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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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其の日、異能特務課からの依頼で、ポートマフィアと武装探偵社の合同任務が行われた。 なんとも、其の組織は数百人という小規模な組織なのだが、其の中に数十名の強力な異能力者がいるらしい。

そして其の内の五名の異能力者は、国外から逃亡してきた異能犯罪者らしく、特務課内でも名のある者達だと云う。

とは云え、其の組織は犯罪者達が逃げ場にした一寸ちょっとした安宿のようなものに過ぎないのだが、調子に乗ってポートマフィアの怒りを買った。

タイミングかった〜と、喜んでポートマフィア首領ボスは特務課からの依頼を引き受けたのである。

異能組織の者達は其の事を知って全面攻撃を開始した。ポートマフィアと武装探偵社も其れに反抗した。

戦争が始まる。
















何時もより一寸ちょっと物騒な依頼。 只──其れだけだと思ってた。





































『国木田と谷崎は後方に回れ!が悪い!敦と賢治の援助フォローをしろっ!』

耳に差し込んだ通話端子たんしから、乱歩の声が響く。

目の前には巨大な岩を操る異能力者が居た。敵である。

「「はいっ!」」

谷崎と国木田は声を合わせて後方に下がる。

砂埃すなぼこり彼方此方あちこちから舞い上がり、視界が遮られる。爆発音が何処からか聞こえた。

「さぁ、さぁ、さぁっ!オレをたのしませて!」

敵の異能者──幼い体躯たいくをした少年は楽しそうに声を張って、てのひらを振り下ろす。

空に浮かんでいた巨大な岩が、隕石いんせきのように落下してきた。

「うおおぉぉぉっ!!」

異能で虎化したこぶしを振りかぶり、敦は岩をくだく。

破砕音はさいおんが響いた。

「皆さんせてくだーいっ!」

賢治が明るい声で云う。

止まれの標識を賢治は横に振った。岩が砕かれるのと同時に、標識が破損する。

「うわぁ…すっごーい!」

キラキラと目を輝かせて、貰ったばかりの玩具オモチャで遊ぶように、楽しそうな声で少年は云った。

刹那せつな、少年の瞳に冷たい光が宿る。

「もっと見せてよ」

辺りの温度が数度低くなったようだった。

砕かれた細かな岩の破片が、敦のからだを貫いた。

「ぐぁッ…!」敦が呻く。

「敦!」

「敦君!」

何処からか、敦を心配する声が聞こえた。

臓器は破損してない。──敦は其れを確認して体勢たいせいを立て直した。

地面に着地する。

刹那、何かが影を作った。敦の躰──否、辺り一帯が影におおわれる。

敦は瞬時に顔を上げた。そして目を見開く。

















目の前には、先程のとは比べ物にならない──建物一つ分程の巨石が浮かんでいた。
















「敦君ッ!」谷崎が叫ぶ。

ボクが『細雪ささめゆき』を使ッても、岩の攻撃範囲が広過ぎて意味が無い…ッ。──表情が絶望に変わった。

え切れるかな?」

狂気に満ちた笑みをし乍ら少年はゆっくりと掌を下げる。

巨石が落ちてきた。

敦はあしを虎化させて走り出す。岩の攻撃範囲から逃げる為であった。

けれど敦も脳内では判っている。──間に合わない、と。

立ち止まって、敦は拳を握りしめた。

岩を破壊するしかない。

「っ……」

自分に壊せるだろうか?此れ程の巨大な岩を……。

そんな不安とおそれが、敦の脳内にあふれ出した。──いやっ!やるしかない!

拳を振りかぶる。

「ゔお゙お゙おおぉぉぉぉっ!!」

敦は巨石を全力でなぐった。ビシッと音を伴って、岩にヒビが入った。

そして割れた。

達成感が敦の口元に現れる。其の一瞬の安堵あんど──もっとも油断する瞬間スキを突かれた。

「其れだけじゃ無いって、先刻さっきも云ったでしょ?」

少年が明るい声で云う。指をくいっと手前に曲げた。

二つに割れた岩が勢いをして、間に居る敦に向かってくる。

しまった……!






























