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気がつくと、車は止まっていた。
僕は眠っていたみたいだ。
後ろにいる彼は、目を瞑って固まっている。
さとみ「ついたぞ…って、」
さとみ「起きてたのかよ…」
るぅと「すみません、寝ちゃって」
さとみ「別にッ…、ダメとは言ってねぇし、」
るぅと「そうでしたね、笑」
やっぱり、君は不器用だ。
さとみ「っしゃ、いくか、」
さとみ「こいつのこと俺背負うからさ」
さとみ「お前に荷物頼んでいい?」
るぅと「えぇ、もちろん」
空気がこわばる。
まるで、さっきいた場所とは違う異空間のようだ。
車を出て目の前に広がる世界は、
確かに僕がよく見た世界だった。
でも、どこか違くて。
まるで、彼やさとみ君のようだ。。
さとみ「そこ右回って?」
少し後ろから、守るように居てくれるさとみ君。
まるで、本物のようだった。
いつも、気にしてるのかわからないが、
なんとなく車道側を歩いてくるそんな彼のようだった。
さとみ「そこのドア開いて」
さとみ「ここが、俺らの目的地だ。」
さとみ君の言う通りに進んだ道。
そして、この場所は病院だ。
ごく普通の、人間の病院。
別に、機械科のようなところは存在しないし、
同じやつな風貌をしている人はいない。
るぅと「あの、ここ病院ですけど…?」
さとみ「おぅ、病院だけど?」
るぅと「え、莉犬機械じゃないんですか?」
さとみ「あ、まぁそうなんだけどさ」
さとみ「まぁ、着いてこいって」
さとみ「話はそれからだ」
るぅと「ちょ、待ってくださいよ」
るぅと「僕は真剣ですよ?」
るぅと「どうしてこんなとこ来たんですか?」
頭の中はハテナでいっぱいだ。
あ、。
頭の中でマッチしたものがあった。
以前彼は、本物の彼に 会いたいと僕に言った。
そして、今日はその予定日だ。
でも、莉犬に体の変化が起きて、どうしようもなく行けなくなった。
じゃあ、もしかして…。
るぅと「あの、まさかですけど」
るぅと「本物のさとみ君に会うんですか?」
ここは、ころちゃんが連絡してくれたさとみ君が入院している病院だ。
人がたくさんいる訳でもないし、少ない訳でもない、そこら辺にある普通の病院だ。
だから別に機械を持ってく場所じゃないし、
診察してもらうところでもない、
じゃあ、彼がここに来た理由。
それは、一つしかいない。
本物のさとみ君に会いたかっただけなのだ。
散々僕を、悲しませて、挙げ句の果てにこのザマだなんてなつなんだろう。
僕の頭には血が上るように感じた。
さとみ「まぁ、そんな感じ」
惚けたって無駄なのに…。
気づけば自然と僕の足は止まっていて、
もう目の前に彼はいなかった。
るぅと「あれ、僕迷った、?」
そんなことあるわけがない。
だって、だって、ここは僕もよく来る病院だ。
別にリニューアルしたという話も聞いたことがないし、改装した訳でもない。
じゃあ、ここはどこ?
周りにはさっきまでいた患者さんは誰1人としていない。
慌ただしく歩いている、看護師や医師もいない。
まるで空っぽな病院だ。
そんな中、後ろから声が聞こえた。
さとみ「はぁ、ちゃんと着いてこいって」
さとみ「ほら、いくぞ?」
彼は、僕の手をぎゅっと掴んで、
少し早足で歩いていく。
まるで、何かから逃げていくように。
るぅと「あの…、」
るぅと「さっきはありがとうございました!」
さとみ「別に、」
彼は、今はそんなことをしている場合じゃないとでも言うように僕の言葉を軽くあしらう。
彼の靴のきゅっという、音と同時に彼は動きを止める。
あれ、そういえば莉犬は?
