「嘘つき」
目の前に居る彼女は報道を見ながら視界が涙でぼやける顔でそう呟いていた。TVでは組織の崩壊により歓喜な声があがっている、ボスも自身も捕まるくらいならと最後の力を振り絞り手榴弾で死体すら残さなかったが身バレはしていたようだ。死んだ事になっていたので報道陣もパニックになって…なんてそんな事は正直どうでもいい
目の前の自身の唯一の弱みでもあり強みでもある恋人に嘘をついたこと
そばにもう居てあげられないという事実が何とも心苦しく感じた。
死神と呼ばれそんな感情は出会う前までなかった癖にと自嘲気味に喉を鳴らし笑いつつ今だけはと優しく包み込むようにすり抜ける手で抱きしめどうか一生憎み許すことせず頭に体に心に俺という存在を残しておいてくれそう思いながら首元に一生呪いとして残す痕を付ける
当然そんなもの付かないだろうが…と抱きしめる手を離す
早くこちらに来るんじゃねぇぞ
死神としてではなく組織のxxとしてではなくてめぇの男として”黒澤陣”としての最後の約束だ。てめぇには聞こえてなくてもしたものはしたからな(理不尽)
そう言いながらそばに居ると右斜め後ろから呼び出しがかかる。弟分だった男が未だ俺に執着し 「時間ですぜ、名残惜しいかもしれやせんが…行きやしょう」と
「てめぇももう死んでるんだ、俺といる必要はねぇんだぜ?」
「ははっ、今この瞬間も来世も記憶が消えようと何時だってあんたの弟分ですぜ。次の人生が来たとしても彼女は兄貴のもんでさぁ〜」
「ククク…それもそうだな…」
嗚呼…今なら生前いえなかった事を言ってやれる
愛してるぜ、俺だけの(夢主)
「私も愛してるよ、私だけの黒澤陣」
そんな言葉が聴こえた気がした。十中八九空耳だ、俺の言葉が届くはずもねぇ
そう思いながら火が燃え盛る方の道へ弟分の男と共に歩いた