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リュックの中に入れっぱなしだった、ダイヤモンド。
この綺麗な宝石に何の価値があるのか……。
確か、これを渡してきたシエルさんは“王子”に聞いてみるといいと言っていた。
王子であるトオルなら何か知っているかもしれない。
盗まれないようにしろと言われていたけど、実物を見せたほうが話が早い。
そのダイヤモンドを取り出して両手で包み、トオルがいるところに持っていく。
「ねぇ、トオル。
このダイヤモンドのことを知らない?」
地下の部屋の明るさでも光を反射して美しく見えるダイヤモンド。
驚いて触れてくると思いきや、トオルはちらっと視線を移しただけで大きな反応はしなかった。
「あれ……。
知らなかった……?」
「知ってますよ。それは王子が欲しがるものです」
背もたれに寄りかかり、平然とした態度で話してきて逆に私が驚く。
王子が欲しがるものと聞いたけど、手を出してくる気配がない。
「なぜ、トオルは私から奪わないの?
欲しくないの……?」
「欲しいですけど、ボクが持っているだけでは意味がないですから。
そのダイヤモンドの力は、かけらさんじゃないと引き出せません」
「私が……?
何の力もないのに……」
ダイヤモンドをテーブルに置いて自分の両手をじっと見てみる。
この世界に来てから変化したわけでもないし、誰でも持ち上げられるほど最強の力を手に入れたわけでもない。
「まさか、私は強力な魔法を出せちゃったりするの……?」
「フフッ、面白いことを言いますね。
魔法を使うかけらさんも神秘的で良いです。
しかし、この世界で魔法が使える人なんて誰一人いません。おとぎ話の中だけです」
「そっ、そうなんだ……。魔法じゃないんだ……」
夢のような力を手に入れたと思ったのに少し残念だ。
でも、このダイヤモンドはただの宝石じゃないことは分かった。
私が持つことによって何らかの力を発揮することも……。
シエルさんはこのダイヤモンドを渡してきた時、美しくも恐ろしい宝だと言っていたような……。
「じゃあ、国を滅ぼすほどの邪悪な力を得ることができるとか?」
「あはは。巨大な隕石を落とせるわけじゃないんですから、そんな事はできませんよ。
まぁ……、これ以上は言えません。
ボクがすべてを知っているわけでもないですからね。
それに、ここまでしか話さないのは、ボクの優しさです。正々堂々と戦うため……」
一体、トオルは誰と戦うつもりなんだろう。
ますます謎が深まるばかりだった。
それからこの話を聞いてみても、トオルは新しいことを何も話してくれなかった。
次はレトとセツナに聞いてみよう……。
彼らも王子なのだから……――