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第4話
ユウは旅を続ける中で、ただ生き延びるだけでは不十分だと悟った。戦乱や病気があちこちで息を潜めている世界では、知恵と判断力が命を左右する。
「まずは状況を見極めることだ…焦れば命を落とす」
心の中で自分に言い聞かせながら、ユウは山道を進む。
ある日、山賊の噂を耳にした。数日前、通りがかった村の商人が襲われたという。
「危ないな…でも、直接戦うのは無理だ。知恵で回避するしかない」
ユウは地図を取り出し、迂回ルートを慎重に確認した。
「ここなら、森を抜けて川沿いを進めば安全だ」
森を進む途中、遠くで馬の蹄の音が響く。山賊かもしれない。ユウは木の影に身を潜め、呼吸を整えた。
「落ち着け…動くな、声も出すな」
息を潜めるユウの耳に、馬の群れの音が通り過ぎる。無事だった。
その夜、焚き火を囲みながら、ユウは独り言のように呟く。
「戦うのではなく、知恵で逃げる…これも立派な生き延び方だ」
また別の日、疫病が流行る村に立ち寄る。病に苦しむ子どもたちを見て、ユウは薬草を取り出し、手当を施す。
「痛くない…大丈夫、すぐ良くなるから」
子どもたちは泣きながらも、わずかに笑顔を見せた。
「生き延びるには知恵も、優しさも必要だ」
ユウはそう心に刻む。商人として、旅人として、安全な道と人々を守る方法を身につけ始めた。
また別の町では、小規模な争いが起きていた。村人同士の喧嘩だ。
「関わらない方がいい…でも、少し助けられるかもしれない」
ユウは慎重に間に入り、言葉で村人を落ち着かせた。
「話し合えば、皆が損をしない方法があるはずだ」
少しずつではあるが、ユウは争いを回避し、人々を助ける術を学んでいった。
丘の上で夜空を見上げながら、ユウは小さく笑う。
「寿命で死にたい…そのためには、慎重に生き延びる。僕は少しずつ、この世界で生きる力を身につけている」
戦乱、病気、盗賊…すべては脅威だが、ユウの知恵は少しずつ世界を切り開き始めた。生き延びるための旅は、まだ始まったばかりだった。