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翌朝。
携帯を確認しても結局返信ないまま。
はぁ・・・やっぱな。
オレ昨日からどんだけ携帯確認してんだろ。
こんな誰かの連絡待ち続けるのとか今までしたことなくて。
こんなに不安になるとか初めて知った。
でもさすがにもうオレもこれ以上我慢出来なくて、強硬手段を取った。
「すいません。早瀬さんは?」
部署の入口の方でようやく聞こえて来たずっと恋い焦がれていた人の声。
その声が聞こえた瞬間、その場所まで足を運ぶ。
「お疲れ様です」
ようやく会えた。
その嬉しさが溢れて笑顔で返すも。
「お疲れ様です」
彼女は表情一つ変えず冷めた業務的な反応。
「すいません。忙しいのに時間作ってもらっちゃって」
「いえ。プロジェクトの件で急ぎみたいだったので」
「はい。どうしてもすぐ望月さんに説明しなければいけない案件だったので」
予想通りの彼女の変わらない反応。
オレは自分の力では彼女と連絡取れないと判断して、朝イチで彼女の部署の部長にプロジェクトのことで急ぎで相談があると伝えてもらい呼び出した。
案の定彼女は部長の指示には逆らえず、オレの部署を訪ねて来た。
こうまでしないと会えないだなんてな。
「いつもの会議室でご説明しても?」
「わかりました」
そして彼女と一緒にいつもの会議室まで移動。
その間、当然彼女も話しかけようともしない。
オレもまだ今は話しかけられず、ただ彼女の前を歩いていく。
オレの隣じゃなく、少し後ろを歩く彼女。
ねぇ、透子。
今あなたはどんな表情をしてるの?
そんなにオレに会いたくなかった?
聞きたいこと言いたいことも何も言えないまま会議室へ到着。
中に入ってテーブルを挟んで向かい合って席に着く。
「プロジェクトの資料受け取った」
「そうですか」
「ごめん。一昨日の夜届けに来てくれたみたいで」
「いえ」
「なんで敬語?今更」
「なんとなく・・・」
仕事の話から入ったとはいえ、彼女のオレに対しての敬語が彼女との心の距離感を表しているようで、つい彼女に確認してしまう。
「昨日聞いたんだよね?高杉から」
オレは早速本題に入る。
「あぁ。うん」
やっぱり。
「ごめん。嘘つくような形になって」
きっと透子が気になってるのはそこだよね。
「ずっと仕事で忙しかったワケじゃなかったんだね。でもまだしばらく会えないって何・・・」
するとやっぱり思った通りの反応。
「いや、仕事で忙しいのはホント。高杉が知らない仕事なだけで」
「何その都合いい理由」
そうなるよな・・・。
「だから透子が気にする必要ないって伝えたくて」
今は詳しいこと話せないからそれ以上言えなくてもどかしい。
「私、一昨日、見たんだよね」
「・・・何を?」
「一昨日の夜、樹が女の人と歩いてるとこ」
すると、思ってもいなかったことを彼女が言った。
「・・・あぁ。そっか」
なるほど・・・。
多分それ栞と帰ってる時だよな。
そっか、だからそれも気にして・・・。
「あの女性も仕事関係の仲間」
「うちの会社の人?同じ部署?」
「いや・・・同じ会社ではないけど」
「にしては、なんか親密に感じたけど・・・」
そっか。
いとこの栞でもオレはなんとも思ってなくても透子の目にはそんな風に映ってしまうってことか。
「あぁ・・・あれ、いとこ」
「いとこ!? そんな都合いい話ある・・・?」
えっ? そこ、疑われるのかよ・・・。
「オレ嘘どれも言ってないし、やましいこと一つもないから」
まさかそこ疑われるとは・・・。
でも、栞はいとこなのに違いないし、それ以上どう説明しようもない。
「あの人・・・ずっと樹がずっと好きだって人なんじゃないの・・?」
・・・え?
何? 何の話?
もしかして、栞を勘違いしてる?
そもそもずっと好きだった人って透子だし。
「それは、違う」
それだけは信じてもらわないと困る。
「なら・・・仕事忙しい間に私飽きちゃった?」
「は!? なんでそういうことなんの!?」
いやいや、ちょっと待って。
そんなはずないでしょ。
透子に飽きるとかありえないから。
「好きな人じゃなかったら、私に飽きてもう他の人にいったんだろうなって」
「いやいや。なんでそうなっちゃうのかわかんないんだけど?」
これまでのオレのいい加減さや透子に近づくためについた嘘が、まさかのこんなタイミングでオレと透子の仲に影響を与えるとは。
「ずっと仕事仲間だって言ってんじゃん」
「会社にいないのに仕事で毎日忙しいって何?いとことか信じられない・・・」
本当のことを言えないことで、どんどん悪い方向に行ってしまう。
「なら。 どうしたら信じてくれんの・・?」
「わかんないよ・・・」
「オレはずっと気持ち変わってない。だから、透子に信じてもらうしかないんだけど?」
「気持ち変わってないって・・何? そもそも私たちの始まりも普通じゃなかったじゃん。冗談みたいな流れで付き合っただけでしょ? 樹の気持ちなんてどこまで本気なのかわかんないよ」