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fkr「……鶴崎」
熱を帯びた夜の空気に、名前を呼ぶ声が小さく震えて溶けた。 福良はシーツを強く握りしめ、自分を覗き込む鶴崎の視線から逃げるように、わずかに顔を伏せる。
いつもは誰よりも早く答えに辿り着き、周囲を鮮やかに導いてくれる福良。けれど、今この瞬間の彼は、これから訪れる未知の感覚への恐れと、それを上回る期待にただ翻弄されていた。
trsk「……福良さん、無理してない? 痛かったらすぐ言って」
鶴崎が耳元で、そっと確かめるように囁く。冷静でいようと努めてはいるが、鶴崎自身の指先も、わずかに震えていた。
fkr「……無理なんて、してないよ。……痛くても、いいよ」
唇を噛み締めながら紡がれたのは、不器用で、けれど真っ直ぐな献身だった。 その言葉の重みに、鶴崎の胸が締め付けられる。自分を信じ切って、痛みすら受け入れようとするその姿が、愛おしくて、同時にたまらなく怖かった。
trsk「……よくない。そんなこと、僕にさせないで」
鶴崎は福良の頬に手を添え、熱い肌を包み込むように撫でた。
fkr「……え?」
trsk「痛くなんて、したくない。……僕がしたいのは、福良さんを幸せにすることだけだから。……信じて、力抜いて」
いつもの理屈も、計算されたセリフも、今の鶴崎には出てこなかった。
ただ、壊れやすいものを扱うように、驚くほど丁寧に、慎重に、福良の肌をなぞっていく。 福良が少しでも身を強張らせれば動きを止め、浅くなった呼吸をキスの雨で整えては、またゆっくりと熱を深めていく。
trsk「……っ、……あ、……ずるいよ……。……鶴崎……」
痛みに耐える準備をしていたはずの福良の瞳が、甘い熱に絆されて潤んでいく。目尻から零れた一筋の涙を、鶴崎は逃さず唇で掬い取った。
trsk「……泣かないで。……怖いことは、何もしないから」
鶴崎は福良の涙を吸い上げると、そのまま大きな掌で福良を抱きすくめるように包み込んだ。 痛みの覚悟なんて、鶴崎が注ぐ切実なまでの優しさの前では、もうどこにも残っていなかった。
福良はようやく強張っていた指を解き、鶴崎の背中に腕を回した。 痛みを越えるためではなく、この上なく心地いい熱に、すべてを委ねるために。
(おわり)