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あー、ビックリしたぁ。ドルワの里に戻ったら妹が出来てるし里にはベビーブームが到来していた。お母さんの研究だと地球の食べ物はアード人の生物としての本能を強く刺激して、その……子孫繁栄を目指してしまう効果があることが判明したみたいだ。
地球との交流はアードの未来を明るくするのに充分な利益がある。もちろんセンチネルの問題はあるけど、これから政府も前向きに考えてくれるんじゃないかな?
取り敢えず、ティル可愛い。眠ってしまった妹を抱っこしつつ家のリビングでのんびり過ごしながら考え事をしていると。
「しばらくは他言無用よ、ティナ。里長から通達が来たから、貴女も言い触らさないようにね」
「分かってるよ、お母さん」
まだ始まったばかりだし、交易の量だって限られてる。皆に行き渡る分なんてとてもじゃないけど確保は出来ていない。今回は急な帰還だったから交易品も無いし。いや、トランクや医療シートを追加で貰えそうだから良いんだけどさ。
下手に公表なんてしたらパニックになるし、独占しようとする人が出てくるかもしれない。充分な数を供給できるようになるまでは黙っておくべきだ。
ただなぁ、人の口に戸は立てられぬって言葉もあるし、いつかは露見するんじゃないかな。
「心配しなくても、その辺りは私達大人に任せなさい」
「ん、分かった。お母さんこそ大丈夫?ティルも小さいし」
つまりお母さんは子育て真っ最中なんだ。色々と支障が出るような気がするけど。
「埃被っていた育児ドロイドが大活躍よ」
「そんなものまであるの!?」
お母さん曰く、育児ドロイドとは子供のお世話を一通り出来るドロイドだ。私が百年ぶりの子供って言うのもあって、使われなくなった育児ドロイドはばっちゃんのお店で埃を被っていたみたいだけど、今回のベビーブームで大活躍だ。幸い人数分プラス予備もあるから育児については問題ないらしい。
「つまり私達親の仕事は教えて導くこと、叱ることよ。おしめとかその他の雑事は任せてるわ」
「便利だなぁ」
「ティナも何れお世話になるんだから、慣れておきなさい」
「あっ、うん」
いやまあ、私が男性と恋が出来るとは思えないけどさ。いや、ワンチャンあるか?
……無いなぁ。少なくとも今のところは恋愛よりやりたいことを優先しよう。その時が来たらまた考えれば良いし、幸いと言うかドルワの里には同年代も居ないしね。お世話になったお兄さんやお姉さんは何人か居るけど、皆結婚してるからセーフ!
よし、恋愛フラグは立たない!
えっ? フェル? ……まあ、うん。黙秘します。
しばらくお母さんと雑談しながら起きたティルと遊んだ。そろそろお父さんが帰る頃かな?
「おねーちゃん、お空にいくの?」
「そうだよ、星の海を冒険するのは楽しいんだ。ティルがもう少し大きくなったら一緒にいこうね」
「うん!」
前世でも独りっ子だったからなぁ。妹がこんなに可愛い存在だなんて知らなかった。兄弟が居たら居たで色々苦労する話は聞くけど、居ないものからすればその苦労も羨ましいんだよね。まあ、無い物ねだりなんだろうけどさ。
ん? お母さんが端末を弄っているけど……表情が険しいな。何かあったのかな?
「ティナ、残念だけど家族団欒は次の機会にお預けよ。ティドルには私から伝えるから、直ぐに宇宙ステーションへ戻りなさい」
「お母さん?」
お母さんに理由を聞く前にブレスレット型の端末が鳴る。アリアだ。
『ティナ、たった今セレスティナ女王陛下より宇宙ステーションの閉鎖が通達されました。これから数日間一切の出入りが禁止されますので、速やかにステーションへ戻ることを推奨します』
「封鎖!?なんで!?」
『理由はステーションで説明します。マスターティリスも軌道エレベーター昇降口とは待ち合わせとなります。急いでください』
「分かった!お母さん、お父さんに宜しく伝えて!ティル、また会いに来るからお留守番お願いね!」
「行ってらっしゃ~い!」
「気を付けなさいね、ティナ」
なにがなんだか分からないけど、アードじゃ女王陛下の決定は何よりも優先されるっ!抱っこしていたティルをお母さんに渡して慌ただしく家を飛び出した。翼を目一杯広げて力一杯羽ばたいて加速。里の転送ポートから軌道エレベーター昇降口へ転移して、現地で待っていたばっちゃんと合流。既にアード軍の人達が集まっていたけど、間一髪間に合ったみたいだ。軌道エレベーターへ乗り込んで、宇宙ステーションへ向かう。その時間で理由を聞かされた。
「リーフ人がフェルを!?」
『そうです。その話を耳にした女王陛下はマスターフェルを護るために宇宙ステーションを封鎖したのです』
「アードに居るより安全だし、閉鎖してしまえばミドリムシも来れないからね」
信じられない!あいつら、まだフェルのことを諦めていなかったの!?
「情報の出所は秘密だよ、ティナちゃん。でも、フェルちゃんが危険なのは間違いないから宇宙ステーションで過ごすよ」
『新たにマスターフィーレが加わったことも露見するでしょう。そうなれば、リーフ人がどの様な手段に出るか予測は出来ません』
「この件を正式に抗議できないの?」
「私個人としてはしたいんだけど、下手すれば内乱になるよ。ミドリムシは科学的に遅れているけど、マナ保有量と魔法学じゃアード人を凌駕しているのを忘れないで」
そうだ、フェルは桁外れのチートだけど魔法にあまり関心がないフィーレだって魔法省に勤めているアード人よりマナ保有量が多い。下手をすれば科学と魔法が激突する内乱になってしまう。だから正式に抗議は出来ないんだ。
リーフ人寄りのアード人だって少なくない。思想は別にしても、アード人とリーフ人の夫婦は珍しくない。善悪関係無く奥さん或いは旦那さんの味方をするのは、感情を持つ生き物として当たり前の事だ。
……私やフェルからすれば堪ったものじゃないけど。
「大丈夫だよ、ティナちゃん」
「ばっちゃん……」
「ミドリムシの好きにはさせないし、楽園も壊したりはしない。時間はかかるけど、任せて☆」
普段はふざけているけど、こんな時ばっちゃんは頼もしい。
どのみち私には実力行使くらいしか浮かばないから、任せるしかないね。
「お願い、ばっちゃん」
「任された☆じゃ、明るいお話をしよう。はいこれ、おこづかい☆」
「え?はぁ!? 一千万クレジットぉ!?」
私の端末に一千万クレジットが入金されたんだけど!?
おこづかいが一千万円って、財閥のお嬢様かな……?