20××年4月。今日は私の高校の入学式。中学の時は、幼なじみで親友の葉月以外に避けられていた。仲良くなりたいのに、私なんかと言われてしまうのだ。
(高校ではお友達ができるといいけど……)
期待を胸に私は歩く。
「わぁ……!桜綺麗……」
私はふと、足を止めて空を見上げた。まるで背中を押すかのように満開に咲いた桜の花はとても綺麗だった。
「ってやば!遅刻しちゃう……!」
入学式から遅刻なんて笑えない。やっぱり、アメリの言う通り、学校まで送ってってもらえばよかったと後悔をしつつ駅まで小走りで行く。いくら東京都はいえ、次の電車を逃したら遅刻になってしまうかもしれない。なんせ、私は電車に乗るのがこれが初なのだ。親友と電車通学したいと、親の反対を振り切って電車通学にしたものの、今日に限って寝坊してしまったのだった。
「はぁ……間に合った……」
私は電車の中で一息つく。電車はとても混むと聞いていたので、私はそこまで人がいないことにびっくりした。いや、車に比べたらいるのだろうけれど、予想よりも遥かに少ない。
(ぎゅうぎゅう詰めだと聞いていたけれど、お父さんは私に嘘を付いてたのかな……?そこまでして、娘に車を使わせようとするだなんて……!)
お父さんへの怒りを落ち着かせつつ、外の景色を眺める。車からの景色とはまた違い、少しワクワクする。
「まもなく、私立すとぷり学園前〜、私立すとぷり学園前〜。」
アナウンスが入り、電車が停車する。私は足早に電車を降り、学校に向かう。学園の敷地が大きく、校門まで少し歩き、さらに昇降口まで10分ほど歩かなければならない。
(景色がとても綺麗なのね)
私は景色を見ながら歩く。その時、
「危ないっ!」
そんな声が聞こえたと同時に腕を掴まれる。振り返った瞬間、とてもかっこいい男の子がそこにいる。私は見惚れてしまい、お礼を言わなければと我に返る。
「あ、あのっ……」
お礼を言おうと声をかけた瞬間、男の子は掴んでいた腕を離す。
「ご、ごめん……」
どうして謝るのだろうかと、少し不安になりつつ、私はお礼の言葉を述べる。
「いえ、!助けて下さりありがとうございましと!景色ばかり見ていて横断歩道ちゃんと見てなくて……笑」
私はその言葉を放つと同時に後悔が訪れる。どんな箱入り娘だと呆れられてしまうかもしれない。その途端、
「危ないでしょ!前をしっかり見ないのは危険です!」
異性に初めて怒られたかもしれない。そもそも、怒られるなんてこと数える程しかない私は思わずびっくりしてしまう。
「ご、ごめんなさい……」
「あ、いやっ……そのっ……。」
彼は言葉が詰まっている。私が悪かったのに……。呆れさせてしまっただろうか。
「ごめん……」
男の子は小さくそう呟き、その場を離れていった。呆れさせてしまったのだろう。なんと自分が不甲斐ない。きっと、もう会えないのだろうと考えると、少し寂しくなる。あぁ、でも……
(名前ぐらい聞いておけばよかった……)
ちょっとした後悔をしながら、私は校門へと向かった。
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