-現在-
夜の街を、
urと二人で並んで歩いていた。
カフェを出てしまえば、余計に涙なんて見せられないと思っていたのに。
駅へ向かう一本道を歩くうちに、
抑え込んでいたものがあふれてきて。
また頬を濡らしてしまった。
街灯がオレンジ色の光を落とす。
人通りは少なく、私たちの影だけが長く地面に伸びている。
et「 … ご め ん 。外 な の に 。
無理やり笑って、袖で涙を拭う。
周りに人はほとんどいないのに、恥ずかしさと情けなさでいっぱいだった。
urは隣で歩調を崩さずにいた。
ただ、ちらりと私を見て小さく笑う。
ur「 ま た 泣 い て る 。
et「 … だ っ て 。
ur「 い い よ 。俺 の 前 な ら 。
その一言に、胸の奥がじんと熱くなった。
許されていることが、こんなに安心するなんて。
しばらく二人は黙って歩いた。
靴音だけが規則正しく響く。
電車の音が遠くにかすかに聞こえ、夜の静けさを余計に際立たせていた。
泣きながら歩くなんて格好悪い。
それでも止められない。
忘れたくても忘れられない。
ya君のことが。
そんなとき、ふいにurの声が夜を切り裂いた。
ur「 … 俺 さ 。
何気なく落とされた一言だった。
けれど、妙に耳に残る響きで、私は顔を上げた。
彼の表情は街灯に照らされ、どこか影を帯びて見えた。
ur「 俺 、e t さ ん の こ と …
ur「 好 き だ っ た ん だ よ 、笑
et「 … え ?
立ち止まりそうになった。
頭が追いつかない。心臓だけが大きな音を立てていた。
ur「 ず っ と 。 y a 君 と 付 き 合 っ て た 頃 も ね
et「 … ぇ !?
信じられない気持ちで顔を凝視してしまう。
けれど、冗談で済ませられる雰囲気ではなかった。
ur「 何 回 も … 好 き っ て 言 え る チ ャ ン ス が あ っ た ん だ け ど さ 。
ur「 俺 に は 無 理 だ っ た わ 。
吐き出すようにそう言って、彼は小さく笑った。
その笑みの奥に、どれだけの想いを閉じ込めてきたんだろう。
et「 … な ん か 、ご め ん 。
私の口から出たのは、それだけだった。
本当はもっと言いたいことがあったのに。
ur「 う う ん 。
ur「 e t さ ん の せ い じ ゃ な い よ 、笑
即座に返ってきた言葉。
その優しさが余計に苦しかった。
彼は笑っていたけれど、
声の奥底に微かな震えが混じっているのを、私は気づいてしまった。
ur「 で も ね 。
ur「 俺 も e t さ ん と 一 緒 で 、忘 れ ら れ な い ん だ よ ね 。
et「 … 。
ur「 だ っ て 、
ur「 そ れ ほ ど 好 き だ っ た ん だ も ん 、笑
夜風が一瞬強く吹き、彼の髪を揺らした。
冗談めかした笑い声が風に溶けて消えていく。
私は胸が痛くてたまらなかった。
忘れられないのは、私も同じだから。
et「 … あ り が と う 。ず っ と そ ば に い て く れ て 。
言葉にした瞬間、視界がにじんだ。
ur「 … う ん 。
短い返事。
それだけで十分伝わった気がした。
駅前に近づくと、街の喧騒が少しずつ耳に届き始めた。
人々の話し声、改札を抜ける音。
現実に引き戻されるようで、名残惜しさが胸を締めつける。
ur「 じ ゃ あ 、俺 こ っ ち だ か ら 。
et「 う ん 。
本当は、まだ一緒に歩きたかった。
だけど、それ以上踏み込めば、もう戻れなくなる気がして。
ur「 ま た な ん か あ っ た ら 言 っ て ね 。
et「 … あ り が と 。
それだけ交わして、私たちはそれぞれの道へと歩き出した。
電車を降りた、その帰り道。
人混みの中、前を歩くひときわ懐かしい背中に、目を奪われた。
et「 … ぅ そ 。
ya君。
すれ違う瞬間、彼も私に気づいた。
短く視線が絡み、時間が止まったように感じる。
声をかけたい。
名前を呼びたい。
けれど、唇は動かなかった。
彼はもう、過去の恋人。
別の人と未来を歩んでいる人。
私の手の届かない場所にいる人。
それでも、まだ心は彼に縛られている。
背中がどんどん遠ざかっていく。
もう二度と交わらない道。
私は立ち止まり、思わず振り返った。
彼も同じように振り返っていた。
et「 … y a く ん 。
その一言が、白い息に包まれて、
冬の風に消えた。
涙が零れそうになるのを必死で堪え、また前へと振り向いた。
街の灯りが滲んで見えて、遠くで電車のベルが鳴った。
そして私は、また歩き出した。
夜の街の中を、一人で。
コメント
1件
ぇッ…ガチで好みのお話です!!これからも頑張ってください!