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補完関係
「天国へ行こう、誰にも邪魔されない空で。結婚式を挙げようね」
1人の女は、腹部からどろっと赤い液体が溢れ出し、赤く染った、冷たい体の少女を愛おしそうに抱きしめ。そう言った。
『黄泉』出雲にある死者の国。国を産んだ神のうち片方が腐り、帰れなくなった場所にて。
その女によく似た死者が、黄泉比良坂…黄泉への入口で、その少女によく似た天使へ同じように言った。まるでその女の記憶でもあるように
「一緒に腐ろうよ、責務を全うした。性格まで腐りきった死者が集まるところで。腐っても私の一部をあげる。」
すると、天使はひっ、と怯えるような声を出し、逃げ帰ってしまう
「…ざーんねん。」
死者は残念がる声を出し、そのまま、どこかへ歩いて行ってしまう
そんな出来事があった後。災難なことに。天使は黄泉の国に囚われた神の様子を見に行ってこい、と言われ。逆らう間もなく。黄泉の国へ送られてしまう
「…あの女の人に会いませんように」
そう、まじないのように呟き。神を探す
…だが、何事もなく死者の国を彷徨えるはずもなく。これまた災難なことに、見覚えのある女性に遭遇する。
「…あ、私の提案、考えてくれた?」
思っていたよりも友好的に話しかけられ、少しびっくりするが、言葉を返す
「提案…?えぇと、人違いでは?」
…すっとぼけることにした、正直に答えても意味がないだろう。と、判断したからだ
「…人違い?私が?…私が、君のことを間違えるわけないだろう。生憎、目はまだ腐っていないんだ」
どこか恐ろしさを孕んだ声色で、至極冷静にそう言われ。恐怖を抱く
「ひ、ごめんなさいっ、!」
怯えている声色に、その感情が表情へ溶けだす
…まずい
そう思うが、口を開いた彼女の表情は想像とは違い、恐ろしいほど、穏やかだった。どこか懐かしさを孕んだ声色で、
「嗚呼、怖がらせてしまったね…ごめん。君は昔からこうだったなァ、ずっと私に怯えていた」
昔から、その言葉が引っかかる、彼女と面識は無い。その上、黄泉に来るのも近づくのも、あの時が初めてだ。不思議に思っていたら、彼女がまた口を開く
「あぁそうだ、もし良かったらお茶でもどうだい?美味しいお茶菓子があるんだ。」
少し警戒しつつも、お茶菓子という言葉に軽く胸を膨らませ。こく、と頷き。彼女へ着いていく
…驚いた。思っていたよりも家はおぞましいものではなく。一般的なビジュアル。お茶やお茶菓子だってそうだ。
「ほら、座って。菓子でもつまみながら少し話がしたいんだ」
言われるがまま椅子へちょこんと座り、お茶菓子を1口頬張る
「…さて、君は神を探しに来たんだろうね。ほら、図星だろう?」
まるで心でも読まれているように、要件を言い当てられ、少し背筋が凍る
「あぁそうだ、黄泉の国に囚われた神と言えば。『黄泉竈食』は知っているかい?」
初めて聞いた言葉だが、どこか嫌な予感がし、暑くもないのに汗が1粒流れる
「…知らないようだね。じゃあ説明してあげよう。『黄泉竈食』はね、黄泉での食べ物を生者や生きてる者が食べることで。その者が黄泉から出られなくなること。」
顔からサーっと血の気が引いていく感覚に襲われ、汗がまた、ポツリポツリと落ちる
「…おや、随分焦った様子だね?ふふ、目は腐っていないと言ったけれど。性格や倫理観だけは昔から腐っているようでね、申し訳ない。」
少しも申し訳なく思っていないような。満面の笑みでそう言う。まるで、私がここから出られなくなったことを心の底から喜んでいるようだった
それからどれほど経っただろうか、神も仏も助けてはくれない。心なしか、私も、彼女も。どろどろに溶けて混ざりあっているような感覚に襲われ、意識が途切れた。
まるで足りなくなっていく部位を補うように