……い、いやぁ、ああいうのは普通プリントとかですよね。なんでわざわざ言葉で言うのやら……。
……そ、そうですね。
ですよねー、ははは……。
やばい、めっちゃ気まずい。早く、早く来てくれ先生(救世主)! くっ……前世で女の子と喋る事なんてなかったから! 俺男子校だったから! こんな事なら普通の高校に入って、青春を謳歌しておけばよかったぜ……。
「…あ、あの! あ、なたはなんでこの学校に入学したんですか……?」
きっとこの空気に耐えられなかったんだろうな…話題が面接の時みたいになってるもん。
「え、えーと…なんか知らない人に推薦されたので、入りました……?」
ん? なんか今の俺の文章、真実だけど意味不明すぎないか? …やべぇ緊張してて何も考えてなかった。
「え?……し、知らない人?」
あ……まぁそうなりますよね。僕もそう思います。もしここの生徒さんに入学した理由聞いてそれだったら「お前それでいいのか」って心配になりますもん。今更だけどそんなんでいいのか、俺……。
「まぁいろんな理由がありますよね、こんな有名校ですし……」
あら、すごい優しいこの子! こんなにもよくわからないのに! 意味不明なのに! 容姿端麗で性格美人とか……なんだ、ただの女神か。
「すみません色々あって……ははは。と、ところであなたの方こそ、どうしてこんな有名校に?」
「わ、私ですか?……私はその、えぇと……」
見るからに動揺してらっしゃる。なんかここまで動揺されると、知りたいという好奇心よりも罪悪感の方が強くなってくるな……。
「む、無理でしたら別に……」
「いいい、いえ、大丈夫です! じ、実は私の家庭…上流階級に属していまして。その……いわゆる、貴族なんです」
貴族、ねぇ……。その容姿にその性格、なんだか妙に納得している自分がいる。でも、なんというか、貴族というものにあまり実感が湧かないというか……。
「な、なるほど……?」
「……その様子では、あまり貴族をご存じないようですね。それでは少しご説明しますと……」
少し落ち着いてきた様子の彼女はそう言うと、貴族というものについて……規定通りなんだろうな、俺には難解な言語で説明していった。
「ですから、最近ではそのように……」
「ちょっ、一旦ストップ! えー……少し整理させてください」
怒涛の勢いで説明されたので、俺の頭がオーバーヒートした。つまり、どういうことだ?
「……すみません、要約をお願いできますか?」
「あ、はい! すみません、ペラペラと……。私、人と話すのが苦手でして。今すぐ要約しますね!」
元気だなぁ……この子。
「そうですね……平民と王族の間の階級、と言ったところでしょうか。例えば、騎士の方なんかがそうですね。階級ごとに選べる職業が異なっているのはご存じですよね? その中でも、私達の階級では騎士などある程度の位がある役職を選べちゃいます」
すごく誇らしい顔をしている……騎士を選べるという事はきっと素晴らしい事なんだろうな。階級で役職が決まるってのを今初めて知った俺には全然分かんない事だけど。ほんと無知ですんません。…にしても、さすが差別社会、面倒な事この上ないな。
「なるほど、貴族についてはなんとなくわかりました。それで……それが入学理由にどう関係しているんですか?」
「……私達は貴族と言っても分家で、今までずっと本家の方々にいいように扱われていたんです。でも、ある時私の父が本家の方々を怒らせてしまって……。その時、本家の方々に言われた言葉に…私カチンときちゃって、言い返してしまったんです。そんな事、もう慣れてるはずなのに……バカですよね」
彼女は力無く微笑んだ。
「……傷つく事に慣れなんて無いと、俺は思いますよ」
ああ。慣れるなんて……そんな事、できるわけない。
「……そうですか、ありがとうございます」
彼女はそう言って、また力無く微笑んだ。
「……そして、その代償がこの状況です。この学校を、大賢者『マスター』の位で卒業すること。それが私達が許されるための条件でした。私はただでさえ魔力量が乏しく、卒業ができるかどうか危ういのに、それを首席でなんて……飛んだ無茶振りですよ」
彼女の表情は重く、沈んでいた。
「すみません、こんな話をして……。これから新学期だっていうのに」
彼女は申し訳なさそうにこちらを見た。俺から聞いたんだ、謝る必要なんてないのに。
「いえ、こちらこそすみません。そんな話、させてしまって……」
俺達を取り囲む空気から、いつのまにか気まずさは消えていて、そこにはただ、妙な重苦しさだけが残っていた。
コメント
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1000すごい(゚ω゚) 押してくださった皆様、ありがとうございました(*´꒳`*) 指の筋肉痛にはお気をつけて(笑)。