『──・・・金色夜叉こんじきやしゃ
































敦に向かっていた岩は、其の一瞬で粉状のように細かくなった。

「なっ…!」敦が目を見開く。

刹那、隣に人の気配がするのが判った。瞬時に振り向く。

敦の隣には、茜色の和装の女性──尾崎紅葉が立っていた。其のかたわらには着物姿の仮面夜叉が浮き従っている。

「ぁ……貴女あなたはっ…!」

開いた口がふさがらない敦に、紅葉は云った。

「悪いが虎のわっぱよ、鏡花の処に行ってはくれぬかのう?」

「鏡花ちゃんの処に……?」

予想外の言葉に、敦は茫然とする。

泉鏡花。敦と同じく武装探偵社社員の一人であり、『夜叉白雪やしゃしらゆき』と云う戦闘系の異能を持つ。

けれども同じ戦闘系の異能を持つ敦に紅葉が「行け」と云ったという事は、鏡花が苦戦してるという事だ。

此の戦いには乱歩が其々それぞれの異能を活かせるように配置をあらかじめ決めていた。

鏡花の方にはポートマフィアの遊撃隊──『黒蜥蜴くろとかげ』も居る。

其れにも関わらず苦戦しているというのは、相当な敵なのであろう。

敦が深くうなずく。

「其処の橙髪の童も頼む」

谷崎に視線を向けて紅葉は云った。

「えッ!?ボクも!?」 唐突な現状に谷崎は慌てふためく。

刹那、耳に差し込んだ通話端子から、再び乱歩の声が聞こえてきた。

『敦はそのままだ』

声を出さずに、乱歩の指揮を全員が聞く。

『鏡花ちゃんの処に行くのは谷崎。そして──』

通話先で、乱歩は目を開く。其の碧玉エメラルド色の瞳には、あらゆる可能性を描き見通した未来が映っていた。

乱歩は息を吸って、そして云った。




















『太宰。──お前が行け』




















其の場に居た全員の視線が太宰に向けられる。太宰は耳元の通話端子に触れて云った。

「……了解しました…」

太宰は真剣な表情をしている。

「──あははっ…!」

刹那、少年の笑い声が響いた。全員が視線を移す。

「じゃあオレは、君達を兄さん達 • • • •の処に行かせなければい訳だ!」

愉しそうな表情をして、少年が横に手を広げる。

地面が縦に揺れた。

「っ!?」

凡ゆるものが痙攣けいれんするように揺れ、其の振動は立っていられない程だった。

「何ですか、コレ!?」

敦が叫んだ。地面にひざを着いている。

「落ち着け敦!恐らくし──」




















いや、違うッ!」























地震だ──と云おうとした国木田の言葉を、太宰が遮った。

太宰は敵の少年を見据みすえる。

「彼の異能力だ!」

太宰がそう叫んだ瞬間、辺り一帯を何かがおおい尽くした。

其れは地面からい出た土のかたまりであった。比喩ひゆではない。其のままの意味だ。

「な、んだ……此れは…」

国木田が口先から言葉をもらす。

其の光景に誰もが絶句ぜっくした。

「全員此処で殺す」

年齢に見合わない冷ややかな声で少年が云う。

壁は太宰の目の前に出ていなかった。異能無効化の影響を受けない為だろう。

然しそうなると、太宰は自由に動く事ができ、かつ、他の者達も太宰の側まで寄れば、敵の少年自らが制止し攻撃してこない。

だからこそ、其処を突かれないように少年は或る行動を取った。

ずは君から」少年が太宰を指す。

「っ!」

物凄い殺気さっきを太宰は肌で感じ取った。 少年が口元に薄い笑みを浮かべる。指を曲げた。

其の瞬間、巨大な岩の塊が太宰の真上に現れた。

急降下してくる。逃げ道はなかった。

太宰は触れた凡百あらゆる異能を無効化すると云う能力。

けれど敵の少年の異能は、立ったふれた物質を操る能力。異能そのものでは無い為、太宰の異能で無効化しても、其の勢いのまま太宰に激突してくるのだ。

「チッ……」

太宰が顔をしかめる。後方にんだ。

「太宰さん!」何処からか声がする。

巨石が太宰に当たった。

































「ゔ、っ……くそ…」
























太宰は呻きながら悪態をつく。けられたとのの、岩の瓦礫がれきが太宰の右脚を潰していた。

「太宰さん!大丈夫ですか!?」

敦がけ寄ってくる。其の後ろで敵の攻撃が届かないよう、国木田達が応戦していた。

太宰の脚に乗っていた瓦礫を敦はどかした。

洋袴ズボンの布がよじれてけ、露出した皮膚ひふからは鮮血があふれ出ていた。骨が何本か折れている。

其れを見た敦の表情は強張こわばり、そして恐怖が混じった。

「大、丈夫…だ」

脚の痛みをこらえて、ふらつきながらも太宰は立ち上がる。

「だっ…太宰さん……」 敦が顔を曇らせながら太宰を見る。

右足を引きずるようにして、太宰は歩いた。

「それより、はやく鏡花ちゃんの処に行って応戦しなければ──」






























轟音ごうおんと共に衝撃波しょうげきはが、此処まで伝わって来た。


























「…っ!?」

全員が目を見開く。其の轟音は正式には音ではなかった。何かの衝撃に依って起こった空間の唸りであった。

「今のは爆発…?」

敦が口先から声をこぼす。

「……」

太宰は目をみはった。

今の轟音は──中也が居た方向• • • • • • •

数個の可能性と予測が太宰の脳に溢れ出す。

其れより少し疾くに、乱歩が通話端子の向こうで『しまった』と呟いた。

「真逆、っ…….」

太宰の瞳に絶望が混じり込む。先程の轟音の原因と、其の後に起こる悪夢を理解した故だった。

『太宰!今直ぐに素敵帽子君の処に行け!』

乱歩が声を張る。

「……、っ!」

返事をする間もなく、太宰は走り出した。












































『──彼は汚濁おぢょくをつかう気だ!』




僕の『救済のカタチ』

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コメント

7

ユーザー

太宰さんが「くそっ……」て云うの好きすぎて台詞に入れがちww 珍しいのに……

ユーザー

もう言葉に言い表せないほどこの作品が好きッ!! 発狂しながら読んだもん(?) 中也も太宰さんも大丈夫かな...、 続きが気になりすぎる!

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