先程まで、彼の背中にいた莉犬。
その姿は跡形もなく、消えている。
るぅと「あの、さとみ君?」
さとみ「ここ入るぞ」
そこは、本物のさとみ君がいる病室だ。
るぅと「ちょ、待ってくださいよ」
るぅと「莉犬はどうしたんですか?」
るぅと「さっきまでずっと一緒に…」
さとみ「中いるの」
さとみ「先相手からお前探しに行ったから」
そう、ぶっきらぼうに言う彼は
僕を無視してドアを開けた。
病室には静かに眠るさとみ君と、
その相方であるころちゃん。
そして、なー君とジェル君がいた。
2人を見るのは久しぶりだ。
るぅと「みんな…!!」
ななもり「るぅちゃん、待ってたよ」
ジェル「久しぶりやな?」
ジェル「元気にしとった?」
ななもり「えと、後ろにいるの誰?」
るぅと「えっと、その…」
さとみ「もういいよ、るぅと」
そう言って彼は僕の前に立つ。
さとみ「ころんも、大丈夫」
ころん「うん、」
さとみ「俺はさとみだ」
さとみ「お前たちもよく知っているさとみ」
ここまできて、まだ彼は嘘を着くのだろうか。
さとみ「るぅとには嘘ついた」
さとみ「ほんと、ごめん、」
るぅと「どう言う、?」
頭の中は混乱でぐちゃぐちゃしてる。
これが本物のさとみ君?
じゃあ、目の前で眠る彼は誰?
あなたに感じた違和感はなんだったの?
もしかして、あれも全部演技だったの?
さとみ「俺、本物だよるぅと」
さとみ「なーくんも、ジェルも、」
さとみ「騙してごめん、」
ジェル「え、じゃあ、こいつは、?」
それは真っ先に僕も聞きたかった質問だ。
さとみ「そいつはダミー」
さとみ「ただの、AIさ」
さとみ「見た目しかやってないから、」
さとみ「性格は似てねぇけど」
るぅと「じゃ、じゃあ、あの違和感は?」
さとみ「全部俺が仕向けた罠だよ」
さとみ「まさかあんなに簡単に」
さとみ「いくとは思ってなかったけどな」
少し、微笑んで言う君はやっぱり本物の笑顔だった。
るぅと「なんだ…早く言ってくれれば」
るぅと「よかったのに…」
さとみ「それもそうなんだけどな」
さとみ「ことを進めるにはこれが」
さとみ「1番良かったのさ」
あー、なんだ、良かった。
僕の中で固まっていた不安の気持ちが崩れるように溶けていった。
さとみ「そこにいる莉犬もダミー」
さとみ「本物はこれ」
さとみ君が指さしたのは、ダミーのさとみ君だ。
るぅと「いや、それはAIじゃ、?」
さとみ「わかりにくいよなぁ、笑」
さとみ「なんつったらいいかな、笑」
ころん「まぁ、簡単に言ったら」
ころん「これ破れば莉犬君出てくるのさ笑」
るぅと「は、はい?」
ころん「あぁもう!笑」
ころん「割って良いこれ!?笑」
さとみ「はいはいご自由に〜」
るぅと「え、ちょ、待ってくださいよ」
るぅと「なんで、この中なんですか?」
さとみ「あぁ、、まぁ色々あって」
さとみ「こいつ起きないんよ」
その一言がひどく衝撃的で、怖かった。
ころん「るぅと君、あける?」
ころん「相方…だしさ?」
それはもちろん、昔の話ではあるけれど、今の僕にはまるで最近のように感じられた。
さとみ「ここ、押してみて?」
言われた通りそのボタンを押せば、
そこには顔色の悪い莉犬が横たわっている。
るぅと「莉犬ッ…!!!」
ジェル「莉犬は、どうなってもうたん?」
ジェル「莉犬は生きとるんやろ、?」
気まずそうに彼は口を開いた。
さとみ「生きてるよ」
さとみ「でも、なんて言うか…」
さとみ「起きないんだよ、莉犬」
さとみ「言わなかったのはごめん」
