テラーノベル
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ナッキは驚愕を浮かべてサニーを見つめ、心中で疑問を整理していく。
――――僕には只の異音にしか聞こえなかったって言うのに…… サニーには、意味を成す言葉に聞こえていたって事ぉ? 若(も)し、若しそうだったとしたら…… さ、サニーだったら、このヤゴ達にも語り掛けられるって事じゃあないかぁ! よ、良しっ! た、試す価値ありなんじゃないのおぉ!
ナッキは言った。
「そうだよっ! さあ、サニー! あいつ等に話し掛けてね! ほらほらぁ、急がないとブル達が死んじゃうよぉ?」
「えっ! ぼ、僕が? お、おっと、あ、アタシがやるのぉっ?」
判りやすく狼狽(ろうばい)しているサニーに掛けるナッキの言葉に迷いは無い。
「そりゃそうだよ! 僕にはギギッとしか聞こえないヤゴ達の声をサニーは意味ある言葉に聞き取れたんだからさっ! やってよ、早くしないと力士たちがヤバイじゃないぃ!」
「そ、そうか、そうなんだね、判ったよ! んでナッキ、何て言えば良いのぉ?」
ナッキは一瞬だけ動きを止めて考えた後、サニーに向かってアドバイスだ。
「ほら、アレだよ! 『こっち見ろや、糞野郎共がぁ』とかさ、『弱虫めっ! ぶっ殺してやんよぉっ!』とか言えば良いんじゃない? やってみなよぉ!」
「く、糞? ぶっ殺すぅ? ええと、ど、どうしよう……」
「?」
ナッキは不思議そうに首を傾げていたが、サニーの戸惑いも無理は無い。
ここまでの発言から類推するに、サニーは良い子、誰かを責める言葉とか言えないタイプの女の子である事は明らかであったからだ。
モジモジとしながら、何を言えばいいのか悩んでいる優しいサニーに、やや無神経なナッキの声が響いた。
「ほらほらサニー! 早く言わないと皆、死んじゃうってばぁっ!」
追い詰められてしまった心優しいサニーは叫ぶのであった。
「あ、う、え、えっと! そ、そうだっ! お前等ぁ、『アタシを喰えぇぇ!』」
と……
次の瞬間、全てのヤゴの視線がサニーに移ったのである。
真っ黒で無機質な両眸(りょうぼう)がジッと小さなギンブナに注がれていたのだ。
背筋に悪寒を感じたサニーは大慌てでナッキに言う。
「ナッキアーンして、急いで!」
「う、うん、アーン」
ナッキが口を開けると、勢い良く飛び込んだサニーが口中で震えているのがはっきりと感じ取れた。
しっかりと隠れたサニーの言葉は未だ有効らしく、ヤゴ達はナッキの下に集まって、下顎を何度も伸ばし続けている。
当然届いては居なかったが、諦める事無く無駄な努力を繰り返していた。
ナッキは視線をカエル達に戻し、侍と力士の全員がよろよろと肩を貸しあいながらトンネルの中に避難をし、代わりにヒットを先頭にしたギンブナ達が、トンネルの入り口をガードするように並び、その後ろには数千を越えるメダカの姿も見えた。
積極的に前面には出て来てはいないものの、モロコ達もトンネルの入り口まで詰め掛けているようだ。
一方、ウグイ達は自分たちのリーダーであるティガがグルグル回り続ける姿に首を傾げていた。
ナッキは思う。
――――当面の危機は回避出来たみたいだ、さてと、これからどうした物か……
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