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シトシト、冷たい雨が肩を小さくたたく
手の先がジンと冷たくなってゆく。
彼は、両手を擦り合わせ、息を吐く
「温まりたい」
ただそれだけでいい、今は椅子に腰掛けてゆっくりしたい
しかし、ここエビス地区は初めて来るんだよなあ
普段住んでる駅から歩いては来れるが……
雨を避けるために歩いてくる人を避けた途端ー
「BAR セザン 」が目に入る
BARかぁ、昔学生時代何度か、友人に連れられ行った高い店を思い出す
あの時はやんちゃしてたなと少しよぎる中、
雨で濡れて滲んだ看板を店の中に入れようとする一人の青年
靴の雨音に青年は彼の方に振り返る
「あっ!お客さん寒くないですか?」
「え……?僕!?」
キョロキョロし出す彼
青年は思いのほかにずぶ濡れのコートの彼に
「今夜はこれから雨が強くなりますよ、雨宿りでよかったらどうですか?このセザンで 」
気前よく彼の言葉にセザンの店にすいよせられた。
店に入ると、青年は笑顔で温かいおしぼりを渡してくれた
ふぅぅ……と顔を拭くと一変して凛々しい青年になっていた。
「こんばんは、お客様」
さっきの彼とうって変わってクールでキリリとしている
「さっきの子は……」
「さっきの子?」
彼の背後に店前の青年があらわれた
「!!!」
彼はまるでお化けをみたかのように背中をビクッとさせる
「ど……ドッペル……」
「ははは、お客さんどうかされました?コートお預かりしますよ、こっち側ならエアコンの風で少しは乾くかも」
にこやかな青年は彼のコート預かるジェスチャー
「ルキ、雨は強ったか?」
「土砂降りじゃないけど、またひと雨来そうだ」
二人やり取りを聞いて少し目をこらす
(あぁ……双子なんだ、この人たち)
彼はそっとカウンターの椅子に腰を下ろす
手元に少し冷えたおしぼり
「雨が止むまでのお時間、ごゆっくりと」
にこやかな青年がこちらに微笑む
「……はい、BARすごい久しぶりです」
「以前はどちらのBARに?」
「学生時代に、新宿のほうに友人と一緒に……それきりです」
「僕もにたようなものです、その延長でバーテンダーをしています」
青年は、カウンター腰に鍋に入ったものを温めていた。
その鍋の酒の匂いだろうか、ほんのり果物の匂いがした
アーモンドのような強いてゆうなら杏仁豆腐みたいな
「そのお酒は?」
「これは、アマレットです、杏のお酒で、甘くて飲みやすく、匂いは
杏仁豆みたいですよね。お客様、以前飲まれたことはありますか?」
「いや、飲んだことは無いが、香りは覚えがあるかな」
「でしたら、このお酒でホットのものをいかがでしょうか?」
まあ、店に入って何も飲まずに出るのは気が引ける……
「では、それを……」
普段そんなに飲まないから、酒には詳しくないが
青年はそのアマレットをオレンジジュース?と合わせて温めれたそれらをホットグラスに注ぐ
「冷えた体に甘いお酒です」
……久しぶりのBARの酒だ
「いただきます」
小声で呟くように、彼は恐る恐るグラスの酒を口にする
「あぁ…本当に甘い酒だ」
雨で冷えた体にこの香りとじんわりとアルコールが体に伝わるのが
分かる
気づくと、1杯飲み干していた。
ほんのり、余韻に浸り、目の前を見る
「これに、ミルクも合わせられますよ、こっちは雨宿りのサービスです」
彼の気前のいい言葉にまた首を頷かせた
「じゃあ、もう1杯。それを」
そこから、2杯目を飲み干ししばし彼らと雑談をし雨の過ぎ去るのを
待った。
会計の時、ちゃんとサービスしてくれていた
「じゃあ、ルキくん、ミチくん。また寄らせて貰うね」
「「お待ちして おります」」
二人は穏やかな声で見送ってくれた。
雨のあがった月の光がやや眩しく僕を照らしてくれた
ような気がした。
   BARセザン   またのお越しを お待ちしております