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え、なにこの空気……。
先生、声に出てますよ〜。そりゃそうなるよねごめんねこんな空気にして。でも話の流れ的にしょうがなかったと思うの。
「あ、あの!……どうか、しましたか?」
逆にどうもしなかったように見えますか?
「あ……えっと、だ、大丈夫です。お気になさらず」
すごい気になるような言い方するじゃんこの子! あ、見てるよ! すごい見てるよ先生が! 生まれて初めて修羅場(しゅらば)に遭遇した人みたいな複雑な表情でこっち見てるよ!
「そ、それで……どうでした?クラス」
とりあえず話を進めよう……。この場の進行役に俺はなる!
「えーっと……ちょっと待ってくださいね、今確認しますので……」
先生は持っていた黒革のバインダーを開き、挟んであるプリントを確認している。いや、確認してからこっち来なさいよ! こんなこと言えた義理じゃないけどさ。
「そうだ……最後に名前だけ、聞いてもいいですか?」
そういや名前を聞いてなかった。こんな可愛い子、そうそう会えないからな。機会は積極的に掴んでいかねば……。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私はネルヴィス・ラプスディアと言います。ラプスディア家分家の一人娘です。自己紹介もせずペラペラと、すみませんでした」
彼女は自然に微笑んで自己紹介をした。彼女の微笑みに先ほどのぎこちなさは無かった。
「いえいえ、言えるようなタイミングがありませんでしたし……」
何回か会話のキャッチボールをした後すぐにあの話だったからね!
「……あなたのお名前をお伺いしても?」
「あ、もちろんです! えっと……アルシュパ・ナハーテです。僕、今日あなたと話せてよかったです」
一人は寂しいからな。入学式当日、校舎の外で一人きりは……寂しいからな。
「私もです。さすがにここで一人きりは寂しかったでしょうし」
これが以心伝心? …てか何この子可愛い! 当たり前だけど!
「……終わりました?」
先生が困ったような微笑ましいような顔をしてこちらに声かけてきた。
「は、はい! 大丈夫です! お待たせしてすみません」
すんません、すっかりあなたのこと忘れてました。めっちゃパシったのに、すんません。
「あの……お別れ、みたいな雰囲気のところ申し訳ないのですが…… ナハーテ君もラプスディアさんも、同じクラスですよ」
そういうのはもっと早く言えよ‼︎
……ふぅ、俺渾身のツッコミが炸裂してしまった。それにしても、マジか……嬉しいけど、さっきのシーンとか台無しで……なんか複雑。
ラプスディアさんもなんとも言えない顔をしてらっしゃる。可愛い。
「ところで君達……時間、大丈夫ですか? 早く行った方が……」
……あ。
「と、とりあえず走れば! 先生、わざわざありがとうございました……またどこかで会った時にこの恩は返しますから! さ、走りますよラプスディアさん‼︎」
俺達は先生に一言お礼を済ますと、校舎の入り口へ向かって全力で走った。