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数時間後───···
夕暮れの帰り道、咲幸は寄っていたスーパーから出てきた。
「これで全部かな?」
咲幸は小さいメモを見ながら呟いた。
全部を揃った事を確認し終わった咲幸は帰る場所に向かって歩いた。
河原の土手を歩いている時、手を繋ぎながら歩いている親子とすれ違った。咲幸は思わずその親子の方に振り返った。
「今日は何が食べたい?」
「えーっとね、カレーライス!」
「うふふっ。じゃあ、今日はカレーライスにしましょう。」
「ほんとー?やったー!」
親子の楽しそうな会話と笑い声。咲幸はただただ親子の背中を見つめるだけだった。
「あっ······早く帰らなきゃ。」
咲幸はハッと我に返り、帰り道を歩き始めた。
暫く歩いていくと見えてきた―大きな建物が。その建物の表札には桜ヶ丘(さくらがおか)養護施設と書いてあった。
咲幸は施設に向かって新緑の道を通り過ぎるように歩き、門を閉じた。
「あー!咲幸おねえちゃんだ!」
「おかえりなさーい。」
門が開け閉じの音に気づいた子供たちは元気よく咲幸に向かって走り、抱きついた。
「ただいま。」
咲幸は優しく言いながら、子供たちの頭を撫でた。
「さっちゃん、お帰りなさい。ごめんなさいね。あなたに買い物を頼んじゃって。」
「いえ、大丈夫ですよ。“先生”。」
子供たちに遅れて咲幸に向かって歩いてくる “先生”と呼ばれている女性、桔流 稔莉(きりゅう みのり)に咲幸は笑顔で言った。
「ねぇ、僕もうお腹すいちゃったー!」
「僕もー!」
「私もー!」
男の子の言葉に続き、他の子たちも少し不満そうに言った。それを聞いた稔莉は笑いながら言った。
「はいはい、もうすぐ夜ご飯が出来るから待っててね。」
「「「「はーい!」」」」
子供たちの元気が良い返事に咲幸は微笑んだ。
「さっ、もう暗くなるから中に入りましょう。」
「「「「はーい!」」」」
稔莉の言葉に子供たちは返事をしながら、施設の中に入っていく。
(私にとってここは我が家であって、みんなの帰るべき場所。私たちの唯一の居場所······。)
咲幸はそう思いながら中に入り、ドアを閉めた。