇「北斗のとこ」
環奈『あー』
〇〇「普通に楽で」
〇〇「今日もずっと一緒にいて」
〇〇「なんか……落ち着く」
環奈『へぇ』
〇〇「でもそれってさ」
〇〇「恋じゃないのはわかってる」
環奈『……』
少しだけ笑う気配
環奈『もう一人いるね、それ』
〇〇「え」
環奈『北斗でしょ』
〇〇「いやいや」
即否定
〇〇「それはない」
環奈『ほんとに?』
〇〇「うん」
〇〇「ただの仲間」
環奈『ふーん』
少し含んだ言い方
〇〇「なにその反応」
環奈『いや別に』
〇〇「絶対思ってるじゃん」
環奈『だってさ』
環奈『今一緒に住んでるんでしょ?』
〇〇「まぁ」
環奈『距離バグるよそれ』
〇〇「バグってない」
環奈『ほんとに?』
〇〇「うん」
でも少しだけ言葉弱い
環奈『ふーん』
〇〇「てかさ」
話逸らすように
〇〇「恋って難くない?」
環奈『今さら?』
〇〇「だってさ」
〇〇「好きってなんだっけってなる」
環奈『それな』
〇〇「でしょ」
環奈『で、どうしたいの』
〇〇「……分かんない」
素直に言う
〇〇「廉のこともあるし」
〇〇「でも今のままも嫌じゃないし」
環奈『贅沢な悩みだね』
〇〇「ひど」
環奈『でも大事なやつじゃん』
〇〇「まぁね」
少しだけ笑う
環奈『ちゃんと考えな』
〇〇「うん」
〇〇「さっきも言われた」
環奈『誰に』
〇〇「北斗」
環奈『ほらもう関わってるじゃん』
〇〇「違うって」
環奈『はいはい』
軽く流される
〇〇は少しだけ天井見て
〇〇「……むず」
環奈『楽しんでるでしょ』
〇〇「まぁちょっと」
環奈『でしょ』
〇〇「でもちゃんと決めないとな」
環奈『うん』
〇〇「ありがと」
環奈『いつでもどーぞ』
〇〇「また連絡する」
環奈『待ってる』
通話が切れる
〇〇「……」
スマホ見たまま少しぼーっとする
さっきより少しだけ頭の中が整理されてる気もするけど
答えはまだ出ないまま
〇〇「……ないない」
通話切ったあと、すぐ小さく呟く
〇〇「北斗とか、ないでしょ」
スマホを胸の上に置いて天井を見る
〇〇「ただ一緒にいるだけだし」
〇〇「今たまたま近いだけで」
少しだけ言い聞かせるように
〇〇「優しいし、楽だし」
〇〇「それだけ」
小さくうなずく
〇〇「うん、ただの仲間」
環奈の言葉を思い出して少しだけ眉寄せる
〇〇「距離バグるって言ってたけど」
〇〇「バグってないし」
さっきのやり取りも思い出す
あーんとか、ちょっと近かった距離とか
〇〇「……あれはただのノリ」
すぐに結論づける
〇〇「気にするほどじゃない」
もう一回自分に言い聞かせる
〇〇「北斗は北斗」
〇〇「恋とかじゃない」
言い切る
でも少しだけ間が空く
〇〇「……」
一瞬だけ何か引っかかるけど
すぐに首振る
〇〇「ないない」
そのままソファに沈み込んで
考えるのやめるみたいに目を閉じる
〇〇、ソファに寝転んだまま
ふと小さく鼻歌を歌い出す
〇〇「〜〜♪」
最初は小さく
でもだんだん普通に歌い始める
〇〇「〜〜〜♪」
さっきまで考えてたことを流すみたいに
適当なメロディで
〇〇「〜〜……んー」
途中で歌詞忘れて笑う
〇〇「なんだっけこれ」
また適当に続ける
〇〇「〜〜♪」
声が部屋にふわっと広がる
テレビの音より少し大きいくらい
〇〇「〜〜〜♪」
さっきまでの悩んでた空気が
少しずつ軽くなっていく
〇〇「……ふふ」
自分でちょっと笑って
また次の曲に変える
〇〇「〜〜〜♪」
完全に一人の時間みたいに
自由に歌いながら
ソファの上でごろごろしてる
水の音が止まってることにも気づかないまま
そのまま気ままに歌い続ける
ーーーーーーーーー
北斗side
風呂から上がってタオルで髪拭きながら出る
北斗「……はぁ」
少しさっぱりした感覚
廊下に出た瞬間、ふと気づく
北斗「……?」
微かに聞こえる声
北斗(なんだ?)
