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現世と隠世の境界線

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現世と隠世の境界線

3 - 第2話 お花見

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2024年08月01日

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「…」

困った。今は春の真っ只中だというのに、ここに全身びしょ濡れの自分がいる。

しかも彩は何か企んでいるようだし…

今後の行動に警戒せねば。


「里奈ー!里奈里奈里奈里奈里奈ぁー!!!りーなーっ!」

「どうしたの?そんなにあわてて。大丈夫?」

琴葉がすごく興奮していた。耳と尻尾がぶんぶん揺れている。それに顔も真っ赤だった。

「あのねあのねっ!ほら、山の山頂に、桜がいっぱいあるじゃん?で、いつもは立ち入り禁止だけど、特別に許可されたの!!だから、いっしょにお花見しよーよぉー」

「うんうん、わかった。でも、山頂っていっぱい妖怪がいるんじゃないの!」

「ううん。この前のことで一旦どっかにいったらしいよ。でも、もしいても私が里奈のこと守るから!安心して!」

「わかった…あ。じゃあ…」


こうして。花見当日。

「わーっ!いい天気だぁ!ねっ、里奈」

「うん…でもなんか、全然妖怪の気配しなくて逆に怖…」

「そのようね」

「ひゃっ!?また彩さんですか!?その…背後から登場するのやめてもらえませんか?」

「だって、いっつも里奈が気づかないんだもん。気づけるようになればいいでしょ」

「そんなこと言われても…あ、今日は霜月さんは?」

「ああ、霜月はなんか、一人で考えたいことがあるらしくてさ。誘ったけど来てくれなかったの。でも、本当に私がいていいの?」

「もちろん!あとくらげ…」

「儂もいるぞ?」

「あ、よかった…」

里奈の能力は、妖怪の気配を主に感じ取ることだが、やはりまだ彩やくらげのような百〜千年単位で生きている妖怪の気配は感じ取れない。感じ取れないというか、わからないーつまり、存在感がないということに近い。

「だが…水気がないところは儂も流石にきつい…申し訳ないが、帰らせてもらう」

「そっか…」

くらげは水の音がしたあと、消えた。

「それにしても酷いわよね。霜月ったら、せっかく私が誘ってあげたのに。桜嫌いなのかしら?」

「もしかしたら雪女族だから、ぽかぽか陽気か。苦手なのかも!」

「ああ…鞠。たしかに。色白だしねー」

現に、雪女族の里は日が一年中ささない場所にある。それに、年中雪が降っているし、とても寒い。妖怪は寒さを感じないけれど、とても人間が行けるところではない。

「雪女族は血が青いらしい」

「あの無表情の顔と君の悪い容姿は雪女族だ」

と、雪女族への悪口が絶えないこともしばしばあるけれど。

「ささ、私、いっぱいお料理作ってきたよ〜!」

「わぁ!美味しそう!」

「私はいいわ。長く生きてると、あまり食べる気が湧かないのよね。最初から食べなくてもいいけれど」

「そうだね。彩は”おばあさん”だもんねぇー」

「なんですってぇ!昔は人間を食べてたのよ!生贄をもらってね!」

「えっ…」

一気に里奈の顔が青くなる。けれど、琴葉と彩はまだ睨みあったままだ。

「ああ、でももう食べてないから。最近はね」

「最近…?」

里奈の顔はますます険しくなっていく。彩は、「忘れて」と言わんばかりの顔をする。

「私もお料理作ってきましたよ!人形たちと仲良く作ってー」

進んで割って入るように、鞠がお弁当を差し出してきた。

「わぁ!美味しそう!」

「さ、食べましょ」


一時間前ー…

(なんかいやな予感がするんだよなぁ…)

およそ一時間前、霜月はひとりで山の山頂に来ていた。

(それにいつもならあいつが…)

居ない。誰も。

「さーさ、もうすぐですよぉ〜」

(やばい、もう来てる…一旦撤収…)


「今日は風が強いねぇー…」

「うんうん。また妖怪が変な悪さしてるのかなぁ?」

4人は桜を見ながらご飯を食べていた。

「ああ、そういえば…この山頂には、地味に危険な妖怪がいたわよね〜」

彩がこれ見よがしにそう言う。

「え…琴葉、やっぱり危険なんじゃない?」

「大丈夫だって〜ここには私たちもいるし、ちゃんと守るから」

「そうですよぉ。きっと安心です」

「そうとも言い切れないけどな」

「えっ!?」

里奈が驚いて後ろを振り向くと、霜月がいた。

「いつのまに…?」

「私は気づいてたわよ?何してるのかなって思ってたけど」

「…」

「そうとも言い切れないってどういうことですか?」

「しばらく隠世をまわってきて、いろいろ話を聞いてきた。今、妖怪が活発化してるらしいんだ」

「ふぅーん。よく情報を仕入れたじゃないの」

「あのな…」

霜月が少々切れ目に言う。逆に、彩は面白そうに三白眼を細める。

「何を考えているかは知らないが、少々いいかげんに…」

「あっ!こんなところにマイクが!」

「ほんとだ!アイドルが持ってるやつみたい!」

琴葉と里奈が立ち上がった。

「!そのマイクに触るんじゃ…」

「え?」

霜月が言うより先に、里奈はマイクを掴んでいた。

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