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#僕のヒーローアカデミア夢小説
#ファンタジー
「あー·····、え、と」
男の子は一瞬口ごもってから、小さな声で呟いた。
「まさき」
言うのをためらったからどんな変な名前なのかと思いきや、案外普通で拍子抜けした。
「マサキか。なかなか渋くていい名前だな」
最近は子供に奇抜な名前を付ける親も多いと聞くが変に凝っていない方が覚えやすい。
そういえば、自分に敬語は使わないものの、しゃべり方もこれぐらいの歳の子にしては落ち着いている。
「お兄さんは?」
「俺? 俺はユキナリ。行くに成るって書いて行成」
「何やってる人?」
「大学生だよ」
その言葉に、マサキはびっくりしたように目を見開いて、そのあとくすくすと笑った。
「へー、そうなんだ。ネクタイしめてるから働いている人かと思ってた」
そう言われ、自分がスーツを着ている理由を不意に思い出した。
今日はいぜんお世話になった講師の学会発表があったのだ。
出掛けにポストを覗いたら内定先からの手紙が入っていたので鞄に放り込み、帰りに内容を読んでみたらあのザマだ。
就職が決まったことを恩師に伝えると、それはもう喜んでくれた。
あの笑顔も自分は裏切ることになってしまった。
しかも、学会では昔付き合ってくれた女が他の男と仲良くやっている様まで見てしまった。
今日は人生最悪の日だー、そう思っていた。
けれど今は、何故か心がそんなに重くない。
(やっぱ子供と動物の癒しパワーってすげぇな)
あどけないマサキの横顔を窺いながら、彼はそうしみじみと感じ入った。
それから並んで歩き続け、早々にシャッターを下ろしてしまった郵便局の前でマサキは立ち止まった。
「もうすぐそこだから、ここまででいいよ」
ふと見ると、電柱の住所の表示にも「大井戸町」と書いてある。
やっと近くまで来たようだ。
「そっか。今日は大変だったな」
犬をマサキに受け渡す。
「おっと」と言いながら抱え直すと、マサキは勢い良くこちらに向かって頭を下げた。
「あ、あの、ありがとうございました」
さっきまで友達口調だったのに、急に礼儀正しくなる。
そんな変化がおかしくて行成はちょっと笑ってしまった。
「じゃ、またいつかどっかで会おうな」
「うん、またね。本当にありがとう!」
お互いに手を振りながら、ふたりは別の道を歩き出した。
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