-ur side-
駅でetさんと別れてから、自分のアパートに戻った。
玄関のドアを閉めた瞬間、
外のざわめきが一気に遮断され、静けさが押し寄せてきた。
靴を脱ぎ、リビングの床に腰を下ろす。
さっきの会話が何度も頭の中でリピートされて、鼓動の音がうるさいくらい響いていた。
ur「 … 言 っ ち ゃ っ た な 、俺 。
etさんに「好きだった」と。
冗談めかして笑ったけど、俺の中では冗談なんかじゃなかった。
ずっと隠していた気持ちが、抑えきれずにあふれ出してしまった。
水を飲もうと立ち上がり、キッチンへ行く。
コップに水を注ぐ音がやけに大きく感じる。
冷たい水をひと口含むと、ふいに高校の頃の記憶が甦った。
あの頃、
放課後の教室に残って、二人でよく宿題をしていた。
etさんはシャーペンを回しながら、
「ねぇ、これどうやるの?」って俺に顔を近づけてきた。
教科書の上に長い髪が垂れて、いい匂いがふわっとした。
そのたびに、平然を装って答えていたけど、
内心はドキドキして仕方がなかった。
et「 u r っ て さ 、頼 り に な る よ ね ぇ 。
不意に言われた一言に、俺は何も返せなかった。
ただ顔を伏せて誤魔化すしかなかった。
本当は、本気で勘違いしそうだろって思っていたのに。
コップを置き、テーブルに突っ伏す。
今なら笑い飛ばせるような記憶なのに、どうしてこんなにも胸が痛いんだろう。
さらに、もう一つ鮮明に覚えている場面がある。
ya君とetさんが付き合う前のことだ。
教室の窓際で、etさんはrnと笑いながら話していた。
俺は廊下からその姿を眺めていただけ。
その後、帰り道に二人きりになったとき、etさんがぽつりと呟いた。
et「 ね ぇ u r 。
et「 も し さ 、私 が 誰 か に 告 白 さ れ た ら … ど う 思 う ?
胸が大きく波打った。
けど、俺は平気な顔をして「そりゃ、よかったじゃん」なんて言った。
そのときもう、etさんが誰を見ているのか、なんとなくわかっていたから。
だからこそ、俺の気持ちは言えなかった。
etさんが選ぶのは俺じゃない__そんな予感が、ずっとしていた。
ur「 … バ カ だ よ な 、俺 。
ベッドに倒れ込んで、天井を見上げる。
高校時代からずっと、チャンスは何度もあったのに、
俺は一度も真正面から伝えられなかった。
今日みたいに、
「 好 き だ っ た
と過去形でしか言えないまま、大人になってしまった。
でも、etさんも泣きながら
et「 … あ り が と う 。ず っ と そ ば に い て く れ て 。
って言ってくれた。
それだけで、少しだけ報われた気がする。
etさんにとって俺は「特別な人」ではなかったかもしれない。
けれど「隣にいることを許された人」ではあったんだ。
ur「 忘 れ ら れ な い よ な … 俺 も 。
呟く声が夜に溶けていく。
yaと過ごしたetさんの笑顔も、俺の前で泣いた顔も、全部ひっくるめて。
それでも俺は、etさんを好きでいられたことを後悔しない。
目を閉じると、最後に見たetさんの横顔が浮かんだ。
そして静かな部屋で、
俺の初恋はまだ終わらないまま息をしていた。
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