テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
春休みが終わり、三年生になった。
見慣れた教室。
見慣れた顔。
変わらない光景は、どこか安心感をくれる。
――でも、何かがおかしかった。
このクラスは三十二人。
そのはずなのに、机が三十三個ある。
別に変なことじゃない。
転校生が来るのかもしれないし、
先生が片付け忘れただけかもしれない。
普通なら、そう思う。
でも――。
どうしても、目が離せなかった。
机を見ていると、胸の奥がざわつく。
まるで、何か大事なことを忘れているような。
思い出してはいけない何かが、
内側から静かに心を叩いてくる。
不気味だった。
この不気味さを消したくて、
友人や先生に聞いて回った。
けれど――
友人は皆、首をかしげるだけだった。
先生は
「あとで片付けておくよ」
と笑って言った。
そして次の日。
机は、また三十三個に戻っていた。
昨日も。
一昨日も。
その前の日も。
何度聞いても、同じ答え。
そして翌日には、皆きれいに忘れている。
僕だけが、気づいている。
その事実が、
不気味さをさらに膨らませていった。
気づかないふりも考えた。
でも――
それだけは、
絶対にしてはいけない気がした。
たぶん僕は、怖がりながらも
この違和感に惹かれていたんだと思う。
だから、調べることにした。
生徒帳を借りて、ページをめくる。
Aくん。
Bくん。
Cさん。
……。
クラス全員の名前が並んでいる。
そのはずだった。
でも、ページの一番下に、
知らない名前があった。
おそらく名前、なのだろう、
文字のはずなのに読めない。
外国語でもない。
線が絡まり合ったような、
見てはいけない形。
目を離そうとしても、離せない。
見ているうちに、
その文字がゆっくりと歪んだ。
形を変えていく。
少しずつ。
少しずつ。
そして――
僕の名前になった。
後悔したときには、もう遅かった。
ページの余白に、
小さく、びっしりと書かれた誰かの名前。
その中に、
新しく僕の名前が加わっていた。
教室に戻る。
机は三十二個。
ぴったりだった。
ただ、
誰かが、まだそこにいる。
誰も座っていないはずのその席に。
今回もチャッピーに誤字などを修正してもらっています。
アドバイス、フォロー、ハートお願いします
過去作も読んでくれると嬉しいです
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!