すると、その時会議室のドアをノックする音。
「すいません。お待たせしました」
そしてようやく14時を過ぎてから透子が会議室へと到着した。
「あぁ。ごめん。忙しいのに」
「こっちこそごめん。遅れちゃって」
相変らず忙しそうな透子。
仕事モードで平然としている透子を見て、そんな透子の姿と比べ、オレは栞に今までの情けないところを指摘されてた最中で。
そんな状態な上に、透子への気持ちをまた再確認して奮い立たせていた自分に気付いて、ちょっと照れくさくなって、気持ちを切り替える。
「こちら今度のプロジェクトで一緒になる新しいブランドのアクセサリーのデザイナーさん」
そして向かい合わせの席に座った透子に栞を紹介する。
「はじめまして。今回からお世話になりますREIジュエリーのデザイナーの今里 栞です」
「はじめまして。このプロジェクトで早瀬さんと一緒にリーダーを務めます望月透子です」
二人が名刺を交換して改めて挨拶。
「実は私、早瀬さんといとこで」
「この前見たっていう女性この人じゃない?」
栞に言われて、またその時のことを思い出させることはちょっと複雑だけど、とりあえず透子に確認する。
「なんか誤解させちゃったみたいで、すいません」
すると栞が早々に声をかけてくれる。
「いえいえ! 私が勝手に勘違いしちゃったみたいなので。・・・って、え?」
「あっ、すいません。お二人の関係、樹くんから聞いてて気になっちゃって」
だよな。
透子は仕事モードだし、そこまで気にしてなかったかもしれないのに・・・。
「あっ、そうなんですね。ホントに仲いいんだ」
だけど、透子のふとした言い方が気になって。
なんか少し寂しそうな切なそうな言い方に聞こえて。
やっぱりこういうのも透子は気になるってことなのだろうか。
「母親側のいとこで。私が樹くんのお母様に昔からお世話になってて」
「昔から母親の関係で顔合わすこと多くてさ。それで今回もちょっとした関係で次のプロジェクトでのブランドのデザイナーやってもらうことなって」
あの時は何を言っても信じてもらえなかった。
いとこだということも、ただの仕事仲間だということも。
オレにとっては、ただのいとこで、それ以下でもそれ以上でもなくて。
だけど唯一オレになんでも言ってくれる存在だから。
正直女心がわかってないオレに厳しく意見言ってアドバイスくれる栞の存在には感謝していて。
だから、そういう存在だってことも伝えたいし、ホントにそんな相手だからこそ、透子が不安になることなんてないって、ちゃんと伝えたい。
なのに。
マジかよ。
このタイミングで携帯の着信。
シカトしようかと思ったけど、急ぎの仕事で返事を待っていた取引先の相手で。
さすがに無視出来ない。
「あっ・・ごめん。ちょっと電話入った」
オレは二人にそう伝えて、一旦会議室の外へ出る。
「はい。早瀬です」
そして電話を受けてからは、案外長々と用件が終わらず。
だけど、急ぎの用事で切るわけにいかず。
会議室の二人の様子が気になりつつも、しばらくその電話の対応をする。
そしてようやく電話が終わり、会議室へと戻る。
「あっ、ごめん。電話長引いて」
せっかく透子に説明しようと思ったのに、電話がすっかり長引いた。
「で。どこまで話したっけ?」
電話の内容に気を取られて、どこまで説明したかわからなくなって確認する。
「あぁ。大丈夫。ちゃんとこっちで挨拶済ませたから」
すると透子がそう伝えてくれた。
「あっ、そうなんだ?悪い」
「透子さんのしてるネックレス私がデザインしたってとこまで伝えた」
「あっ。今日してきてくれたんだ」
栞から言われて、透子の首元を見るとオレのプレゼントしたネックレス。
やばっ。
嬉しすぎるんだけど。
さりげなくちゃんと今日してきてくれるとか、何そのアピール。
このネックレスを会社にしてきてくれたことで、オレのモノだって思えてニヤけそうになる。
「いいじゃん。やっぱ似合ってる」
透子の隣に座りそのネックレスを覗き込み、嬉しい気持ちのまま微笑みながら透子に伝える。
「樹くんあれだけこだわって作っただけあるね。ホント透子さんの魅力さらに引き出してて素敵」
「ありがとう・・」
栞の言葉に、透子も嬉しそうにはにかむ。
ホントこだわって作ってもらってよかった。
オレの想いを知ってるからこそ作ってもらえたこれだけのクオリティーで。
その想いが詰まったネックレスをつけて、幸せそうにしてくれてる透子が何よりも嬉しい。
そんな姿ずっと見つめていたい。
って・・オレ仕事中にこんなまったりしてどうする。
栞もいるのにずっとノロケてばっかいられない。
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