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「本当に、すっくん?」
「うん、この歳でそう呼ばれるのは恥ずいけど。」
匡は書庫の壁に寄りかかる。
「私ほんの少しだけ期待してた。
あの手紙をくれたのがすっくんだといいなって。」
なっちゃんは書庫に並んだ本を眺めながら言う。
「ごめん。俺、この本のことすっかり忘れてて、、」
「そっか。そうだよね。」
なっちゃんは少し悲しそうな顔で笑う。
「その、、捜し物っていうのは、、?」
「いいんだ。別に大したことないから。」
なっちゃんは匡に背を向ける。
「あの、俺思い出したことがあって。」
「なに?」
なっちゃんはまだ背を向けたままだ。
「あの頃、なっちゃんの作る話を聞くのが毎日楽しかった。
だから、その、、約束を破ってごめん!」
匡がそう言うと、なっちゃんが驚いた顔で振り向いた。
「覚えてくれてたんだ、、」
なっちゃんは少しうつむいて言う。
「なっちゃんの名前を見て思い出した。」
「そっか。」
なっちゃんの目は少し潤んでるように見える。
「ねえ、この本の結末覚えてる?」
「えっと、、最後は確か、、、
成長した少年は、夢の中で出会った少女と現実の世界で再会する、、?」
「そう。なんか、、今みたいだね。」
なっちゃんが昔と変わらない笑顔で笑う。
「そうだね。」
匡も笑う。
「実はあの約束、まだ破られてないんだ。」
「え?」
匡は驚いて聞き返す。
「私が初めて作った話、まだ誰にも見せたことない。」
「そうだったんだ。」
「もしよかったら、初めての読者になってくれませんか?」
なっちゃんがまっすぐこっちを見て紙の束を差し出す。
匡もなっちゃんを見つめて答えた。
「もちろん!」
受け取った紙の1番上にはこう書いてあった。
“夏休みの初恋”