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ガタンゴトン。ガタンゴトン。
僕はこの日、友人の手伝いで鎌倉に来ていた。どうやら引っ越しするようでその手伝いをしてほしいとお願いされた。手伝ってくれたら対価も払うとのこと。すっかり僕は金に貪欲になっていた。
白い外壁にコの字型につくられた大きなマンション。そこの3階に住んでいるのが僕の友人・工藤壮亮(くどうそうすけ)。建築会社に勤めており、一級建築士の資格を持っている。
そんな彼の家にいるのが白色のオッドアイの目を持った猫のラムネ。ラムネは壮亮に引き取られる前、事故に遭い、そこで右後ろ脚を切断した。
二匹目が茶色のフサフサとした毛を持ったポメラニアン。名はチョコ。この犬もまたハンデを背負っている。生まれつき右目が失明していること。左目もそこまで見えないため両方見えないとっても過言ではない。昔、彼になぜハンデを負った子を飼うのかと問いかけたことがあった。そこで彼は「ハンデを持っているとどうしても引き取り手が少なくなる。そんな子を救いたいと思ってね」と言っていたのを覚えている。
ピーンポーン。僕は彼の家のインターホンを押す。
「秋翔!」
そういって出てきたのは壮亮だった。黒い所々ぴょんぴょんとはねている髪に黒い縁の透明なメガネを掛けていた。きっと服も普段着だろう薄水色のTシャツに布地でできたグレーのズボンを履いていた。
彼はにこやかな顔で僕を部屋の中に招き入れた。
「いやー飲み物とかなくてごめん」
そう謝るとさっそく引っ越しの準備を始めた。よくみると中は段ボールでいっぱいだった。きっと途中までは自分でやったのだろう。
「えーっと…右の部屋お願いできる?」
「いいよ」
僕はそう言われリビングの右ある襖で閉まっている部屋へ入った。すると、「ワンワン!」と元気な鳴き声が聞こえてきた。「ワン!」そういい飛びついてきたのはチョコだ。ふわふわとした毛とその元気さは彼の負っているハンデを忘れさせるほどだ。
部屋を見渡し、右には白と青緑色のキャットタワーがあった。そこの一番上にはラムネが気持ちよさそうに寝ていた。
僕はまず、その部屋にあるペットの玩具などをまとめ始める。どれもほつれていたりと年季が入っていた。
この部屋の奥には押し入れがあり、僕はそこを覗いてみることにいた。
「ケホッ…ケホッ」
そこを開けるとその中はほこりだらけ。僕はそのせいでむせた。
「おい!壮亮。この中はどうする?」
そう僕が言うと壮亮は思い出したように「あ…ああ〜!処分しちゃっていいや。新しいの買ったから」と言った。
押し入れに入っていたのは大量の布団。白い布団はほとんどが黄ばんでいた。僕はそれをビニール紐でまとめる。そして粗大ごみとして出すことにした。
「ふぅ〜とりあえず一段落ついたかな?」僕が言う。
「うん。ありがとうほんとに!いや〜俺一人だと絶対できなかったし」
そう言って僕らは休憩がてら紅茶を楽しんでいた。