初めまして人類と申します。
注意
・初心者クオリティ
・少量のカップリング表現有り
昼のチャイムが鳴ると、教室は一気に賑やかになった。
机を寄せ合う音、笑い声、ビニール袋を開ける音。
昼休みの喧騒の中で、僕は静かに弁当箱のふたを開ける。
母親が作ってくれた、いつも通りの弁当。
卵焼き、ウインナー、冷めたご飯。
質素だけれど、落ち着く味だ。
──それでも、誰かと話せたらいいのに。
そんなことを思ってしまう自分を嫌になる。
「ねぇ、また一人で食べてんの?」
背後から、モブ子の声。
彼女は友達と笑いながら、日本の机の角を指でとんとんと叩いた。
冗談のようでいて、ほんの少しの悪意を含んだ声。
その軽さが、かえって胸に刺さる。
「……はい。まあ、その方が静かなので」
努めて穏やかに答えたが、声がわずかに震えた。
女子たちは顔を見合わせて笑い、すぐ別の話題に移っていく。
笑い声が遠ざかると同時に、彼の心も冷えていくようだった。
──誰も、僕に興味なんてない。
そう思い込もうとしても、胸の奥が少し痛んだ。
「日本~! 弁当、それ美味そうじゃん!」
突然、明るい声が響いた。
顔を上げると、そこにいたのはアメリカだった。
陽光みたいな笑顔で、教室の真ん中からこちらに歩いてくる。
周囲の空気が、彼の登場で一瞬ふわっと明るくなる。
「え? あ、いえ……普通の弁当ですけど」
「普通が一番うまいんだって! なあ、ひと口ちょうだい?」
アメリカは笑いながら、日本の机の横に腰をかける。
返事を待たず、箸を伸ばしてウインナーをつまんだ。
僕が慌てて止めるより早く、アメリカはそれを口に放り込む。
「うまっ! 日本んちの味、優しい感じするな〜」
「……勝手に食べたら、困るんですが」
僕が眉を寄せて言うと、彼はあっさり両手を合わせた。
「ごめんごめん!」と笑うその声は、まるで太陽の下みたいに軽い。
その場の空気まで少し和らぐ。
だがモブ子の視線だけは冷たく、日本の方へ向けられていた。
「そういえばさ、文化祭、もうすぐだよな」
「はい……たぶん、そうですね」
「日本、出し物決めた?」
「いえ、まだ何も……」
「じゃあ、俺と組もうぜ!」
あっけらかんとした口調で言うBに、Aは思わず目を瞬かせた。
「え? 僕と、ですか?」
「そう! 日本となら絶対楽しいって!」
アメリカは笑って、僕の肩を軽く叩いた。
あまりに自然な仕草に、拒否する言葉が出てこなかった。
僕は小さく息を吸って、頷く。
「……じゃあ、その……お願いします」
「よっしゃ、決まり! 楽しみだな!」
アメリカの笑顔は、見ているだけで胸が温かくなる。
でも──ほんの一瞬、日本は気づいてしまった。
その瞳の奥に、笑っていない影があることに。
まるで“離すつもりはない”とでも言いたげな、静かな光。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
アメリカは「またな!」と軽く手を振って、自分の席へ戻っていく。
その背中を見送りながら、日本は胸の奥に小さなざわめきを抱いた。
──あの人は、どうしてあんなに僕に優しいんだろう。
理由がわからないまま、午後の授業が始まった。
以上になります。
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