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王族でありながら相手を立てる腰の低さ。ヴェルクはアメリア国の王子にして最強の商人かもしれない。
「さて、先ほども言いましたが、能力が弱まったおかげでレイニル様はお城で暮らす事ができます」
今までのレイニルは地上に出ると大雨が止まないせいで地下牢での暮らしを強いられていた。
能力が弱まったのは、やはりシャインの晴れ男の能力と混ざって中和されたせいかもしれない。
「私、お城で暮らしても良いのですか?」
「もちろんです。充分な肩書きを差し上げますよ」
実家に帰る事ができないレイニルにとって、城に住まわせてもらえるのは純粋にありがたい。だが、逆にその待遇の良さが怖い気がした。
それでも少しだけ安心したレイニルは、ようやく紅茶を一口飲んでほっと息を吐いた。
しかし、最初に良い条件を出して安心させるのはヴェルクの交渉術。彼の漆黒の瞳が鋭くレイニルを見据える。
「ですが、極端に雨量が減るのも困るのです。側に置いて調整する必要がありますね」
「調節……?」
レイニルは嫌な予感がしてきた。弱まった能力を調節する方法……それはシャインと同じ方法を言っているのではないかと。
そして質問しなくても予想通りの答えをヴェルク自らが語り出す。
「私があなたと交わる事で、あなたの中の晴れ男の力を薄めます」
レイニルは青ざめて椅子を少し後ろに引いた。この男は正気でそれを言っているのだろうか。それこそ夜伽の強要にしか聞こえない。
しかしヴェルクは冗談を言っているようにも狂気にも見えない。常に冷静で合理的な答えを出している。
それでも感情として、レイニルにはそれを快諾なんてできない。雨量をコントロールする、つまりレイニルは単なる商売道具だった。
「そんなこと、できません……だって私は……」
私は何だと言おうとしたのか……レイニルは自分自身に戸惑う。こんな時でもシャインの名前と顔が脳裏に浮かび上がる。
「あなたはもう人妻ではないでしょう。でもご安心ください。今度は私が正式にレイニル様を娶ります」
「……え!?」
「私はシャイン様と同じ22歳ですし、悪くはないでしょう」
ヴェルクが言っていた、レイニルに与える『肩書き』とは、アメリア国の王太子妃。ヴェルク王子と結婚する事であった。
まさか、ここでも雨女の能力が目的で娶られるなんて……やはり、雨女が持つのは呪いの能力としか思えない。
ヴェルクが突然席を立つと、正面に座るレイニルの横に片膝をついて跪く。黒いスーツで王子らしからぬ装いだが、その高貴な上目遣いに威圧される。
「レイニル様。私と結婚してください」
まさに、これはプロポーズだった。シャインにも正式に求婚されなかったレイニルは、どう答えていいのか分からない。
ヴェルクの瞳を見ると、建前や偽りではないと分かる。これまでの短期間の過程で、いつからヴェルクはレイニルを本気で愛してしまったのか。
自覚はないが、レイニルの持つ『雨女の能力』と『美貌』はヴェルクをも惹きつけていた。これこそが天性の魔性で呪いの能力と言えるかもしれない。
(どうしたらいいの……シャイン……)
なぜかレイニルの心の中にシャインの名が出てきた。確かにヴェルクと結婚して、アメリア国に安定した雨を降らせる事ができれば、国にとっても有意義だろう。
それで、きっと喜ぶ人がたくさんいる。それが理想の存在意義かもしれない。しかしレイニルは自分の心に目を向けてはいかなった。
レイニルが答えずにいると、その戸惑いを読んだヴェルクが微笑んで立ち上がる。
「お返事は急がなくてもいいですよ。時間はありますので、よくお考えください」
心に余裕を与えてくれるのもヴェルクの誘導なのだろう。確かにレイニルはもう、どこへも逃げられない。
本当は無理矢理にでも婚姻を結ぶ事は可能なのに、レイニルに返答と選択の余地を与えるのもヴェルクの余裕だった。
ヴェルクが本気で愛してくれるのなら、シャインへの未練を捨てられるかもしれない。
レイニルは、このままヴェルクと結婚するのが国のためであり、虐げられた雨女の能力を活かす生き方なのかもしれないと思い始めた。
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コメント
1件
うわああ急展開すぎる!!😭💕 ヴェルクのプロポーズ、めっちゃカッコいいけど「雨量調整のための結婚」って言われたレイニルの心境が切なすぎるよ…。しかも「どうしたらいいの…シャイン…」って心の中で名前呼んじゃうとこ、もう胸がギュッてなった😢 ヴェルクも本気っぽいし、本当にどっち選んでも幸せになってほしい〜!次どうなるの気になりすぎる!!🌸