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現世と隠世の境界線

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現世と隠世の境界線

4 - 第3話 桜の罠

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2024年08月01日

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里奈がマイクに手を差し伸べた瞬間ー

「え?」

ビュウン

突然突風が吹き、何かに引き込まれるような感覚が里奈にはしていた。

「ん…?ここどこ?」

里奈は、気づくと一人で、ひたすら真っ白な部屋にいた。

「え?」

里奈は動揺を隠せない。

(妖怪の仕業…?琴葉たちは無事なのかな…)

あたりを走ってみても、出口どころか、ひたすら真っ白な空間が広がっていくだけ。

(扉もないし…なにかの幻覚なのかな?)

その次の瞬間。

「!?」

(妖怪の気配がする…近くにいる?)

誰だろう。琴葉かな。琴葉がいいな。

他の悪い妖怪だったらどうしよう…と、里奈は不安そうにしていた。

「あ!出口!?」

突然目の前に扉ができた。里奈は無我夢中で扉に向かって飛び出して行った。


「えぇ〜っ!?ここどこぉ!里奈ぁ!」

一方、琴葉も迷っていた。だが、そこは真っ白い何もない空間ではなく、妖狐の里森のような、竹林のようだった。

(行っても行っても同じ景色が広がってる…それに、変な気配がする…)

琴葉は耳をぴくぴくさせ、注意深く竹林を進んでいた。

次の瞬間。

「琴葉ーっ!」

「里奈!?」

どこか遠くから里奈の声がした。琴葉は疑いもせず、どんどんと進んでいった。


「ここは…?」

霜月は、雪女族の里にいた。久々の寒々とした景色に、混乱を隠せない。

(どうしてここに…?ずっと前にこの里を出たはずなのに)

しばらくあたりを見回すが、人っ子一人いない。とても静か。

(まさかまた彩がなんか変なことを…?また面倒なことになりそう…)

霜月はそんなことを思いながら、里の奥へと進んでいった。


「そっちは順調?」

「うん。もうすぐ出番かな。ちゃんと足止めしてるよね?」

「もちろん。今、皆さんに幻覚を見せているところですわ」

「そう」

「始めるよ、私のライブ」


「里奈ー?」

琴葉は里奈の声のもと、竹林の中を彷徨っていた。けれど、どんなに走っても里奈の姿は見えない。

「里奈。こんなところにいたの」

けれど、里奈は現れた。里奈は琴葉に向かって、まっすぐ手を伸ばす。

「力。貸してくれない?」

「え?」

「ねぇ。かして。かしてかしてかしてかしてかしてかして…」

バチン

琴葉が思いっきり里奈の手を叩いた。

「なんで?」

(おかしい…これは幻覚?)

琴葉は戦闘体制になり、里奈へ発火の札を投げた。

「どうしてこんなことするのぉ?私たち親友でしょ?」

里奈はそう笑いながら言っているが、琴葉にはその姿が不気味にしか見えていなかった。

「ごめんねっ!」

琴葉は里奈を気絶させ、あたりを見つめた。

(…)


「失敗した…」

霜月は雪女族の里(?)で頭を抱えていた。

そう、奥に進みすぎて道に迷ってしまったのだ。

(やっぱり幻覚…?なら、氷で割れないか?)

パキパキッ

「無理か…」

そのとき、霜月の頭の中に、彩の顔が浮かんだ。

(やっぱり彩が…?でもあいつあんなことできたっけ…?あああの三白眼むかつく…)

「呼んだ?」

「うわっ!」

霜月が後ろを振り向くと、彩がいた。

「え?本物…?幻覚か…?」

「本物よもう!失礼しちゃうわ!今回私は被害者だっての!霜月、幻覚ってどうやって壊すんだっけ?」

(うわ怒ってる…やっぱりおばあさんっていわれたの根に持ってんのか…?)

「本当に被害者?すごい嘘っぽく聞こえる…」

「ほんと!!幻覚には必ずなんか…アレ…ほら…なんかあるでしょ?幻覚は永遠じゃないんだから。何か限りがあるはず」

「確かに…」

二人して考え込んでいると…

「何してるんだこんなところで。小さなお二人」

「あぁー!怜!」

霜月が大声を上げた。そう、彼は山吹怜。琴葉の実の兄であり、霜月と同じ組織の一員。だが、ここからは遠いところにいて、今ここにいるのは不自然な人物…

「小さいとはなによ?もう!私、一応あなたより年上なんですけど!」

「失礼。口が滑ってしまい…彩。そんなに怒らないでほしい」

「冷静だと逆にムカつく…」

この二人…彩と怜は性格が真逆なせいもあり、なかなか噛み合わないのだ。

顔をあわせたらいつも喧嘩をしている。

「でも…ここから出るためには手を組まなきゃってことか」

「その通り。霜月、なんかいい案は?」

「いや…彩、この、僕たちに幻覚を見せている妖怪を呪うことはできるか?」

「んー…めんどくさくなるけど…できるわ。でも、後で寝ちゃったらよろしく」

ふぅ…と、彩が深呼吸をし、紅い瞳が光る。

「よいしょっと。できたはず…」

パリン

「!」

次の瞬間、なにかガラスが割れたような音がして、次に目を開けた時…

「でられたー」

「さすが彩。年の功かな?」

「なんですと?怜、後で覚えてなさいよ」

(またやってる…)

霜月は呆れながら、元に戻った(?)世界を歩き始めた。

さっきいた山の山頂らしくない。桜の木も一本もなかった。また変なところに飛ばされてしまったらしい。

「ここどこ?でも幻覚ではないのよね?そういえば鞠たちは一体どこに…」

「鞠?あの人形使いか。それならさっき、琴葉たちといっしょに…」

「琴葉!?里奈もいたの?まだ幻覚に閉じ込められてる?怜、気配わかる?」

「…」

彩が聞くと、怜は渋い顔をし始めた。

それから、うーん、とうなる。

「わかんない?」

「いや…かなりやばい状況にいるっぽい感じで…まあ里奈には琴葉がいるから心配ないだろうが…」

「…?かなりやばい状況?あ!霜月待ってー」

二人で立ち止まっていた間に、霜月は歩いていた。

「え…ここって…まさか…」

「気が付いたか。ここは、俺たち妖怪が本来いてはいけない場所…人里だ」

人里。


〈つづく〉

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