さとみ「どうしても…だっから」
ななもり「ゆっくりで良いからさ、」
ななもり「教えてくれないかな」
ななもり「さとみ君の知ってること」
さとみ「わかった」
さとみ「話長くなるから、椅子座りな?」
3人「わかった」
さとみver
俺があいつの話を聞いたのは一年前だ。
世界がAIに埋めつくされて、ちょうど人間が慣れてきた頃合いだった。
なんとなく、莉犬の家に行った時。
彼は、とても明るくて笑顔だった。
話を聞けば、毎日がまるでパーティーのような話だった。
もちろん、昔のことを思い出したりして寂しくなる時もあったけれど。
いつも通りのようにくる明日が、毎日楽しみだったそうだ。
莉犬「俺、AI買うことにした!」
そう言う彼の目は、キラキラしていて、
眩しくて目を細めてしまうほどだった。
最初はなんとなく、そんなの冗談だろうと思って受け流していたけれど話を聞けば聞くほど彼が本気でそう思っていることがわかった。
さとみ「そんなの辞めとけって」
さとみ「1人でなんも出来なくなるぞ?」
莉犬「そんなの最初からだし笑」
そういう彼は、なんとなく寂しそうで、
それ以上はしつこく言わないようにしていた。
彼は、昔とても辛い日々を過ごしていた。
それは俺が思う何倍もきっと、辛い物で。
考えるだけで、震えてしまう物だ。
きっと、そんな中を生きて、今ここにいる君は…。
きっと本当は、未来なんて望んでなくて。
それでも生きてきた君は、もう結構頑張ってきてたんだよね。
そう思えば、彼のいうことは一理あるような気がして、俺もなんとなくで賛成してしまった。
今となっては、その行動は俺の人生いちばんの悔やみになった。
自分に似たAIを作るためには、
自分のことをよく見せなくてはならない。
それは、脳の中本体もだ。
脳に溜まったデータを元に、彼の性格、行動を予測して似させる。
それをするには、脳に大きなダメージが覆われる。
今まで嫌で、忘れたくて忘れた記憶も。、
トラウマになったあの日々も。
辛いことも全部、思い出さなければならない。
そして、最悪の場合人間はそのショックに耐えられずに目を覚ますことができなくなる。
それが今の莉犬だ。
莉犬の記憶は、このAIに伝わっている。
結果はどうであれ、本来の目的はもう果たされたのだ。
そして、事前に答えていたアンケートと同じように。
莉犬が目を覚ますことができなくなったその時、 そのAIを代わりに送った。
だから、誰にも気づかれなかったし違和感も持たれなかった。
そして、俺の目的はそのAIをもう一度見つけだし、これ以上莉犬としての人生を歩ませないことだった。
俺は目的を果たした。
でも、莉犬は今も目を覚さないままだった。
ななもり「そんなッ…」
ジェル「いつかは目を覚ますんやろ?」
さとみ「わからない」
俺は医者でもないし、専門家でもない。
だから断定して、言える方は何一つとして存在しない。
さとみ「莉犬を止められなくてすみません」
俺は深くお辞儀をした。
るぅと「顔をあげてください」
るぅと「莉犬、そんな顔見たくないですよ」
るぅと「笑ってあげてください」
そういう彼は、優しい目をしていた。
るぅと「莉犬?」
るぅと「ずっと気づけなくてごめんね」
るぅと「相方失格だね」
るぅと「でもね、会えて嬉しいよ莉犬」
るぅと「莉犬?また、話したい」
るぅと「またゲームしようよ」
るぅと「莉犬…莉犬ッ…ポロポロ」
彼の目からは涙が溢れて、
まるで何かの映画のワンシーンだ。