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#独占欲
めんだこ
212
ガルーナ村の入口。
木で作られた古い門には、赤い布が高々と掲げられていた。
辺りは静まり返っているため、風に煽られる布の音が小さく聞こえ続けてくるけど――
「……あの布って、何か意味があるの?」
「危険だから、無関係の者は近付くな……という合図の旗です」
「ということは、この村……本当に疫病が?」
「他の理由かもしれませんが、先日の大蛇を見る限り……」
「それじゃ急がないと! 早く様子を見に――」
「アイナ様、お待ちを!」
村の中に駆け出そうとした瞬間、ルークに肩を掴まれて静止させられる。
「え……? どうしたの?」
「仮に疫病だとするなら、村の中は危険です!」
「あ、そうなんだけど……。
私の作った薬を飲めば、とりあえずは大丈夫だよ?」
「え……? あ、そうでしたか! 失礼しました!!」
ルークは慌てて、私の肩から手を除ける。
「ううん、私の説明不足だったよね。
それにおかしいと思ったら、ちゃんと止めてくれるのはありがたいよ」
おかしいとは思っても、そのままにする人間は世の中には結構多い。
私に従ってくれながらも、ただのイエスマンではないルークは本当に心強いのだ。
「――でも、本当にその通りだね。慎重にいくことにしよう」
そう言いながら、辺りに向かって鑑定スキルを使っていく。
取得情報を調整して、病原体に限定する。
私は錬金術師だけど、ここまで来ると『鑑定師』として生きるのもありかと思ってしまう――
──────────────────
【ガルーナ村近辺で検出される病原体】
疫病8172型、疫病8173型、疫病8174型
──────────────────
……数分使って検出されたのは、この3種類だけだった。
すべてが大蛇の血液に含まれていたものだから、これなら対応は可能だ。
でも疫病が3種類も同時に発生するなんて、一体どうなってるの……?
「ルーク、大丈夫だったよ。
でも、新しい病原体が流行っていたらマズかったから……さっきは止めてくれて、ありがとね」
私は私で自信過剰だった。
ここは素直に反省するところだ。
「いえ、まったく問題ありません! さて……それではどうしましょう」
「そうだね――」
周囲を見まわしても誰もいない。
まさに静寂に包まれた村……といった感じだ。
「とりあえず、民家をまわってみる?」
「分かりました。それでは近くの民家からにしましょう」
私とルークは覚悟を決めて、村の門をくぐり抜けていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「すいません、どなたかいらっしゃいますか!?」
ルークが民家の扉を叩いてまわる。
少しうるさいくらいだけど、場合が場合だけに、何か問題があっても許してくれるよね。
しかし、しばらく待っても返事は無い。
「返事はありませんが……扉は開いていますね」
ルークは扉を少し開けて、その言葉を証明してくれる。
「申し訳ないけど、入ってみようか」
私が言うと、ルークは静かに扉を開けた。
「どなたかいらっしゃいま――
……アイナ様、少々外でお待ちを」
ルークは突然私の身体の向きを反転させて、民家の外に追い出した。
「む……?」
しばらくするとルークが出てきて、静かに首を横に振る。
ああ……、人はいたけど、遅かった――そういうことなんだね。
「えっと……ありがとう。
もしかして、この村全部……そうなのかな」
不意に恐ろしくなって、最悪の事態を想像してしまう。
自分たち以外が亡くなっている村……これは単純に、怖い。
「一軒ずつ当たるのは効率が悪いですね……。
それでしたら、大声で呼んでみましょう」
なるほど、それは良い考えだ。
でも私は……ちょっと、声が出そうにないや。
困りながら、ルークをちらっと見てみる。
「お任せください。大声には自信があるんですよ」
私を安心させるため、こんなときではあるが、ルークは笑顔を向けてくれた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――どなたかいらっしゃいますか!!!!?
私たちはこの村の疫病を解決できる者です!!!!!
どうか、返事をしてください!!!!!」
……確かに大きな声。
めちゃくちゃ響く……けど、とっても助かる!
声の余韻がようやく消えた後、村の奥から初老の男性がよろよろと杖をつきながら歩いてきた。
「ごほっ、ごほっ……。あなたたちは一体……?」
ルークの顔を見上げると、彼は同意するかのように頷いた。
それじゃ、ここからは私が出ていこう。
「初めまして、私は旅の錬金術師でアイナと言います。こちらはルーク」
ルークはその言葉を受けて、黙って会釈をする。
「おお……錬金術師殿か……!
そ、それではバイロンはどこに……?」
「……バイロン?」
バイロンってなに?
そう思っていると、初老の男性は続けた。
「はて……? バイロンはこの村の者なのですが……。
一昨日、村の外に助けを呼びに行ったのです……」
ああ、なるほど。
バイロンさんが私たちを連れてきたと思ったんだけど、当の本人がいないからどういうことだ……ってことかな?
「私たちは旅の途中、この村の近くに住むという大蛇に襲われまして……。
その大蛇が疫病を持っていましたので、この村は大丈夫かと立ち寄ったのです」
「おお……なんと、なんとありがたい……」
初老の男性は震えながら、嗚咽を漏らした。
「ごほっ、……失礼。私はこの村の長、ランドンと申します……。
知る限り、この村の半分の者が……すでに命を落としております……」
「は、半分!?」
「残った者も、もう満足に動けず……。
アイナ殿には折角ご足労頂いたのですが、おひとりでは薬を作るのも難しいでしょう……。
この村のことは忘れて、どうかお帰りくだされ……」
疫病が猛威を振るう中、確かに時間は無いのだが――
……でも、私には薬を作る時間は要らないんだよね!
細かい説明は後にして、今はさっさと治していこう。
とりあえずランドンさんを、かんてーっ!
──────────────────
【状態異常】
疫病8172型、疫病8173型、疫病8174型
──────────────────
……って、疫病3つ持ち!?
この村は一体、どうなってるのよ……。
手持ちの薬は無いから、作ってすぐに渡してしまえ!
「出でよ (バチッ)、抗菌 (バチッ)、薬 (バチッ)!」
音を響かせながら、薬を3つ作り出す。
「え……? 今のは……?」
「私、収納スキル持ちなんです。
この薬はアイテムボックスから出したのです」
……まぁ、嘘ですが。
「そうでしたか……って、薬、ですか……!?」
ランドンさんの顔には驚きが混じる。
「ランドンさんはこの3つを飲んでください。
他の人のことは考えないで良いです。人数分、渡しますから」
「は……? な、何を――」
私の意味を理解できず、ランドンさんは薬と私を交互に見る。
「いいから飲む!!」
「は、はいっ!!?」
私のテンション高めのお願いに、ランドンさんはすぐに薬を飲み干した。
それじゃ、かんてーっ!!
──────────────────
【状態異常】
衰弱(小)
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……よし、疫病が無くなって衰弱になったね。
「はい、ランドンさんは今ので治りました!」
「……は?」
「体力が戻りきってないでしょうけど、休息を取れば大丈夫なので!」
「……た、確かに、急に苦しさはなくなったような……?
いや、無くなりました……っ!?」
「それでは、お身体はまだ辛いと思うのですが……。
治療場所の準備と、治療が必要な方を集めるのを手伝って頂けますか?」
「はい……っ!!」
……それにしても、生きているのは村人の半分……くらいか。
具体的に何人なんだろう……と考えてしまったが、ここまで来たら細かいことはどうでも良い。
ここはもう、全員を助けてしまうことにしよう。
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