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目覚めた蓮は、周囲を見渡す。無数の星々が悠久の煌めきを見せていた。背景は濃紺と黒色のグラデーションであり、永遠の広がりを感じさせる。遥か前方には際立って大きい黄土色の球体の姿があり、雲のような白色の粒子を纏っていた。人の身の矮小さをあまりにも強く感じさせる空間はさながら……。
(宇宙? なんで俺はこんな場所に? 怪我が全快して退院して、自宅に帰ったはずじゃあ……)
次に蓮は、自分が直径二十メートルほどの漆黒の真円の端にいる事実に気づいた。中央では、胸部を覆う布の胸当てと、青色の帯の付いた白色の長ズボンを身につけた、若い女性が座り込んでいた。凜とした佇まいの麗人で、大きな瞳からは勝ち気そうな印象を受ける。ただ左脚は踝から下がない。気づいた蓮は戦慄を覚える。
女性の視線の先では、角のある兜とマントを装着した鈍色の者が浮遊していた。それは鳥のような形を成す黒色の物体を纏っており、口内には膨大な力が満ち満ちていた。ここで蓮は重要な事柄に思い至る。
(時が、止まってる?)
女性もその敵と思しき者も背景の景色も、微動だにしないのだった。蓮の混乱はますます加速する。
その時だった。蓮の視界の端で、はるか天上から光が降り始めた。眩いばかりの白光である。蓮がそちらに目を向けると、あまりにも神々しい光の中に人の形をした何かが輪郭を形成し始める。
(何だ、あいつ。まるっきり見覚えがないのに、懐かしいというか、妙に惹かれる感じだ)
蓮が呆然としていると、「何か」はすうっと地へと降り立ち、光の中から歩み出てきた。その容姿は、蓮だった。今の自分と同じように、中学校の制服を着ている。
衝撃のあまり動けない蓮へと、蓮の姿をした者はゆっくりと近づいてくる。一歩分の距離を置いて静止し、右手を上げて蓮の胸に触れた。
刹那、蓮の脳裏に、鉄筋コンクリート造の大きな橋の映像が生じた。人通りはなく、深い闇が辺りを包んでいた。
(これってもしかして、四条大橋?)ぼんやりしたイメージだが、蓮は何かそこはかとなく危機的なものを感じていた。
蓮はふっと我に返った。胸に置かれていた手が離れていた。すると突然、周囲の景色が白光を帯び始めた。光はどんどん強さを増し、やがて蓮の視界は白一色に塗り潰された。