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『亡命 ~ランデヴ〜』 第二話 「迷い事の解決」
摩命詞は一人、呟いた。
「溶けちゃいましたか…ですが、この程度なら大丈夫でしょう…」
僕はその言葉の意味が分からなかったが、それは多分”プロ”が知るべきことだと察して、
僕の知的好奇心はすぐに消えた。
そんなことより、僕には衝撃的なことが告げられたのだから。
「こちら側の……人間?」
僕は言葉を繰り返した。
そもそも、今さっき神参俗某というスピリチュアルな現象を目撃したばかりなのに、
すぐ、おかわりが来る情報に僕の頭はいっぱいいっぱいだった。
「ええ、貴方…”これ”が見えるのでしょう?」
摩命詞はそう言って、後ろの背後霊…アレクサンダラーを指さした。
アレクサンダラーは、カメラを向けられた時のようにニコリと悪戯のように笑った。
——それが見えているということは、摩命詞の言う通りだということだ。
「はい……普通、見えないんですか?」
「ええ。……詳細は後ほど説明しますが……
簡単に言えば、特別な人間、ということですね」
特別。僕はその言葉に思わず反応した。
それはどちらかと言えばネガティブな反応だった。
周りのクラスメイト達はみんなもう進路も決めて、
この長い長い人生をどう生きるかを決めている。
——それが”普通”だ。
だが、僕はまだ何も決めれていない。
僕は、”特別”なんだ。悪い意味で……
「私の元に来ませんか?
神参俗某が見える人はごく少数なのです。
貴方が今悩んでいる、進路の解決にもなりますし…」
単刀直入に摩命詞は言った。
——まるでもうそうなることが決まっていて、
だがきっかけが無いと不自然な世界の流れになってしまうから
台本に書かれた演技をするような。予定調和という物だ。
恐ろしい人だ。
だが、僕はそんなことをこの一瞬で考えられるほど頭も良くなかった。
その時点の僕には酷く魅力的に映ったその提案を、僕は快諾していた。
シスターを助ける、補佐のような職業。
そのような仕事があることは、バスやタクシー、ライオンやゾウと言った
一般常識のような物だったが、そのことについては詳しく知らなかった。
「分かりました。やります。」
僕がそう言った後、摩命詞は、ニコリと微笑んだ。
「感謝しますわ。これからよろしくお願いしますね……
——透。」
「先生、先日はどうもありがとうございました。
おかげ様で、進路も決まりました!」
僕は、放課後の時間に、先生へ感謝の気持ちを伝えに行った。
「どういたしまして。透君の助けに少しでもなったなら、僕は嬉しいよ。」
ニコリと微笑みながら、僕が職員室の扉を閉め終わるまで手をひらひらと振ってくれた。
シスターの補佐って、どんなことをするんだろう……
そう思いながら校門を出ようとして、ふと上を見上げると、
僕は衝撃の現場を発見した。
——屋上から飛び降りようとしている生徒がいる!
考えるより先に、体が行動していた。
「危ない!」
その少女は、予想通り屋上の柵から身を乗り出した。
全速力で走って、走って、走った。
だが、僕は、
その少女が地面に触れる前に
辿り着くことは出来なかった。
が、それは杞憂だった。
あんな高さから地面に落ちて、
一般論では死んだであろうと思われた少女は、
頭から血を流しながらも立っていたんだ。
第二話 End
コメント
1件
「こちら側の人間」って、やっぱり透くんは特別な存在だったんですね。神参俗某が見えるからこそ、摩命詞さんにスカウトされた——その流れ、すごく自然で引き込まれました。でも、進路に悩む普通の高校生が急に「特別」って言われて戸惑う気持ち、すごく分かります……。 そしてラストの飛び降りシーン!血を流しながら立っている少女——この衝撃、止まりません。第二話でここまで世界の異常さを見せてくるとは。続きが気になりすぎます!