テラーノベル
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閉店後の店内は、昼間とは別の顔をしていた。
照明を落とした奥のテーブルに、選手のデータと契約書類が広げられている。
向かいに座るのは、絵心、ノア、レイダーク。
絵心が資料をめくり、鼻で笑った。
絵心「で? 本当にここを候補に入れるのか?」
潔「入れてる。まだ決めてないけど」
潔はコーヒーを一口飲んだ。
潔「条件だけなら、かなりいい。ただ、本人には合わないかもしれない」
絵心「何が?」
潔「出場時間」
ノアが資料に目を落とす。
ノア「競争が激しい」
潔「うん。今すぐ結果を出すなら悪くない。でも、あの選手はまだ伸びる。ベンチにいる時間が長くなれば、その分だけ成長は遅れる」
ノア「プレー時間を優先する、と」
潔「そう。だから、こっちも見てる」
レイダークが別の資料を手に取った。
レイダーク「こちらは?」
潔「監督の戦術が合わない」
レイダーク「合わない?」
潔「自由に動いた方が生きる選手なのに、役割を固定するタイプの監督だから」
潔は資料の一文を指で叩く。
潔「入ってから変えるのは難しいと思う」
絵心が腕を組んだ。
絵心「相変わらず、面倒なところまで見るな」
潔「仕事だから」
絵心「それで済ませるか、普通」
潔「他に何かある?」
絵心は呆れたように潔を見た。
絵心「お前、本当にエージェント向きだよ。数字だけじゃなく、選手の意思まで拾う」
潔「数字も見てるよ」
絵心「そこを言ってるんじゃない」
ノアが静かに口を挟む。
ノア「本人が何を望んでいるかを、最初に考えている」
潔「それは当然でしょ」
ノアの口元がわずかに緩んだ。
ノア「君らしいな」
レイダークが資料を揃える。
レイダーク「では、三つの選択肢を提示する?」
潔「うん。それぞれの利点とリスクを説明する」
レイダーク「君の推奨は?」
潔の手が止まった。
潔「……まだ言わない」
絵心が目を細める。
絵心「ほう?」
潔「俺が先に答えを出したら、本人がそれに引っ張られるかもしれないから」
絵心「選択肢だけ渡して、決定は本人に任せると」
潔「そう」
潔は書類の端を揃えた。
潔「契約するのは俺じゃない。最後に決めるのは本人だよ」
ノアが頷く。
ノア「正しい判断だ」
潔「ありがとう」
そのとき、カウンターの向こうから声が飛んできた。
蜂楽「潔ー! まだ終わらないのー?」
潔が顔を上げる。
潔「……蜂楽?」
絵心も振り返った。
絵心「なぜあいつがいる」
潔「客」
絵心「閉店後だぞ」
潔「常連だから」
絵心の眉間に皺が寄る。
ノアが小さく笑い、レイダークは窓の外へ視線を逃がした。
レイダーク「随分と自由な職場だな」
潔「ごめん。もう少しで終わるから」
潔が声を返すと、すぐに蜂楽の返事が響いた。
蜂楽「はーい!」
潔は席に戻った。
潔「じゃあ、契約条件を確認しよう」
絵心が資料に目を落とす。
絵心「……お前、本当に変わらないな」
潔「何が?」
絵心「世界トップクラスの連中と話し合った直後に、客の相手をしてるところだよ」
潔は少し考えた。
潔「どっちも仕事だから」
絵心は深いため息をついた。
ノアが肩を揺らし、レイダークも小さく笑う。
レイダーク「では、続けよう」
レイダークが資料を開き直す。
潔「うん」
静かな店内に、紙をめくる音が戻ってくる。
昼間はプリンを運び、客を見送るカフェ店長。
夜になれば、世界のトップたちと選手の未来を話し合う元エージェント。
そのどちらも、潔世一にとっては同じ仕事だった。
コメント
1件
第3話、読み終わりました🤍 潔くんの「契約するのは俺じゃない。最後に決めるのは本人だよ」ってセリフ、すごく響きました。選手の人生を預かるエージェントとしての責任感と誠実さを感じて、ぐっときた…。あと、絵心たち世界トップクラスと話した直後に蜂楽くんの相手をするギャップが潔くんらしくて微笑ましかったです。昼はカフェ店長、夜はエージェント――どっちも「仕事」って言い切るところ、かっこよかったです🌙
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#キャラ崩壊
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