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カーテンの隙間から差し込む朝日が、ベッドの上で重なる二人を静かに照らしていた。
言「……ん、伊沢さん。起きてくださいってば」
先に目を覚ました言が、自分を抱き枕のようにして離さない伊沢の肩を揺らす。
伊沢「……やだ。まだ足りない」
言「何がですか……。もう朝ですよ。僕、朝ごはん作らないといけないんですから、腕離してください」
か言が抜け出そうと身をよじると、**伊沢は逆に腕の力を強めて、言を自分の体の下に閉じ込めた。寝起きの少し掠れた声が、すぐ耳元で響く。
伊沢「おはよう、言。……ほら、こっち向いて」
言「え、ちょっ……」
向き合わされた瞬間、逃げる間もなく伊沢の顔が重なる。
言「それ……もう、毎日じゃないですか。はい、おはようございます。これでいいでしょ?」
言はわざと視線を逸らし、唇が軽く触れるだけの淡白な挨拶で終わらせて、すぐにその場を離れようとした。けれど、伊沢の手が素早く言の首筋に回り、逃げ場を完全に塞いだ。
伊沢「……それで終わり? 俺が言ってるのは、そういうことじゃないんだけど」
言「ん……っ!? ……ふ、……っ」
さっきまでの軽い感触を塗りつぶすような、深く、そして強引な一回。 伊沢は言の唇を割るようにして、吐息さえも自分のものにする。 静かな寝室に、一度だけ、密やかな水音がはっきりと溶け出した。
伊沢「……ふは。よし、これで目が覚めた」
ようやく唇が離れると、伊沢はすっかり満足そうな顔で、至近距離から赤くなった言を覗き込んできた。
伊沢「あはは、一回って言ったじゃん。……嫌だった?」
わざとらしく首を傾げて、意地悪く笑う年上の恋人。 嫌なわけがない。それが悔しい。嫌じゃないからこそ、全身の血が顔に集まったみたいに熱くて、どうしようもなく恥ずかしいのだ。
言「嫌じゃないけど……っ、けど、そういう意味じゃないっ!」
もう、伊沢の顔を見ていられない。 言は真っ赤な顔のまま、逃げるように枕を抱え込むと、勢いよく布団を頭まで被って潜り込んだ。
言「もう無理……! 心臓壊れたから、今日はもう一日ここから出ません!!」
伊沢「え、言? 起きないの? 朝ごはん作ってくれるんじゃなかった?」
言「十分……っ、十分後にして!!」
モゾモゾと布団を丸めて、完全な繭状態になる言。 伊沢は、ベッドの上で丸まった「言という名の塊」を愛おしそうに見つめると、その上からポンポンと優しく叩いた。
伊沢「……分かった。じゃあ、俺が飲み物淹れてくるから。落ち着いたら出ておいで」
それからちょうど十分後。
廊下から漂ってきたのは、どこか懐かしくて甘い、ココアの香りだった。
言「…………伊沢さんのバカ」
布団から少しだけ出した顔に、伊沢がマグカップを差し出す。 マシュマロが浮かんだ甘いココア。言は悔しそうに眉を寄せつつも、それを両手で包んで一口啜った。
言「……今日のキスの深さは一週間分としてカウントしますから。明日は絶対無しです」
伊沢「えー、それは困るな。俺のガソリン、明日には切れちゃうよ?」
言「知りません! 伊沢さん、な早く準備してください。僕、トースト焼いてきますから!」
今度は布団ではなくキッチンへ、バタバタと逃げていく言。 その後ろ姿を見送りながら、伊沢は「明日はどうやって引き止めようかな」と、楽しそうに次の作戦を練り始めるのだった。
(おわり)