耳すますと
〇〇の声
歌ってる
北斗「……は?」
思わず足止まる
北斗(何してんだよ)
リビングの方から普通に聞こえてくる
しかも結構しっかり
〇〇「〜〜♪」
北斗「……」
少しだけ呆れる
北斗(自由すぎだろ)
でもそのまま歩いていく
ドアの手前で少しだけ立ち止まる
中から楽しそうな声
北斗「……」
一瞬だけそのまま聞く
普通に楽しそうで
北斗(切り替え早ぇなほんと)
小さく思う
でもその声に少しだけ安心する
北斗(まぁ、元気ならいいか)
ドア開ける
〇〇「〜〜♪」
気づいてない
北斗「……おい」
〇〇「〜〜♪」
北斗「聞こえてねぇのかよ」
少しだけ近づく
北斗「おい」
〇〇「……あ」
やっと気づく
〇〇「おかえり」
北斗「ただいま」
〇〇「どうだった?」
北斗「普通」
〇〇「でしょ」
また軽く笑う
北斗は少しだけその場に立ったまま
北斗「……何してんだよ」
〇〇「歌ってた」
北斗「見りゃ分かる」
〇〇「楽しいよ」
北斗「そうかよ」
〇〇「歌う?」
北斗「歌わねぇよ」
〇〇「えー」
北斗「えーじゃねぇ」
〇〇「じゃ、次私ね」
北斗「おう」
〇〇、ソファから立ち上がる
そのまま軽く伸びして
〇〇「歌いすぎた」
北斗「うるさかった」
〇〇「ひど」
でも笑ってる
〇〇「いいじゃん別に」
北斗「まぁな」
〇〇、タオル取りながら
〇〇「ちゃんとあったまった?」
北斗「それさっきも聞いた」
〇〇「大事だから」
北斗「普通だって」
〇〇「ならよし」
そのまま浴室の方に歩いていく
〇〇「すぐ出るね」
北斗「急がなくていい」
〇〇「んー」
適当な返事
ドアの前で振り返る
〇〇「なんかあったら呼んで」
北斗「ねぇよ」
〇〇「一応」
北斗「はいはい」
〇〇、くすっと笑って
そのまま浴室へ入っていく
ドアが閉まる
少しして水の音がまた聞こえ始める
北斗はソファに座ったまま
さっきまで〇〇がいた場所を見る
北斗「……」
ほんの少しだけ残る空気
でもすぐに視線外して
北斗「風呂入るだけで静かになるな」
小さく呟いて
また一人の時間に戻る
北斗のスマホが鳴る
北斗「……誰だよ」
画面見る
北斗「風磨か」
少しだけ眉ひそめて出る
北斗「もしもし」
風磨『もしもーし』
北斗「なんだよ」
風磨『今大丈夫?』
北斗「まぁ」
風磨『〇〇いる?』
北斗「風呂」
風磨『あータイミング悪』
北斗「で、何」
風磨『ちょっとさ』
少しトーン落ちる
風磨『最近のあれ、聞いてる?』
北斗「……あぁ」
風磨『ちょっと心配でさ』
北斗「まぁな」
風磨『大丈夫そう?』
北斗「普通にしてる」
風磨『ほんとに?』
北斗「さっきまで歌ってた」
風磨『強っ』
北斗「だろ」
風磨『でもさ』
少し間
風磨『一人じゃない方がいいかなって思って』
北斗「……」
風磨『今度さ、そっち行っていい?』
北斗「……は?」
風磨『いや、様子見つつ普通に遊ぶ感じで』
北斗「お前が来ると普通じゃなくなるだろ」
風磨『ひど』
北斗「事実だろ」
風磨『でもさ』
風磨『俺らも気にしてるし』
風磨『〇〇のこと』
北斗「……」
少しだけ黙る
風磨『ダメ?』
北斗「……別にいいけど」
風磨『まじ?』
北斗「ただ」
風磨『ん?』
北斗「大人数で来んな」
風磨『バレた?』
北斗「絶対連れてくるだろ」
風磨『いやちょっとだけ』
北斗「ちょっとじゃねぇだろ」
風磨『まぁ……』
北斗「やめろ」
風磨『分かったって』
風磨『俺だけにする』
北斗「ほんとかよ」
風磨『多分』
北斗「信用ねぇ」
風磨『でもさ』
風磨『ありがとな』
北斗「何が」
風磨『そばにいてくれてること』
北斗「……別に」
風磨『頼むわ』
北斗「分かってる」
短く返す
風磨『じゃまた連絡する』
北斗「おう」
通話切れる
北斗「……」
スマホ見たまま少し黙る
風呂場から水の音が聞こえる
北斗「……心配しすぎだろ」
小さく呟く
でも否定しきれないのも分かってる
北斗「……」
少しだけ息吐いて
またソファに体預ける
通話が切れたあとも
スマホをそのまま手に持ったまま動かない
北斗「……」
風磨の言葉が少し残る
“頼むわ”
北斗(頼まれるまでもねぇだろ)
小さく思う
もうずっとそばにいるし
今も同じ空間にいる
風呂場から水の音
北斗「……」
視線だけそっちに向く
さっきまで隣にいたのに
今はドア一枚向こう
北斗(ほんと分かりやすいよな)
一人になると、余計に考える
風磨が心配するのも分かる
〇〇は普通にしてるけど
全部大丈夫ってわけじゃないのも分かる
北斗「……」
頭の中で、さっきの会話もよぎる
“ちゃんと考える”
北斗(考えた先に俺はいねぇだろ)
苦く思う
分かってること
でもそれでも
北斗(それでもいいって思ってる時点で)
もうどうしようもない
北斗「……めんどくせぇ」
ソファに深く沈む
〇〇が戻ってきたら
また普通に話すんだろうなって思う
何もなかったみたいに
北斗(それでいい)
それが一番楽で
一番壊れない
北斗「……」
でもほんの少しだけ
北斗(風磨来たら、また変わるかもな)
そう思ってしまう
賑やかになるのは分かってる
でもその中で
また距離も変わるかもしれない
北斗「……別にいいけど」
誰に言うでもなく呟く
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