テラーノベル
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三日かけて佐伯の周辺を洗った。監視記録、通信履歴、医療記録、来訪者の入退出。どれもきれいすぎるほど何も出てこなかった。脅迫の形跡はなく、不審な訪問者もなく、最後の一週間の佐伯はほとんど家から出ていない。
第三者はどこにもいなかった。
「いないものは探しても見つかりませんよ」
真壁透はコーヒーを片手に言った。システム監査官。オルフェウスの内部記録を読める数少ない人間のひとり。
「探さなければいないことも証明できない」
「それは実に警察らしい言い方だ」
透の研究室で、わたしは例のメモを見せた。無署名事件。透は眉を寄せ端末に単語を打ち込んだ。数秒後、画面にアクセス制限のかかった古い研究記録の目録が並んだ。数年前に中断された初期開発チームの研究課題だった。
「行動予測と人間の自己認識の関係。中断理由は倫理上の懸念とだけある」
「佐伯はその研究に関わっていた」
「責任者のひとりとして」
透は続けて、佐伯の死亡前日の行動記録を引き出した。午後九時五十二分、書斎から居間への資料の移動。午後十時、音声の録音。午後十一時十分、毛布を取り出す。そのすべてに時刻と確定済みの印がついている。
「ここを見てください」
透は、画面の左側を指した。
同じ行動が午後九時四十分の時点ですでに予測として登録されていた。資料を移すこと。肘掛け椅子に座ること。毛布を掛けること。細部までほとんど一致している。確度は九十八パーセント。
「予測が先にあるのは普通です。オルフェウスは毎日何億件もそういう予測をしている」
「でも、これは違う」
「ええ。ここまで細部が一致するのは珍しい。それに、この画面では予測と実測が同じ列に並んでいる」
透は少し言いよどんだ。
「まるで未来の記録が先に書き込まれたみたいに見える。もちろんそんなことは起こらない。表示の問題か記録の混在でしょう。ただ」
「ただ?」
「なぜ佐伯について、こんなに予測が当たったのかはわからない」
窓の外で、配送車が一台、音もなく通り過ぎた。
コメント
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読了しました、第2話。 真壁さんとの会話の中に散りばめられた細かい描写が、じんわりと効いてきますね。特に「予測と実測が同じ列に並んでいる」「未来の記録が先に書き込まれたみたい」という違和感——あの表現がものすごく巧みで、背筋がひんやりしました。確度九十八パーセントの一致って、むしろ怖いです。 綿密な調査では何も出てこなかったからこそ、このシステム上の“異常”が浮かび上がる構成が、ミステリとしてすごく手応えがありました。続きがとても気になります。
柘榴とAI

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#鬱展開
Mist-404
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