テラーノベル
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【アラスターside】
〇〇の部屋の中をぐるりと見渡すと、ふとテーブルの上に何かが置いてあることに気がついた。
アラスター「・・・・・・・・・」
手に取ったそれは、あの日彼女を此処へ運んできたときに弾いたあの楽譜だった。
あの時よりも枚数が増え、いつの間にか完成まで作り上げられていた。
〇〇『“この曲、アラスターにすごく合ってる”』
アラスター『“・・・なるほど、今回の曲も悪くない”』
あの日の会話が、今でも鮮明に蘇る。
パラパラとそれをめくりながら、紡がれた旋律を眼でなぞった。
アラスター『“やはり貴女には、そうやって笑っている方がよくお似合いですよ”』
あの日彼女に掛けたあの言葉は、心の底からの本心だった。
曲の最後まで目を通すと、何かで濡れたのか楽譜の隅が少しヨレている。
きっと、彼女はこれを書きながらまた涙を流したのだろう。
お人好しすぎる、あの優しすぎる心を痛めながら。
それでもまだ、自分だけは傷つこうとしている。
アラスター「・・・・・・やれやれ」
短く吐いた溜息は、部屋の静寂に消えていく。
アラスター「・・・弾き手がいなくては、完成とは言えませんね」
私は閉じた楽譜をテーブルの上へ戻し、足早に出口に向かって踵を返した。
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